12 / 57
12 王都へ
しおりを挟む
「朝だぞ、起きろ!」
ペシペシとアーサーが僕の頬を叩く。
「私が起こすんだから邪魔するな!」
シヴァがバシッとアーサーをはたき落として僕の頬を舐めてくれる。
まったくシヴァの言うとおりだ。
アーサーに叩いて起こされたくはないよ。
「シヴァ、おはよう。ついでにアーサーも」
シヴァに頬擦りしていると横でアーサーが「ついでにとは何だ!」と喚いていた。
うるさいから放っておこう。
「そう言えば昨日の二人組がシヴァを眠らせたって言ってたけど、その時にはシヴァは騎士を呼びに行ってたんだよね。何であの二人組はそんな事を言ったのかな?」
あの二人組が指差した先にはシヴァはいなかった。それが不思議で仕方がなかったのだ。
「昨日、お前がすぐに寝てしまっただろう。あれはあの二人組がスリープ魔法をかけたからなんだ。だけど私にはあんなチンケな魔法は効かないのさ。そこであの二人組に幻影魔法をかけて私がそこに寝ているように思い込ませたんだ」
おお、凄い!
流石はシヴァだ。
「シヴァって凄いんだね。あ、もしかして騎士さんにも何かしたの?」
普通はシヴァが引っ張ったくらいじゃ騎士が付いてくるはずがない。
「もちろん、私に付いてくる様に催眠をかけたのさ」
そんな事までしてたのか。僕がシヴァを褒めるとアーサーはそれが気に食わなかったようだ。
「私だって公爵家に戻ったら凄いんだぞ。ジェレミー、腰を抜かして驚くなよ」
「はいはい、わかったよ。それより今日中に王都に向かうんだろう。さっさと起きて行こうよ」
「だからお前を起こしたのに~!」
うるさいアーサーは放っておこう。
朝食を済ませて出発しようとすると宿屋の主人に呼び止められた。
「昨夜は済まなかったね。まさかあんな連中が来るとは思わなかったからね。お詫びに宿泊費を半分返すよ」
そう言って他の客に気づかれないようにこっそりとお金を渡してくれた。
「おじさん、ありがとう」
「気を付けて旅をするんだよ」
宿屋の主人に別れを告げて街を抜けて街道へと出る。
「今日は多少無理してでも走るからな。しっかり掴まってろよ」
僕は覚悟を決めてシヴァの背中に乗った。
口ではあんな事を言っていたが、それほど無茶な走りはしなかった。なんだかんだ言っても優しいんだな。
途中の街で昼食を取り、夕刻前には王都に着いた。
王都の門は今迄通ってきた何処の街よりも立派な造りになっている。
「うわぁ! でかいね。それにチェックも厳しそう」
王都に入る人がずらりと行列をなしている。
身分証だけでなく荷物の検査もされてるようだ。
「出る時は簡単なんだが、入るのは厳しいんだ。出る時のチェックも厳しければジュリアが王都を抜け出すこともなかったんだがな」
アーサーがポツリと呟く。
今更言っても仕方がないけどね。
僕とシヴァも列に並ぶが、僕の後ろにもすぐに列が出来る。
思っていたよりも早く順番が回ってくる。
「身分証を見せて。荷物はこれだけか?」
門番に僕とシヴァの身分証を見せて荷物を渡す。着替えが少し入っているだけで大した荷物はない。おかげでチェックもすぐに終わった。
「よし。次は貸馬車を借りに行くぞ」
懐の中のアーサーが僕に指示を出す。
「えっ、馬車? 歩いて行くんじゃないの?」
わざわざ馬車を借りる理由がわからない。
「いいから早くしないと店が閉まってしまうぞ」
アーサーに急かされて貸馬車の店を探す。幸いすぐに店は見つかった。
「なるべく立派な馬車にしろよ」
アーサーはそんな風に注文を付けるけどそんなに沢山お金は持ってないよ。
案の定、店の主人も僕の身なりをジロジロと見てくる。
「坊やが馬車? 一体何に使うんだ?」
胡散臭そうに僕達を見る主人にシヴァの目が怪しく光る。
「いいから言われたとおりにしろ。ウォルフォード公爵家まで行くんだ」
シヴァの声に貸馬車の主人は「わかりました」と僕達を馬車まで案内した。
そこには随分と立派な馬車があった。
「まぁまぁだな。ジェレミー、さっさと乗れ。おい!早く馬車を出せ!」
僕とシヴァが乗り込むと馬車は走り出した。
街を行き交う人が、僕達が乗る馬車を興味深そうにチラチラと見てくる。
やがて馬車は大きな門のある屋敷へと到着した。
「そこの馬車、止まれ! 来客の予定は聞いてないぞ! 一体何の用だ?」
門番が馬車を押し留めるとシヴァが馬車の窓から顔を出して門番をひと睨みした。
途端に門番は馬車を通す為に門を開放する。
門が開くと馬車は走り出した。
一体何処まで走るんだ。
馬車の窓から外を覗いてようやくアーサーが馬車を借りろと言った意味がわかった。
門から屋敷の入り口までの距離が長いのだ。
やがて屋敷の玄関に到着した。
降りようとした僕をシヴァが止めた。
また、シヴァが外を見て、誰かに術をかけたようだ。
そしてカチャリと馬車の扉が開いて、黒服の執事が恭しく僕に向かってお辞儀をした。
「お帰りなさいませ。ジェレミー様」
ペシペシとアーサーが僕の頬を叩く。
「私が起こすんだから邪魔するな!」
シヴァがバシッとアーサーをはたき落として僕の頬を舐めてくれる。
まったくシヴァの言うとおりだ。
アーサーに叩いて起こされたくはないよ。
「シヴァ、おはよう。ついでにアーサーも」
シヴァに頬擦りしていると横でアーサーが「ついでにとは何だ!」と喚いていた。
うるさいから放っておこう。
「そう言えば昨日の二人組がシヴァを眠らせたって言ってたけど、その時にはシヴァは騎士を呼びに行ってたんだよね。何であの二人組はそんな事を言ったのかな?」
あの二人組が指差した先にはシヴァはいなかった。それが不思議で仕方がなかったのだ。
「昨日、お前がすぐに寝てしまっただろう。あれはあの二人組がスリープ魔法をかけたからなんだ。だけど私にはあんなチンケな魔法は効かないのさ。そこであの二人組に幻影魔法をかけて私がそこに寝ているように思い込ませたんだ」
おお、凄い!
流石はシヴァだ。
「シヴァって凄いんだね。あ、もしかして騎士さんにも何かしたの?」
普通はシヴァが引っ張ったくらいじゃ騎士が付いてくるはずがない。
「もちろん、私に付いてくる様に催眠をかけたのさ」
そんな事までしてたのか。僕がシヴァを褒めるとアーサーはそれが気に食わなかったようだ。
「私だって公爵家に戻ったら凄いんだぞ。ジェレミー、腰を抜かして驚くなよ」
「はいはい、わかったよ。それより今日中に王都に向かうんだろう。さっさと起きて行こうよ」
「だからお前を起こしたのに~!」
うるさいアーサーは放っておこう。
朝食を済ませて出発しようとすると宿屋の主人に呼び止められた。
「昨夜は済まなかったね。まさかあんな連中が来るとは思わなかったからね。お詫びに宿泊費を半分返すよ」
そう言って他の客に気づかれないようにこっそりとお金を渡してくれた。
「おじさん、ありがとう」
「気を付けて旅をするんだよ」
宿屋の主人に別れを告げて街を抜けて街道へと出る。
「今日は多少無理してでも走るからな。しっかり掴まってろよ」
僕は覚悟を決めてシヴァの背中に乗った。
口ではあんな事を言っていたが、それほど無茶な走りはしなかった。なんだかんだ言っても優しいんだな。
途中の街で昼食を取り、夕刻前には王都に着いた。
王都の門は今迄通ってきた何処の街よりも立派な造りになっている。
「うわぁ! でかいね。それにチェックも厳しそう」
王都に入る人がずらりと行列をなしている。
身分証だけでなく荷物の検査もされてるようだ。
「出る時は簡単なんだが、入るのは厳しいんだ。出る時のチェックも厳しければジュリアが王都を抜け出すこともなかったんだがな」
アーサーがポツリと呟く。
今更言っても仕方がないけどね。
僕とシヴァも列に並ぶが、僕の後ろにもすぐに列が出来る。
思っていたよりも早く順番が回ってくる。
「身分証を見せて。荷物はこれだけか?」
門番に僕とシヴァの身分証を見せて荷物を渡す。着替えが少し入っているだけで大した荷物はない。おかげでチェックもすぐに終わった。
「よし。次は貸馬車を借りに行くぞ」
懐の中のアーサーが僕に指示を出す。
「えっ、馬車? 歩いて行くんじゃないの?」
わざわざ馬車を借りる理由がわからない。
「いいから早くしないと店が閉まってしまうぞ」
アーサーに急かされて貸馬車の店を探す。幸いすぐに店は見つかった。
「なるべく立派な馬車にしろよ」
アーサーはそんな風に注文を付けるけどそんなに沢山お金は持ってないよ。
案の定、店の主人も僕の身なりをジロジロと見てくる。
「坊やが馬車? 一体何に使うんだ?」
胡散臭そうに僕達を見る主人にシヴァの目が怪しく光る。
「いいから言われたとおりにしろ。ウォルフォード公爵家まで行くんだ」
シヴァの声に貸馬車の主人は「わかりました」と僕達を馬車まで案内した。
そこには随分と立派な馬車があった。
「まぁまぁだな。ジェレミー、さっさと乗れ。おい!早く馬車を出せ!」
僕とシヴァが乗り込むと馬車は走り出した。
街を行き交う人が、僕達が乗る馬車を興味深そうにチラチラと見てくる。
やがて馬車は大きな門のある屋敷へと到着した。
「そこの馬車、止まれ! 来客の予定は聞いてないぞ! 一体何の用だ?」
門番が馬車を押し留めるとシヴァが馬車の窓から顔を出して門番をひと睨みした。
途端に門番は馬車を通す為に門を開放する。
門が開くと馬車は走り出した。
一体何処まで走るんだ。
馬車の窓から外を覗いてようやくアーサーが馬車を借りろと言った意味がわかった。
門から屋敷の入り口までの距離が長いのだ。
やがて屋敷の玄関に到着した。
降りようとした僕をシヴァが止めた。
また、シヴァが外を見て、誰かに術をかけたようだ。
そしてカチャリと馬車の扉が開いて、黒服の執事が恭しく僕に向かってお辞儀をした。
「お帰りなさいませ。ジェレミー様」
18
お気に入りに追加
1,377
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる