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90. 意気投合(ユージーン視点)
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ミランダの騒動が収まって平穏な日々を過ごしていた。
あの時、僕とフェリシアを庇って怪我をしたハミルトンのお見舞いに行きたかったが、幸い魔術師のおかげで回復したので不要だとアシェトン公爵家から連絡があった。
フェリシアもお見舞いに行きたいと父上に懇願していたが、父上に却下されていた。
僕もフェリシアとハミルトンを会わせたくなかったので父上の判断には大賛成だった。
二人には申し訳ないが、やはりまだフェリシアとハミルトンの仲が進展して欲しくはないからな。
中途半端な形のお披露目だったが、フェリシアの元には貴族達から招待状が届いているらしい。
どの貴族と付き合っていけばいいのか悩んでいるみたいだったが、女性の社交がわからない僕と父上では迂闊に口は挟めない。
今の王族の女性はフェリシアしかいないからな。
母上が亡くなったばかりではあるが、父上には早く再婚して王妃となる立場の女性を得てほしいと思う。
結局、フェリシアはアシェトン公爵夫人に助言をお願いしたようだ。
彼女ならば何の問題もないだろう。
フェリシアの邪魔をしては悪いと思い、二人のお茶会には顔を出さなかったが、どうやら父上が途中から参加したようだ。
それならば僕も変に遠慮せずに顔を出せば良かったな。
残念に思っていたが、その機会はすぐにやってきた。
その数日後、フェリシアがまたお茶会を開くというのだ。
今日の父上は顔を出すような時間はないだろうから代わりに僕が行くとしよう。
手早く書類を片付けると僕は立ち上がった。
「少し休憩してくる。皆も手を休めていいぞ」
「え? ユージーン様?」
戸惑っている文官を尻目に僕は執務室を出ると、フェリシアがお茶会を開いている中庭へと向かった。
四阿にはフェリシアともう一人の女性の姿が見えた。
近付くにつれてその女性がパークリー侯爵家のセシリアだとわかった。
顔と名前は把握しているが実際に会話を交わした事はない。
媚びて擦り寄ってくるような女じゃなければいいな、と思いながら彼女達に声をかけた。
「やあ、フェリシアにセシリア嬢、お邪魔するよ」
先日は父上が顔を出したせいか、フェリシアは僕が来る事を見越していたようだ。
二人に挟まれる形で腰を下ろすとすかさずアガサがお茶を淹れてくれた。
「お兄様、お仕事はよろしいんですの?」
フェリシアがそう聞いて来るけれど、たまには休養も必要だよ。
そう告げるとフェリシアよりも先にセシリアが同意してくれた。
それに気を良くして彼女に話しかけたが、他の女性のように媚びたような物言いをする事もなく非常に好感が持てた。
何よりも色目を使ってこない所が良かった。
おまけに話も面白く、一緒に通っていた貴族院の話で盛り上がってしまい、時間を忘れて話し込んでいた。
「…あのー」
そんな遠慮がちな声でようやく僕とセシリアはこの場にフェリシアがいた事を思い出した。
「あ、フェリシアがいたんだったね。ゴメンゴメン。ついつい話が弾んじゃったよ」
別にフェリシアを邪険にするつもりはなかったんだが、何故かこの時はその存在を忘れてしまっていた。
「そろそろお兄様はお仕事に戻られた方がいいみたいですわ」
フェリシアの視線の先に目をやると文官がこちらに近寄って来ていた。
「ユージーン様、そろそろ戻っていただかないと今日中に終わりませんよ」
まったく無粋な男だな。
だけどセシリアに仕事の出来ない男だと思われたくないので僕は渋々立ち上がった。
「せっかくセシリア嬢と楽しく語らっていたのに残念です。それではまたお会いしましょう」
そしてセシリアの手を取ってその甲に軽く口付けると薄っすらと頬を染めるのが見えた。
その表情に満足して僕は文官と共に執務室へと戻って行った。
…あれ?
何か忘れているような気がするが…。
まあ、いいか。
あの時、僕とフェリシアを庇って怪我をしたハミルトンのお見舞いに行きたかったが、幸い魔術師のおかげで回復したので不要だとアシェトン公爵家から連絡があった。
フェリシアもお見舞いに行きたいと父上に懇願していたが、父上に却下されていた。
僕もフェリシアとハミルトンを会わせたくなかったので父上の判断には大賛成だった。
二人には申し訳ないが、やはりまだフェリシアとハミルトンの仲が進展して欲しくはないからな。
中途半端な形のお披露目だったが、フェリシアの元には貴族達から招待状が届いているらしい。
どの貴族と付き合っていけばいいのか悩んでいるみたいだったが、女性の社交がわからない僕と父上では迂闊に口は挟めない。
今の王族の女性はフェリシアしかいないからな。
母上が亡くなったばかりではあるが、父上には早く再婚して王妃となる立場の女性を得てほしいと思う。
結局、フェリシアはアシェトン公爵夫人に助言をお願いしたようだ。
彼女ならば何の問題もないだろう。
フェリシアの邪魔をしては悪いと思い、二人のお茶会には顔を出さなかったが、どうやら父上が途中から参加したようだ。
それならば僕も変に遠慮せずに顔を出せば良かったな。
残念に思っていたが、その機会はすぐにやってきた。
その数日後、フェリシアがまたお茶会を開くというのだ。
今日の父上は顔を出すような時間はないだろうから代わりに僕が行くとしよう。
手早く書類を片付けると僕は立ち上がった。
「少し休憩してくる。皆も手を休めていいぞ」
「え? ユージーン様?」
戸惑っている文官を尻目に僕は執務室を出ると、フェリシアがお茶会を開いている中庭へと向かった。
四阿にはフェリシアともう一人の女性の姿が見えた。
近付くにつれてその女性がパークリー侯爵家のセシリアだとわかった。
顔と名前は把握しているが実際に会話を交わした事はない。
媚びて擦り寄ってくるような女じゃなければいいな、と思いながら彼女達に声をかけた。
「やあ、フェリシアにセシリア嬢、お邪魔するよ」
先日は父上が顔を出したせいか、フェリシアは僕が来る事を見越していたようだ。
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「お兄様、お仕事はよろしいんですの?」
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それに気を良くして彼女に話しかけたが、他の女性のように媚びたような物言いをする事もなく非常に好感が持てた。
何よりも色目を使ってこない所が良かった。
おまけに話も面白く、一緒に通っていた貴族院の話で盛り上がってしまい、時間を忘れて話し込んでいた。
「…あのー」
そんな遠慮がちな声でようやく僕とセシリアはこの場にフェリシアがいた事を思い出した。
「あ、フェリシアがいたんだったね。ゴメンゴメン。ついつい話が弾んじゃったよ」
別にフェリシアを邪険にするつもりはなかったんだが、何故かこの時はその存在を忘れてしまっていた。
「そろそろお兄様はお仕事に戻られた方がいいみたいですわ」
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「ユージーン様、そろそろ戻っていただかないと今日中に終わりませんよ」
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そしてセシリアの手を取ってその甲に軽く口付けると薄っすらと頬を染めるのが見えた。
その表情に満足して僕は文官と共に執務室へと戻って行った。
…あれ?
何か忘れているような気がするが…。
まあ、いいか。
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