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番外編
7 お土産
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僕がベルトラン王に指し示した物は床に散らばったテオドールが流した真珠の涙だった。
「あんな物でいいのか? ただの人魚の涙だぞ?」
ベルトラン王は不思議そうな顔をするが、真珠は立派な宝石である。
それにラコルデール領で使われた薬の材料になっているかもしれないのだ。
「あれを持って来い」
ベルトラン王が側に控えていた人魚に命令すると、彼女はスッと何処かへ泳いで行くと、やがて箱を持って戻って来た。
彼女は持って来た二つの箱をベルトラン王にうやうやしく差し出す。
「これは儂らの涙を集めた箱だ。特に使い道がないのでこうして箱に入れたままにしておる。アルベール王子が良ければこれを差し上げよう」
ベルトラン王は受け取った箱の一つを開けて僕に中身を見せてくれたが、もう一つの箱が水中にふよふよと浮いているのは、ベルトラン王が魔法でもかけているのだろうか?
開けられた箱には割りと大きな粒の真珠がぎっしりと詰まっていた。
ただ真珠の色がピンクっぽい色や青みがかった色をした物があった。
そこへ先程テオドールが流した真珠の涙を人魚が拾ってきてその箱の中に入れてくれた。
テオドールが流した真珠の涙は青みががっている。
「こちらの大きな粒の真珠は魔力の強い者が流した物だ。ピンクが多いのは最近、リアーヌがテオドールの事を思って泣いていたからだ」
確かに昨日も僕が来たときにリアーヌ王妃は泣いていたっけ。
あの時はリアーヌ王妃との間に距離があったから、彼女の涙が真珠になっているとは気が付かなかったな。
もう一つの箱にはやや小ぶりの真珠が詰まっていたが、こちらはよく見るような白い真珠が主だった。
これだけあればリュシエンヌ嬢への首飾り彼女出来るし、二人の母親と二人の妹たちへの装飾品を作ることが可能だろう。
「ありがとうございます。だけどこんなに頂いてよろしいんですか?」
箱いっぱいの真珠を二箱ももらうなんて、ちょっとぼったくりみたいだな。
僕はマジックバッグに二つの箱をしまった。
テオドールの捜索なんて大した労力も使っていないのに、後で返せとか言われないよね。
「何を言っとる。儂らこそこんな物で申し訳ないくらいだ。アルベール王子が望むなら人魚になれる薬でも、鯨一頭でもやるぞ」
鯨一頭って食べるため? それとも飼うため?
どちらとも判断がつかないし、人魚になる薬ってちょっと迷うな。
だけどこうして水中でも呼吸や会話が出来るのだから、わざわざ人魚になったりする必要性を感じない。
笑顔でそれらは辞退し、真珠の入った箱を二つとも頂戴する。
「アルベールくん、ありがとう。君のお陰で僕は消えずに済んだよ。またいつか会いに来てくれる?」
テオドールがひらひらと泳いで僕の手を取ってお願いしてくる。
そんなふうにお願いされると断れないって知っててやっているのかな。
「そんなに大した事はしてないよ。いつになるかはわからないけど、また会おうね」
この先どうなるかわからないから安易な約束は出来ないけれど、またこうして海に来れたらいいなと思う。
「アルベール王子。海で何か困った事があったら言ってくれ。出来るだけ力になろう」
ベルトラン王も流石に安易な約束はして来ないな。
たとえ海の中でもベルトラン王の力が及ばない事もあるのだろう。
「ありがとうございます。一つだけお聞きしたいのですが、処刑された人魚は人間と交流していたのでしょうか?」
「人間と交流だと? 特に聞いたことはないが?」
「実はこの海の近くの町で人魚の涙を使った薬が出回っていたそうなんです」
僕がラコルデール領での話をするとベルトラン王は眉間にシワを寄せた。
「確かに王宮に落ちている人魚の涙はこうして集めるが、それ以外の場所では放置しているからな。あやつならそれを使って薬を作ってもおかしくはない。人間に渡していたのも実験台にしていたのかもしれんな」
処刑された人魚ってマッドサイエンティストだったのかな?
それがいい方向に向かえば人の役に立てるのに方向を間違えると悲惨だよね。
その処刑された人魚が薬を渡していたのならば、もうこんな騒動は起きないだろう。
「ラコルデール領主に薬を渡してきた人物を確認してみましょう。それではこれで失礼いたします」
僕はベルトラン王達に別れを告げると玉座の間を後にした。
人魚のお姉さんに先導されてまた海辺の町へと戻っていく。
「アルベール様、ありがとうございました。お気をつけて旅をされてくださいね」
海面から顔を出したところで人魚のお姉さんが僕に抱きつき頬にキスをすると、いたずらっほく笑って水中へと潜って行く。
嬉しさ半分、リュシエンヌ嬢に見られなくて良かったという安堵が半分で僕は砂浜に上がった。
またノワールが海水まみれになる前にさっさと海から離れる事にしよう。
僕はブロンの背中に跨るとラコルデール領主の館に向かった
「あんな物でいいのか? ただの人魚の涙だぞ?」
ベルトラン王は不思議そうな顔をするが、真珠は立派な宝石である。
それにラコルデール領で使われた薬の材料になっているかもしれないのだ。
「あれを持って来い」
ベルトラン王が側に控えていた人魚に命令すると、彼女はスッと何処かへ泳いで行くと、やがて箱を持って戻って来た。
彼女は持って来た二つの箱をベルトラン王にうやうやしく差し出す。
「これは儂らの涙を集めた箱だ。特に使い道がないのでこうして箱に入れたままにしておる。アルベール王子が良ければこれを差し上げよう」
ベルトラン王は受け取った箱の一つを開けて僕に中身を見せてくれたが、もう一つの箱が水中にふよふよと浮いているのは、ベルトラン王が魔法でもかけているのだろうか?
開けられた箱には割りと大きな粒の真珠がぎっしりと詰まっていた。
ただ真珠の色がピンクっぽい色や青みがかった色をした物があった。
そこへ先程テオドールが流した真珠の涙を人魚が拾ってきてその箱の中に入れてくれた。
テオドールが流した真珠の涙は青みががっている。
「こちらの大きな粒の真珠は魔力の強い者が流した物だ。ピンクが多いのは最近、リアーヌがテオドールの事を思って泣いていたからだ」
確かに昨日も僕が来たときにリアーヌ王妃は泣いていたっけ。
あの時はリアーヌ王妃との間に距離があったから、彼女の涙が真珠になっているとは気が付かなかったな。
もう一つの箱にはやや小ぶりの真珠が詰まっていたが、こちらはよく見るような白い真珠が主だった。
これだけあればリュシエンヌ嬢への首飾り彼女出来るし、二人の母親と二人の妹たちへの装飾品を作ることが可能だろう。
「ありがとうございます。だけどこんなに頂いてよろしいんですか?」
箱いっぱいの真珠を二箱ももらうなんて、ちょっとぼったくりみたいだな。
僕はマジックバッグに二つの箱をしまった。
テオドールの捜索なんて大した労力も使っていないのに、後で返せとか言われないよね。
「何を言っとる。儂らこそこんな物で申し訳ないくらいだ。アルベール王子が望むなら人魚になれる薬でも、鯨一頭でもやるぞ」
鯨一頭って食べるため? それとも飼うため?
どちらとも判断がつかないし、人魚になる薬ってちょっと迷うな。
だけどこうして水中でも呼吸や会話が出来るのだから、わざわざ人魚になったりする必要性を感じない。
笑顔でそれらは辞退し、真珠の入った箱を二つとも頂戴する。
「アルベールくん、ありがとう。君のお陰で僕は消えずに済んだよ。またいつか会いに来てくれる?」
テオドールがひらひらと泳いで僕の手を取ってお願いしてくる。
そんなふうにお願いされると断れないって知っててやっているのかな。
「そんなに大した事はしてないよ。いつになるかはわからないけど、また会おうね」
この先どうなるかわからないから安易な約束は出来ないけれど、またこうして海に来れたらいいなと思う。
「アルベール王子。海で何か困った事があったら言ってくれ。出来るだけ力になろう」
ベルトラン王も流石に安易な約束はして来ないな。
たとえ海の中でもベルトラン王の力が及ばない事もあるのだろう。
「ありがとうございます。一つだけお聞きしたいのですが、処刑された人魚は人間と交流していたのでしょうか?」
「人間と交流だと? 特に聞いたことはないが?」
「実はこの海の近くの町で人魚の涙を使った薬が出回っていたそうなんです」
僕がラコルデール領での話をするとベルトラン王は眉間にシワを寄せた。
「確かに王宮に落ちている人魚の涙はこうして集めるが、それ以外の場所では放置しているからな。あやつならそれを使って薬を作ってもおかしくはない。人間に渡していたのも実験台にしていたのかもしれんな」
処刑された人魚ってマッドサイエンティストだったのかな?
それがいい方向に向かえば人の役に立てるのに方向を間違えると悲惨だよね。
その処刑された人魚が薬を渡していたのならば、もうこんな騒動は起きないだろう。
「ラコルデール領主に薬を渡してきた人物を確認してみましょう。それではこれで失礼いたします」
僕はベルトラン王達に別れを告げると玉座の間を後にした。
人魚のお姉さんに先導されてまた海辺の町へと戻っていく。
「アルベール様、ありがとうございました。お気をつけて旅をされてくださいね」
海面から顔を出したところで人魚のお姉さんが僕に抱きつき頬にキスをすると、いたずらっほく笑って水中へと潜って行く。
嬉しさ半分、リュシエンヌ嬢に見られなくて良かったという安堵が半分で僕は砂浜に上がった。
またノワールが海水まみれになる前にさっさと海から離れる事にしよう。
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