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43 やっちまったなぁ~
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アラスター王太子の問いかけに国王陛下はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「やっと気が付いたか。そうだ、あれもケンブルに作ってもらった人形だ。脈も呼吸もないから死体役にはぴったりだろう?」
そりゃ人形だから呼吸脈もないのは当たり前よね。
苦しがるふりをしてそのまま目を閉じてしまえば死んだと思われても仕方がないわね。
そうすると医師もあれが偽の国王陛下だとは聞かされていなかったのかもしれないわ。
「確かに父上が死んだふりをしても身体を触れば呼吸や脈があるのがわかって、騙されなかったとは思いますが…」
ブリジットも宰相もあの場で国王陛下が息をしていない事がわかったから、油断もしたでしょうからね。
アラスター王太子はふうっと何度目かわからないため息をつく。
「それにしてもブリジットはいつから父上の暗殺を企てていたのですか?」
アラスター王太子からブリジットへの敬称が消えたけれど、それについては誰も指摘をしなかった。
既に犯罪者として捕らえられた以上、『様』なんて付ける必要はないわね。
「それに関してはこれからの取り調べで明らかになるだろう。宰相にしても、どちらが先に持ちかけた話なのかも突き詰めなければいけないが…。もっともお互いが罪をなすりつけ合うだろうがな」
国王陛下は苦い顔をしながら、フンと鼻で笑った。
ブリジットも宰相も、どちらも国王陛下に寄り添わなければいけない立場でありながら命を狙っていたなんて、笑い話にもならないわね。
「それよりも私はキャサリン嬢に謝らなければならない。自国を追われてこの国に逃げて来られたのに、王家の騒動に巻き込んでしまって本当に申し訳なかった。許して欲しいとは言わないが、せめて謝罪だけはさせてほしい」
突然国王陛下に頭を下げられて、私は慌てふためいた。
国王陛下だけでなく、その後ろに立つサリヴァン侯爵までもが私に頭を下げている。
どうやら私を巻き込んだのはサリヴァン侯爵の作戦だったみたいね。
「あ、あの、国王陛下。どうか頭を上げてください。ちょっと牢獄に閉じ込められただけで、大した被害は被っていませんから…」
『牢獄だって駄目だろう』と、自分でツッコミを入れつつも、必死で二人に頭を上げてもらおうとアタフタする。
「私よりもアラスター王太子の方が大変でした。何しろブリジット様に襲われかけたんですから…」
二人の謝罪を避けようとして、思わず口走ってしまった言葉にハッとした。
もしかして不味い事を言っちゃったかしら。
案の定、国王陛下とサリヴァン侯爵は驚いた顔を見せる。
「アラスターを襲っただと!? あの女め、そこまで見境が無くなっていたか!」
「ブリジットを逮捕しに行った騎士からアラスター王太子も部屋にいたと報告がありましたが、まさかそんな事があったとは…」
非難轟々の二人から目を逸らしてアラスター王太子を見やれば、少しばかり恨めしそうな視線を向けられてしまった。
国王陛下達が落ち着くのを待っていると、ふと思い出したようにサリヴァン侯爵が首を傾げた。
「しかし、ブリジットの部屋にはアラスター王太子しかいなかったと聞いていますが、どうしてそれをキャサリン嬢がご存知なのですか? 私がキャサリン嬢を牢獄から連れ出しに伺った後でアラスター王太子が来られたのですから、そんな話をする時間はなかったはずですが…」
確かにそうよね。
アラスター王太子よりも先にサリヴァン侯爵がやって来たし、それからずっとこの人と一緒だったんだから、そんな話を聞く暇なんてなかったものね。
ここは素直に本当の事を話した方がいいのかしら。
どうしようか迷っていると、急に鼻がムズムズしてきた。
不味い!
そう思った時には既に遅く、私はクシャミをしていた。
クシュン!
目の前の国王陛下とサリヴァン侯爵の顔が驚愕に歪む。
あ~あ、バレちゃった!
「やっと気が付いたか。そうだ、あれもケンブルに作ってもらった人形だ。脈も呼吸もないから死体役にはぴったりだろう?」
そりゃ人形だから呼吸脈もないのは当たり前よね。
苦しがるふりをしてそのまま目を閉じてしまえば死んだと思われても仕方がないわね。
そうすると医師もあれが偽の国王陛下だとは聞かされていなかったのかもしれないわ。
「確かに父上が死んだふりをしても身体を触れば呼吸や脈があるのがわかって、騙されなかったとは思いますが…」
ブリジットも宰相もあの場で国王陛下が息をしていない事がわかったから、油断もしたでしょうからね。
アラスター王太子はふうっと何度目かわからないため息をつく。
「それにしてもブリジットはいつから父上の暗殺を企てていたのですか?」
アラスター王太子からブリジットへの敬称が消えたけれど、それについては誰も指摘をしなかった。
既に犯罪者として捕らえられた以上、『様』なんて付ける必要はないわね。
「それに関してはこれからの取り調べで明らかになるだろう。宰相にしても、どちらが先に持ちかけた話なのかも突き詰めなければいけないが…。もっともお互いが罪をなすりつけ合うだろうがな」
国王陛下は苦い顔をしながら、フンと鼻で笑った。
ブリジットも宰相も、どちらも国王陛下に寄り添わなければいけない立場でありながら命を狙っていたなんて、笑い話にもならないわね。
「それよりも私はキャサリン嬢に謝らなければならない。自国を追われてこの国に逃げて来られたのに、王家の騒動に巻き込んでしまって本当に申し訳なかった。許して欲しいとは言わないが、せめて謝罪だけはさせてほしい」
突然国王陛下に頭を下げられて、私は慌てふためいた。
国王陛下だけでなく、その後ろに立つサリヴァン侯爵までもが私に頭を下げている。
どうやら私を巻き込んだのはサリヴァン侯爵の作戦だったみたいね。
「あ、あの、国王陛下。どうか頭を上げてください。ちょっと牢獄に閉じ込められただけで、大した被害は被っていませんから…」
『牢獄だって駄目だろう』と、自分でツッコミを入れつつも、必死で二人に頭を上げてもらおうとアタフタする。
「私よりもアラスター王太子の方が大変でした。何しろブリジット様に襲われかけたんですから…」
二人の謝罪を避けようとして、思わず口走ってしまった言葉にハッとした。
もしかして不味い事を言っちゃったかしら。
案の定、国王陛下とサリヴァン侯爵は驚いた顔を見せる。
「アラスターを襲っただと!? あの女め、そこまで見境が無くなっていたか!」
「ブリジットを逮捕しに行った騎士からアラスター王太子も部屋にいたと報告がありましたが、まさかそんな事があったとは…」
非難轟々の二人から目を逸らしてアラスター王太子を見やれば、少しばかり恨めしそうな視線を向けられてしまった。
国王陛下達が落ち着くのを待っていると、ふと思い出したようにサリヴァン侯爵が首を傾げた。
「しかし、ブリジットの部屋にはアラスター王太子しかいなかったと聞いていますが、どうしてそれをキャサリン嬢がご存知なのですか? 私がキャサリン嬢を牢獄から連れ出しに伺った後でアラスター王太子が来られたのですから、そんな話をする時間はなかったはずですが…」
確かにそうよね。
アラスター王太子よりも先にサリヴァン侯爵がやって来たし、それからずっとこの人と一緒だったんだから、そんな話を聞く暇なんてなかったものね。
ここは素直に本当の事を話した方がいいのかしら。
どうしようか迷っていると、急に鼻がムズムズしてきた。
不味い!
そう思った時には既に遅く、私はクシャミをしていた。
クシュン!
目の前の国王陛下とサリヴァン侯爵の顔が驚愕に歪む。
あ~あ、バレちゃった!
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