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94 略奪(ハミルトン視点)
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フェリシアのお披露目で怪我をして帰宅した後、彼女に会えないままフォスター侯爵家のパーティーに出席した。
母上から聞いていた通り、フェリシアもこのパーティーに出席していた。
「ハミルトン様」
フェリシアが僕を見て弾んだような声で名前を呼んでくれた。
お見舞いに来れなかった事を謝ってくれたけれど、そんな事はなんでもない。
それよりもフェリシアとの婚約発表が出来なかった事が残念だと告げると、非常に驚かれた。
どうやら陛下はミランダの事が無くても僕とフェリシアの婚約発表を有耶無耶にするつもりだったようだ。
「あの狸親父め」
思わずポツリと溢してしまったが、フェリシアに聞かれなかっただろうか。
やがてパーティーの主役であるアンジェリカが、父親と共に登場した。
しばらく会っていなかったが、まだ幼さの残る笑顔は以前のままだ。
アンジェリカはパーティーの参加者に笑顔を振りまいていたが、僕を見つけるとエスコート役を僕に頼んできた。
父親を差し置いて僕がエスコートしても良いものだろうか?
一瞬、迷ったが主役であるアンジェリカに恥をかかせるわけにもいかないので、そのままアンジェリカをエスコートして行った。
アンジェリカを椅子に座らせてその場を離れようとしたが、アンジェリカはそれを許さなかった。
仕方なくその場に留まっていたが、挨拶を終えたアンジェリカは僕にファーストダンスの相手をしてほしいと言ってきた。
流石にそれは許されないだろうと思ったが、娘に甘いフォスター侯爵はあっさりと許可を出した。
フェリシアともまだダンスを踊っていないのに…。
笑顔を貼り付けたまま、僕はアンジェリカとダンスを踊ったが、ダンスが終わってもアンジェリカは僕を解放してくれなかった。
二曲目の音楽が始まるとユージーンとセシリア嬢が踊っているのが見えた。
フェリシアは向こうの壁際にポツンと所在無げに立っている。
今すぐに側に駆け寄りたいけれど、それが出来ないのがもどかしい、
三曲目でようやくアンジェリカは父親とダンスを踊るため、ホールの中央に移動した。
よし、今だ!
僕は足早にフェリシアの所に近付くと彼女の前に跪いた。
「フェリシア様、僕と踊っていただけますか?」
ドキドキしながらフェリシアにダンスを申し込んだ。
「喜んで…」
僕の手を取ったフェリシアをエスコートしてダンスフロアへと移動する。
踊りながら僕はフォスター侯爵が僕の父親代わりだった事を話した。
実の父親に捨てられたも同然の僕が腐る事なく成長出来たのも、フォスター侯爵がいてくれたおかげだと思っている。
ダンスを終えてユージーン達の所に戻ると、フォスター侯爵がこちらにやってきた。
「ハミルトン君、申し訳ないんだが、少しアンジェリカの相手をしてやってくれないか? 君がフェリシア様とダンスを踊っていたのがショックだったらしくて、ふてくされているんだ。せっかくの社交デビューの日にそんな顔をするなと注意しているんだが、一向に聞き入れてくれなくてね」
そんなふうに困った顔をしているフォスター侯爵に対して「嫌だ」とはとても言えない。
「いいですよ。僕もアンジェリカには笑顔でいて欲しいですからね。…すみませんが、フェリシア様。御前を失礼いたします」
僕はフェリシアに断ってからフォスター侯爵と共にアンジェリカの元に向かった。
ほんの少し、アンジェリカの相手をしてやればいいと考えていたのだが、甘かった。
アンジェリカはベッタリと僕に張り付いたまま、片時も離れようとしなかった。
僕が側から離れようとすると、潤んだ目で僕を見つめてくるアンジェリカには強く出られない。
子供の頃、アンジェリカの兄達と一緒になって、彼女を泣かせてしまった記憶が蘇ってくる。
結局、パーティーが終わるまで僕はアンジェリカから解放される事はなかった。
母上から聞いていた通り、フェリシアもこのパーティーに出席していた。
「ハミルトン様」
フェリシアが僕を見て弾んだような声で名前を呼んでくれた。
お見舞いに来れなかった事を謝ってくれたけれど、そんな事はなんでもない。
それよりもフェリシアとの婚約発表が出来なかった事が残念だと告げると、非常に驚かれた。
どうやら陛下はミランダの事が無くても僕とフェリシアの婚約発表を有耶無耶にするつもりだったようだ。
「あの狸親父め」
思わずポツリと溢してしまったが、フェリシアに聞かれなかっただろうか。
やがてパーティーの主役であるアンジェリカが、父親と共に登場した。
しばらく会っていなかったが、まだ幼さの残る笑顔は以前のままだ。
アンジェリカはパーティーの参加者に笑顔を振りまいていたが、僕を見つけるとエスコート役を僕に頼んできた。
父親を差し置いて僕がエスコートしても良いものだろうか?
一瞬、迷ったが主役であるアンジェリカに恥をかかせるわけにもいかないので、そのままアンジェリカをエスコートして行った。
アンジェリカを椅子に座らせてその場を離れようとしたが、アンジェリカはそれを許さなかった。
仕方なくその場に留まっていたが、挨拶を終えたアンジェリカは僕にファーストダンスの相手をしてほしいと言ってきた。
流石にそれは許されないだろうと思ったが、娘に甘いフォスター侯爵はあっさりと許可を出した。
フェリシアともまだダンスを踊っていないのに…。
笑顔を貼り付けたまま、僕はアンジェリカとダンスを踊ったが、ダンスが終わってもアンジェリカは僕を解放してくれなかった。
二曲目の音楽が始まるとユージーンとセシリア嬢が踊っているのが見えた。
フェリシアは向こうの壁際にポツンと所在無げに立っている。
今すぐに側に駆け寄りたいけれど、それが出来ないのがもどかしい、
三曲目でようやくアンジェリカは父親とダンスを踊るため、ホールの中央に移動した。
よし、今だ!
僕は足早にフェリシアの所に近付くと彼女の前に跪いた。
「フェリシア様、僕と踊っていただけますか?」
ドキドキしながらフェリシアにダンスを申し込んだ。
「喜んで…」
僕の手を取ったフェリシアをエスコートしてダンスフロアへと移動する。
踊りながら僕はフォスター侯爵が僕の父親代わりだった事を話した。
実の父親に捨てられたも同然の僕が腐る事なく成長出来たのも、フォスター侯爵がいてくれたおかげだと思っている。
ダンスを終えてユージーン達の所に戻ると、フォスター侯爵がこちらにやってきた。
「ハミルトン君、申し訳ないんだが、少しアンジェリカの相手をしてやってくれないか? 君がフェリシア様とダンスを踊っていたのがショックだったらしくて、ふてくされているんだ。せっかくの社交デビューの日にそんな顔をするなと注意しているんだが、一向に聞き入れてくれなくてね」
そんなふうに困った顔をしているフォスター侯爵に対して「嫌だ」とはとても言えない。
「いいですよ。僕もアンジェリカには笑顔でいて欲しいですからね。…すみませんが、フェリシア様。御前を失礼いたします」
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僕が側から離れようとすると、潤んだ目で僕を見つめてくるアンジェリカには強く出られない。
子供の頃、アンジェリカの兄達と一緒になって、彼女を泣かせてしまった記憶が蘇ってくる。
結局、パーティーが終わるまで僕はアンジェリカから解放される事はなかった。
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