45 / 77
45 「ブルータス、お前もか」
しおりを挟む
国王陛下との話も終わったので、部屋に戻る事になったけれど、自分がまだ猫の姿のままなのを思い出した。
クシュン!
どうもクシャミをするのに慣れてきたような感覚さえあるわ。
クシャミをして元の人間の姿に戻ると、何故か残念そうな皆の視線を感じた。
(みんな、この人間の姿よりも猫の姿の方が好きみたいね)
嫌がられるよりはマシなんだろうけれど、イマイチ納得がいかないのはなぜかしら?
チラリと隣に座るアラスター王太子に目を向けると、少しばかり申し訳なさそうに微笑まれた。
「父上、それでは僕達部屋に戻ります」
「ああ、わかった。キャサリン嬢、もうしばらくは軟禁状態になってしまうが許してほしい」
恐縮する国王陛下に「大丈夫です」とだけ告げて、ソファーから立ち上がろうとすると、すかさずアラスター王太子の手が差し出される。
本当に女性の扱い方がスマートだわ。
立ち上がって国王陛下にペコリと頭を下げて、アラスター王太子と共に執務室を後にする。
私達の後ろからウォーレンが影のように付いてくる。
「…それにしても、まさか父上にあんな芝居をされるとは思わなかったな」
部屋に戻る道すがら、ポツリとアラスター王太子が溢す。
死んだと思っていた父親が生きていたと知って、ホッとした部分もあるんだろうけれど、詳細を知らされていなかったという悔しさもあるみたい。
「アラスター王太子はお芝居が出来る自信があったのですか?」
「……」
返事がないのをみると、どうやら自信はないようだ。
国王陛下の判断は間違いなかったようね。
「…アラスター様にお芝居なんて無理ですよ。キャサリン嬢への思いも周囲にはバレバレでしたからね」
後ろでウォーレンがツッコミを入れるけれど、そんなにあからさまだったかしら?
アラスター王太子がエヴァンズ王国の学校に留学して来た時の事を思い返してみるけれど、普通に接していたように記憶している。
むしろ、少し避けられているように感じていたのだけれど、違ったのかしら?
あれが私への好意の裏返しなのだとしたら、確かにバレバレなのかもしれないわ。
私の部屋に到着すると、アラスター王太子は心配そうに顔を覗き込んでくる。
「エイダがいないからキャサリン嬢を一人きりにしてしまうけれど、大丈夫だろうか?」
「大丈夫です。部屋には他の人は入れないようになっていますから…」
そこまで言って私はふと、牢獄に入れられた時の事を思い返していた。
あの時は急に扉が開いて騎士達が入ってきたんだったわ。
私達以外は開けられないはずなのに、あの時は一体どうして扉が開いたのかしら?
そう考えた時、アラスター王太子の後ろに立っているウォーレンがつと私から目を逸らした。
どうやらあの時、扉を開いたのはウォーレンのようだ。
つまり、ウォーレンは今回の計画を知っていた事になるが、それはアラスター王太子には内緒の事なんだろう。
アラスター王太子はそんな事には気付かないようにニコッと私に笑いかける。
「そうだったね。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
バタンと扉を閉めると私は、そのままベッドに駆け寄るとバタンと倒れ込んだ。
あまりにも目まぐるしい展開に、精神的にどっと疲れていた。
そのまましばらく横になっていると、ノックの音が聞こえた。
アラスター王太子かしら、と思いながら「はい」と返事をした。
「キャサリン様、エイダです。入ってもよろしいでしょうか?」
オリヴァーに付き添って行ったはずのエイダの声が聞こえて、私はベッドから起き上がると「どうぞ」と告げた。
扉を開けて入って来たエイダの姿を見てホッとする。
「オリヴァー様がお休みになられましたので、キャサリン様のお世話をしに参りました」
「ありがとう、助かるわ」
エイダにお風呂の準備をして貰って、お湯に浸かるとようやくリラックス出来た。
今夜はぐっすり眠れそうだわ。
クシュン!
どうもクシャミをするのに慣れてきたような感覚さえあるわ。
クシャミをして元の人間の姿に戻ると、何故か残念そうな皆の視線を感じた。
(みんな、この人間の姿よりも猫の姿の方が好きみたいね)
嫌がられるよりはマシなんだろうけれど、イマイチ納得がいかないのはなぜかしら?
チラリと隣に座るアラスター王太子に目を向けると、少しばかり申し訳なさそうに微笑まれた。
「父上、それでは僕達部屋に戻ります」
「ああ、わかった。キャサリン嬢、もうしばらくは軟禁状態になってしまうが許してほしい」
恐縮する国王陛下に「大丈夫です」とだけ告げて、ソファーから立ち上がろうとすると、すかさずアラスター王太子の手が差し出される。
本当に女性の扱い方がスマートだわ。
立ち上がって国王陛下にペコリと頭を下げて、アラスター王太子と共に執務室を後にする。
私達の後ろからウォーレンが影のように付いてくる。
「…それにしても、まさか父上にあんな芝居をされるとは思わなかったな」
部屋に戻る道すがら、ポツリとアラスター王太子が溢す。
死んだと思っていた父親が生きていたと知って、ホッとした部分もあるんだろうけれど、詳細を知らされていなかったという悔しさもあるみたい。
「アラスター王太子はお芝居が出来る自信があったのですか?」
「……」
返事がないのをみると、どうやら自信はないようだ。
国王陛下の判断は間違いなかったようね。
「…アラスター様にお芝居なんて無理ですよ。キャサリン嬢への思いも周囲にはバレバレでしたからね」
後ろでウォーレンがツッコミを入れるけれど、そんなにあからさまだったかしら?
アラスター王太子がエヴァンズ王国の学校に留学して来た時の事を思い返してみるけれど、普通に接していたように記憶している。
むしろ、少し避けられているように感じていたのだけれど、違ったのかしら?
あれが私への好意の裏返しなのだとしたら、確かにバレバレなのかもしれないわ。
私の部屋に到着すると、アラスター王太子は心配そうに顔を覗き込んでくる。
「エイダがいないからキャサリン嬢を一人きりにしてしまうけれど、大丈夫だろうか?」
「大丈夫です。部屋には他の人は入れないようになっていますから…」
そこまで言って私はふと、牢獄に入れられた時の事を思い返していた。
あの時は急に扉が開いて騎士達が入ってきたんだったわ。
私達以外は開けられないはずなのに、あの時は一体どうして扉が開いたのかしら?
そう考えた時、アラスター王太子の後ろに立っているウォーレンがつと私から目を逸らした。
どうやらあの時、扉を開いたのはウォーレンのようだ。
つまり、ウォーレンは今回の計画を知っていた事になるが、それはアラスター王太子には内緒の事なんだろう。
アラスター王太子はそんな事には気付かないようにニコッと私に笑いかける。
「そうだったね。それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
バタンと扉を閉めると私は、そのままベッドに駆け寄るとバタンと倒れ込んだ。
あまりにも目まぐるしい展開に、精神的にどっと疲れていた。
そのまましばらく横になっていると、ノックの音が聞こえた。
アラスター王太子かしら、と思いながら「はい」と返事をした。
「キャサリン様、エイダです。入ってもよろしいでしょうか?」
オリヴァーに付き添って行ったはずのエイダの声が聞こえて、私はベッドから起き上がると「どうぞ」と告げた。
扉を開けて入って来たエイダの姿を見てホッとする。
「オリヴァー様がお休みになられましたので、キャサリン様のお世話をしに参りました」
「ありがとう、助かるわ」
エイダにお風呂の準備をして貰って、お湯に浸かるとようやくリラックス出来た。
今夜はぐっすり眠れそうだわ。
1
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
異世界で捨て子を育てたら王女だった話
せいめ
ファンタジー
数年前に没落してしまった元貴族令嬢のエリーゼは、市井で逞しく生きていた。
元貴族令嬢なのに、どうして市井で逞しく生きれるのか…?それは、私には前世の記憶があるからだ。
毒親に殴られたショックで、日本人の庶民の記憶を思い出した私は、毒親を捨てて一人で生きていくことに決めたのだ。
そんな私は15歳の時、仕事終わりに赤ちゃんを見つける。
「えぇー!この赤ちゃんかわいい。天使だわ!」
こんな場所に置いておけないから、とりあえず町の孤児院に連れて行くが…
「拾ったって言っておきながら、本当はアンタが産んで育てられないからって連れてきたんだろう?
若いから育てられないなんて言うな!責任を持ちな!」
孤児院の職員からは引き取りを拒否される私…
はあ?ムカつくー!
だったら私が育ててやるわ!
しかし私は知らなかった。この赤ちゃんが、この後の私の人生に波乱を呼ぶことに…。
誤字脱字、いつも申し訳ありません。
ご都合主義です。
第15回ファンタジー小説大賞で成り上がり令嬢賞を頂きました。
ありがとうございました。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる