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45 「ブルータス、お前もか」

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 国王陛下との話も終わったので、部屋に戻る事になったけれど、自分がまだ猫の姿のままなのを思い出した。

 クシュン!

 どうもクシャミをするのに慣れてきたような感覚さえあるわ。

 クシャミをして元の人間の姿に戻ると、何故か残念そうな皆の視線を感じた。

(みんな、この人間の姿よりも猫の姿の方が好きみたいね) 

 嫌がられるよりはマシなんだろうけれど、イマイチ納得がいかないのはなぜかしら?

 チラリと隣に座るアラスター王太子に目を向けると、少しばかり申し訳なさそうに微笑まれた。

「父上、それでは僕達部屋に戻ります」

「ああ、わかった。キャサリン嬢、もうしばらくは軟禁状態になってしまうが許してほしい」 

 恐縮する国王陛下に「大丈夫です」とだけ告げて、ソファーから立ち上がろうとすると、すかさずアラスター王太子の手が差し出される。

 本当に女性の扱い方がスマートだわ。

 立ち上がって国王陛下にペコリと頭を下げて、アラスター王太子と共に執務室を後にする。

 私達の後ろからウォーレンが影のように付いてくる。

「…それにしても、まさか父上にあんな芝居をされるとは思わなかったな」

 部屋に戻る道すがら、ポツリとアラスター王太子が溢す。

 死んだと思っていた父親が生きていたと知って、ホッとした部分もあるんだろうけれど、詳細を知らされていなかったという悔しさもあるみたい。

「アラスター王太子はお芝居が出来る自信があったのですか?」 

「……」 

 返事がないのをみると、どうやら自信はないようだ。

 国王陛下の判断は間違いなかったようね。

「…アラスター様にお芝居なんて無理ですよ。キャサリン嬢への思いも周囲にはバレバレでしたからね」 

 後ろでウォーレンがツッコミを入れるけれど、そんなにあからさまだったかしら?

 アラスター王太子がエヴァンズ王国の学校に留学して来た時の事を思い返してみるけれど、普通に接していたように記憶している。

 むしろ、少し避けられているように感じていたのだけれど、違ったのかしら?

 あれが私への好意の裏返しなのだとしたら、確かにバレバレなのかもしれないわ。

 私の部屋に到着すると、アラスター王太子は心配そうに顔を覗き込んでくる。

「エイダがいないからキャサリン嬢を一人きりにしてしまうけれど、大丈夫だろうか?」

「大丈夫です。部屋には他の人は入れないようになっていますから…」

 そこまで言って私はふと、牢獄に入れられた時の事を思い返していた。

 あの時は急に扉が開いて騎士達が入ってきたんだったわ。

 私達以外は開けられないはずなのに、あの時は一体どうして扉が開いたのかしら?

 そう考えた時、アラスター王太子の後ろに立っているウォーレンがつと私から目を逸らした。

 どうやらあの時、扉を開いたのはウォーレンのようだ。

 つまり、ウォーレンは今回の計画を知っていた事になるが、それはアラスター王太子には内緒の事なんだろう。

 アラスター王太子はそんな事には気付かないようにニコッと私に笑いかける。

「そうだったね。それじゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 バタンと扉を閉めると私は、そのままベッドに駆け寄るとバタンと倒れ込んだ。

 あまりにも目まぐるしい展開に、精神的にどっと疲れていた。

 そのまましばらく横になっていると、ノックの音が聞こえた。

 アラスター王太子かしら、と思いながら「はい」と返事をした。

「キャサリン様、エイダです。入ってもよろしいでしょうか?」

 オリヴァーに付き添って行ったはずのエイダの声が聞こえて、私はベッドから起き上がると「どうぞ」と告げた。

 扉を開けて入って来たエイダの姿を見てホッとする。

「オリヴァー様がお休みになられましたので、キャサリン様のお世話をしに参りました」

「ありがとう、助かるわ」

 エイダにお風呂の準備をして貰って、お湯に浸かるとようやくリラックス出来た。

 今夜はぐっすり眠れそうだわ。

 
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