捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅

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6 森の奥へ

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 ピタピタと何かが頬を叩く。

 何だよ、うるさいなぁ。もっと寝かせてくれよぉ。

 そう思ったところで、ここは森の中だと思い出して飛び起きた。

 僕の頬を叩いていたのは例のペーパーナイフだ。

 起こしてくれたんだろうけど、ナイフで頬を叩かれるっていうシチュエーションが怖いよね。

「そう言えば君には名前があるの?」

 ペーパーナイフと呼ぶのも長いので別の呼び方があればいいなと思って聞いてみた。

「勿論、あるとも。私の名前はアーサーだ。名前を呼ばせてやる事に感謝しろ」

 何だかふんぞり返っているように見える。

 随分と横柄な態度だな。

 アーサーと言えばアーサー王が有名だけど、そのアーサーじゃないよね。

「どうして喋れるの?」

「…まぁ、色々あったんだよ。それよりもさっさと起きて出発するぞ」 

 アーサーに言われて立ち上がる。地面に寝転がっていたせいか、体のあちこちが痛い。

 それにしても野宿をしたのに獣に襲われることもなく、朝を迎えられたなんて奇跡だな。

 そう思って辺りに小動物が沢山いる事に驚いた。

 うわっ、一体何事だ。

 リスやうさぎといった小動物が僕から少し距離を置いた場所で寝ていたが、僕が立ち上がると慌てて僕の近くから離れていった。

「私が結界を張っておいたからな。それに気付いた奴らが入って来ただけさ。お前に危害を加えなければ入れるようになっていたからね」

 アーサーが結界を張った?

 凄い! そんな事も出来るんだ。

「アーサーって凄いんだね」

 思わず感心したように呟くと更にふんぞり返ったように見える。

「どうだ、凄いだろう。もっともお前に魔力を注いで貰ったからだけどな」

 僕が魔力を注いだから結界を張れるようになったのか。

 僕に魔力があっても結界の張り方なんて知らないから、アーサーがいてくれて助かっているんだけどね。

「それで、これからどうするんだ? もう森を抜けるのか?」

 一刻も早く王都を目指すのかと思って聞いてみたらどうも違うようだ。

「いや、更に森の奥に向かうぞ。流石に今のお前では王都に向かうのは厳しいからな。助っ人を頼むとしよう」

 それから僕はアーサーに促されるまま森の奥へと入っていった。

 森の奥に行くのはいいけど、魔獣に襲われたりしないよね。

 途中の茂みがガサガサと揺れる度にビクビクしていると、アーサーに鼻で笑われたような気がした。

 どのくらい進んだだろうか、突然目の前が開けた場所に出ると、前方に大きな木がそびえている。

 何か凄い神々しいんだけど…。

 思わず立ち止まってその木を見上げた。

 真っ白で大きな木の幹に金色の木の葉が輝いている。

「おい! 何をぼーっとしている。あの木の幹を私で切り開け」

 アーサーに言われて僕は驚いた。

 木の幹を切り開けって、この小さなペーパーナイフで出来るわけ無いだろ?

 おまけにいかにも神木みたいな木を傷つけるなんてバチが当たらないか?

「心配は無用だ。早くしろ!」

 アーサーに急かされて僕はペーパーナイフを握り締めると僕の頭上高くの位置に刃を当てた。

 ごめんなさい。

 悪いのは僕じゃなくてアーサーです。

 罰を与えるのならアーサーにしてください。

 心の中で謝罪をしながら刃を押すと何の抵抗もなく切っ先が幹に吸い込まれる。

 驚いてナイフを持っていない方の手を木に添えるが、その感触は普通の木と同じ様に固い。

 そのまま縦にナイフを入れると音もなく切り込みが入っていく。

 やがて縦に僕の身長くらいの切り込みが出来たが、よく見ると最初に切り込みを入れた所が徐々に引っ付いていっているようだ。

「さっさと入らないと塞がってしまうぞ」

 アーサーが僕の手から離れて宙に浮き上がる。

 勝手に切り込みが塞がるなんてやはりこれは普通の木じゃないんだな。

 僕は切り込みに手を掛けると左右に開いて僕が入れる大きさに広げた。

 切り込みは音もなく僕が力を入れる度に広がっていく。

 この不思議な現象はアーサーのせいなのか、この木の特性なのか、僕が持っているという魔力のせいなのかはわからない。

 ただ真っ暗な暗闇が切り込みの先に広がっている。

中で何が待ち受けているのかもわからないまま、僕はその中に飛び込んだ。
 
 僕が足を踏み入れた途端、辺りが明るくなった。どうやらここは木の中らしく、丸い部屋のようになっていた。

 ただ、その広さは先程の木の幹の太さとは桁違いの広さだ。

 正面にフカフカの寝床があって、何かが丸くなって寝ているのが見える。

 僕の前にアーサーがずいと前に出てくると、突然眩い光に包まれた。

 あまりの眩しさに一瞬、目を瞑ってしまったが、再び目を開けた時にはそこには一人の男性が立っていた。

「…アーサー?」
 
 
 

 
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