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47 聞いてないよ〜
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作業に没頭しているケンブル先生の邪魔をしないようにと、私とオリヴァーは少し離れた椅子に座って静かに見学していた。
でもただ見ているだけって言うのも少々退屈してくるわね。
それにそろそろお昼になるようでお腹も空いてきたわ。
だけど静かすぎてお腹がなったら皆に聞こえそうなんだけど。
「やった、完成~!」
そんな静寂を打ち破るように、突然ケンブル先生の声が響き渡り、私とオリヴァーはビクッと身体を震わせた。
「…おや、キャサリン様。いつの間にいらしてたんですか?」
やはり私が来た事には気付いていなかったみたいね。
「お邪魔しています、ケンブル先生。ところで何が完成したのですか?」
ケンブル先生が持っている物を見やると、私がしているのと似たようなチョーカーがあった。
けれど、こちらは私の赤いチョーカーとは違って真っ黒な色をしている。
「オリヴァー様が外に出られなくなると聞いて作ってみました。オリヴァー様、こちらを付けていただけますか?」
「僕にですか?」
まさか自分のための魔道具だとは思ってもいなかったらしく、オリヴァーが驚いている。
ケンブル先生はそんなオリヴァーの驚きにはお構いなしにチョーカーをオリヴァーに手渡した。
「私がお付けいたしましょう」
エイダがすかさずオリヴァーに近寄り、オリヴァーから手渡されたチョーカーを首に装着する。
オリヴァーが顔を下に向けるけれど、流石に直視は出来ない。
エイダが何処からか手鏡を持ってきてオリヴァーに見えるように掲げている。
その手鏡でオリヴァーもようやく自分の首に付けられたチョーカーを確認したようだ。
「うわぁ、かっこいい。キャサリン嬢とは色違いなんですね。ちょっとお揃いみたいで嬉しいです」
オリヴァーは手放しで喜んでいるけれど、これは一体何の魔道具なのかしら?
「オリヴァー様。ボタンが付いているのが見えますか? そのボタンを押してみてください」
「これですか?」
オリヴァーが手鏡でボタンの位置を確認した後で、それを押してみる。
カチッ!
オリヴァーがボタンを押したと同時に、オリヴァーの姿が小さな黒猫へと変わった。
「「「えっ!?」」」
皆が驚く中、ケンブル先生だけは満足そうに頷いている。
「何? 僕の身体が小さくなったの? えっ? 何これ? 僕の身体が毛むくじゃらになっている!」
オリヴァーはどうやら自分の姿が猫になったのがわからないようだ。
しきりに自分の身体を見回している。
「オリヴァー様、落ち着いてください。オリヴァー様の身体は猫になっておられます」
エイダに再び手鏡を向けられて、オリヴァーはようやく自分の身体が猫になった事を確認している。
「これが僕? 僕も猫になったって事は僕も呪われちゃったの?」
オリヴァー様は慌てているけれど、それはケンブル先生の魔道具のせいだと思うわ。
「落ち着いてください。オリヴァー様の場合は私の魔道具によるものです。もう一度、先程のボタンを押してみてください」
猫の手でボタンが押せるのか疑問だけれど、オリヴァーは前足を器用に使ってボタンを押した。
カチッ!
オリヴァーの身体が猫から元の人間の姿へと戻って行く。
「凄い! 元に戻ってる!」
オリヴァーが自分の身体を確認しているのを見て、ケンブル先生はドヤ顔だ。
「キャサリン様が猫になる呪いをかけられたと言う事で、魔道具を作っていたんですが、呪いがなくても猫になる魔道具が出来るんじゃないかと頑張ってみました。これでお庭くらいは出られるんじゃないですか?」
ケンブル先生がいつからこの魔道具を作っていたのかはわからないけれど、オリヴァーのためなのは間違いない。
「ありがとうございます、ケンブル先生」
オリヴァーがもう一度ボタンを押そうとしたところでエイダが止めに入った。
「オリヴァー様。昼食のお時間ですので、お散歩はその後でお願いいたします」
「…はい」
少々がっかりした顔のオリヴァーが小さく返事をする。
でもただ見ているだけって言うのも少々退屈してくるわね。
それにそろそろお昼になるようでお腹も空いてきたわ。
だけど静かすぎてお腹がなったら皆に聞こえそうなんだけど。
「やった、完成~!」
そんな静寂を打ち破るように、突然ケンブル先生の声が響き渡り、私とオリヴァーはビクッと身体を震わせた。
「…おや、キャサリン様。いつの間にいらしてたんですか?」
やはり私が来た事には気付いていなかったみたいね。
「お邪魔しています、ケンブル先生。ところで何が完成したのですか?」
ケンブル先生が持っている物を見やると、私がしているのと似たようなチョーカーがあった。
けれど、こちらは私の赤いチョーカーとは違って真っ黒な色をしている。
「オリヴァー様が外に出られなくなると聞いて作ってみました。オリヴァー様、こちらを付けていただけますか?」
「僕にですか?」
まさか自分のための魔道具だとは思ってもいなかったらしく、オリヴァーが驚いている。
ケンブル先生はそんなオリヴァーの驚きにはお構いなしにチョーカーをオリヴァーに手渡した。
「私がお付けいたしましょう」
エイダがすかさずオリヴァーに近寄り、オリヴァーから手渡されたチョーカーを首に装着する。
オリヴァーが顔を下に向けるけれど、流石に直視は出来ない。
エイダが何処からか手鏡を持ってきてオリヴァーに見えるように掲げている。
その手鏡でオリヴァーもようやく自分の首に付けられたチョーカーを確認したようだ。
「うわぁ、かっこいい。キャサリン嬢とは色違いなんですね。ちょっとお揃いみたいで嬉しいです」
オリヴァーは手放しで喜んでいるけれど、これは一体何の魔道具なのかしら?
「オリヴァー様。ボタンが付いているのが見えますか? そのボタンを押してみてください」
「これですか?」
オリヴァーが手鏡でボタンの位置を確認した後で、それを押してみる。
カチッ!
オリヴァーがボタンを押したと同時に、オリヴァーの姿が小さな黒猫へと変わった。
「「「えっ!?」」」
皆が驚く中、ケンブル先生だけは満足そうに頷いている。
「何? 僕の身体が小さくなったの? えっ? 何これ? 僕の身体が毛むくじゃらになっている!」
オリヴァーはどうやら自分の姿が猫になったのがわからないようだ。
しきりに自分の身体を見回している。
「オリヴァー様、落ち着いてください。オリヴァー様の身体は猫になっておられます」
エイダに再び手鏡を向けられて、オリヴァーはようやく自分の身体が猫になった事を確認している。
「これが僕? 僕も猫になったって事は僕も呪われちゃったの?」
オリヴァー様は慌てているけれど、それはケンブル先生の魔道具のせいだと思うわ。
「落ち着いてください。オリヴァー様の場合は私の魔道具によるものです。もう一度、先程のボタンを押してみてください」
猫の手でボタンが押せるのか疑問だけれど、オリヴァーは前足を器用に使ってボタンを押した。
カチッ!
オリヴァーの身体が猫から元の人間の姿へと戻って行く。
「凄い! 元に戻ってる!」
オリヴァーが自分の身体を確認しているのを見て、ケンブル先生はドヤ顔だ。
「キャサリン様が猫になる呪いをかけられたと言う事で、魔道具を作っていたんですが、呪いがなくても猫になる魔道具が出来るんじゃないかと頑張ってみました。これでお庭くらいは出られるんじゃないですか?」
ケンブル先生がいつからこの魔道具を作っていたのかはわからないけれど、オリヴァーのためなのは間違いない。
「ありがとうございます、ケンブル先生」
オリヴァーがもう一度ボタンを押そうとしたところでエイダが止めに入った。
「オリヴァー様。昼食のお時間ですので、お散歩はその後でお願いいたします」
「…はい」
少々がっかりした顔のオリヴァーが小さく返事をする。
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