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44 まさかの伏兵

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「キャサリン嬢が猫に? これは一体どういう事だ?」

「何故、キャサリン嬢が猫になるんですか?」

 国王陛下とサリヴァン侯爵は私が猫になったのを見て阿鼻叫喚している。

 目の前の人が何の前触れもなく、突然猫になったらパニックになるのも無理ないわね。

「お二人共、落ち着いてください。詳しく説明いたしますから」

 落ち着いてもらおうと声をかけたけれど、それが更に二人を混乱に陥れる事態になってしまった。

「猫が喋った!」

「どうして猫が人間の言葉を喋れるんですか!?」

 国王陛下はソファーにのけぞり、サリヴァン侯爵も一歩引いたような状態だ。

 そこまで驚かれると、何だか悪い事をしてしまった気分になるわ。

「父上もサリヴァン侯爵も落ち着いてください。僕の方から説明させていただきます」

 アラスター王太子の落ち着き払った声で、国王陛下とサリヴァン侯爵は少し落ち着きを取り戻したようだ。

「…いや、すまない。少々取り乱してしまったようだ」

「申し訳ございません。アラスター様、ご説明をお願いします」

 コホンとサリヴァン侯爵が咳払いをしたのを合図に、アラスター王太子はこれまでの経緯を話しだした。

 アラスター王太子が話し終えると、サリヴァン侯爵は何かを納得したような顔をする。

「なるほど。それでここ最近、ケンブル先生が何やら楽しそうに研究をしていたんですね。何をしているのか尋ねても、嬉しそうにニマニマ笑うだけで教えてくれませんでしたが…」

 ケンブル先生がニマニマ笑うって、確かにそんな笑い方をしそうだわ。

「しかし、キャサリン嬢がそんな状態では、アラスターとの結婚話なんて進められないぞ」

 国王陛下がむうっと困ったような顔を見せる。

 確かに今のままでは人前でクシャミなんて出来ないわ。

 この呪いをどうにかしない限り、アラスター王太子とは結婚出来そうもないわね。

 …あれ?

 私ってアラスター王太子と結婚する前提だったかしら?

「あの、すみません。私はまだ、アラスター王太子と結婚するとは言った覚えはないのですが…」

 おずおずと切り出すと、国王陛下とサリヴァン侯爵は揃って驚いた顔をする。

「何だと? 私はアラスターが結婚相手を連れて帰ったとばかり思っていたが、違うのか?」

「ちょっと待ってください! エヴァンズ王国のセドリック王太子がキャロリン嬢と結婚するためにキャサリン嬢との婚約解消をすると知って、色々と手を回したのですが、アラスター王太子と相思相愛ではなかったのですか?」

 え?  

 思わずサリヴァン侯爵の顔を凝視すると、サリヴァン侯爵は『しまった』というような顔をした。

 まさかとは思ったけれど、あの婚約解消にはこの人も一枚噛んでいたのね。

「そうか。道理でタイミング良く婚約解消の場面に立ち会えたものだと思ったよ。だけど、サリヴァン侯爵もまさかキャサリン嬢が呪われて猫になるとは思わなかったんだな」

 アラスター王太子がしみじみと呟くと、サリヴァン侯爵はコクリと頷いた。

「まったくです。貴族籍を除籍されたキャサリン嬢を我が家の養女にしてアラスター様と婚約させる予定だったのですが、今のままではそういうわけにもいきません」

 アラスター王太子と婚約するにしても、しないにしても、この呪いをどうにかしなければ、先には進めないわね。

「キャサリン嬢の事情についてはわかった。呪いに関してはこちらでも対策を考えよう。もっとも先にブリジット達の処刑が先になるがな」

 国王陛下はそう請け負ってくれたけれど、まずはブリジットと宰相の件が片付かないとね。

「ありがとうございます、国王陛下。よろしくお願いします」

 猫のままで頭を下げてみるけれど、何か締まらないわね。

 
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