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85 浄化
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扉の影に隠れるようにしてお兄様は扉を開けたが、剣が突然斬りかかってくる事はなかった。
ホッとしながらもお兄様の部屋に足を踏み入れると、部屋の片隅に禍々しいオーラを放った木箱が見えた。
「この箱の中に入れたんだが、まだそのままのようだな」
それでもいつ箱の蓋が開いて剣が飛び出して来ないとも限らない。
どうしたらあの剣を処分出来るのかしら?
そんな事を考えているうちにその箱がガタガタと音を立てて揺れだした。
まるで「エクソシスト」みたいだわ。
お兄様は素早く壁に掛けられた剣を手に取ると、両手に握って身構えた。
「フェリシア、気を付けろ。剣が飛んでくるぞ」
お兄様の言葉の通りに箱の蓋が開いたかと思うと、中から剣が飛び出してきた。
自分に向かって飛んできた剣をお兄様は難なく自分の剣で弾き飛ばす。
ミランダが憑依している剣はお兄様に向かって飛んでいくが、その度に上手くかわされている。
もっと剣の動きが素早いかと思っていたが、そんなに早くは動けないようだ。
憑依してもそれほど剣に魂が馴染んでいないのかもしれない。
私はお兄様の邪魔にならないように壁際に立っていたのだが、どうやら剣は私に気付いたようだ。
お兄様に向かいかけていた剣が方向転換をして私の方をめがけてきた。
壁に寄りかかっていた私はすんでの所でその剣を回避した。
剣は私の姿が消えた壁にそのまま突き刺さった。
「くっ、抜けない!」
私は真横で壁に突き刺さっている剣を見つめた。
剣の柄の部分から禍々しいオーラ頑張って出ているのが見える。
もしかしたらこの柄の中に憑依しているのかもしれない。
「お兄様! この柄の部分を斬って!」
私が叫びながらその場から逃げると、お兄様は柄の部分に剣を振り下ろした。
「ギャアアア!」
断末魔と共に柄の部分が割れて、ドロリと黒い血が流れ落ちる。
やはりこの柄の中にミランダの魂を取り込めるようにしていたのだろう。
柄が割れた事で憑依していた魂も消滅してしまったようだ。
「…終わったのか?」
お父様が壁に刺さったまま動かなくなった剣を見て安堵の声をあげる。
「どうやらそうみたいです。ありがとう、フェリシア。フェリシアのお陰で助かったよ」
「とんでもありません。お兄様にお怪我が無くて良かったです」
お兄様は壁に突き刺さった剣を抜くとしげしげと眺めた。
「それにしてもよくもまあこんな剣を作ったものだな。復讐など考えずにその才能を活かす事を考えれば良かったのに…」
しみじみと呟きながらお兄様はその剣と壊れた柄を箱に入れた。
「そういう生き方しか出来なかったのだろう。ブライアン、もう何も起きないとは思うが万が一の為、これは燃やしてくれ」
お父様はお兄様が持っている箱を宰相に手渡した。
「かしこまりました。後で詳しい話を聞かせてもらいますよ」
宰相はお父様から箱を受け取ると、一礼して部屋を出て行った。
床にはまだ、柄からこぼれた黒い血が残ったままだ。
ここは私が綺麗にしてあげないとね。
ついでにミランダの魂が天国に行けるようにお祈りしよう。
「どうか安らかにお眠りください」
そう祈りながらクリーン魔法を床にかけると、ピカッと光って何かが天に昇って行くのが見えた。
「フェリシア、今のは何だ?」
お兄様だけでなくお父様とアガサも怪訝な顔をしている。
「クリーン魔法をかけたつもりだったのですが…。ミランダの魂も天国に行けるようにお祈りをしたせいかしら」
「天国に行けるように? それは浄化魔法じゃないのか?」
お兄様に呆れた顔をしているけれど、私は浄化魔法なんてかけたつもりはないんだけど…。
とりあえずこの騒動は終わったみたいだから良しとしましょう。
ところでお披露目のやり直しなんてしないわよね?
ホッとしながらもお兄様の部屋に足を踏み入れると、部屋の片隅に禍々しいオーラを放った木箱が見えた。
「この箱の中に入れたんだが、まだそのままのようだな」
それでもいつ箱の蓋が開いて剣が飛び出して来ないとも限らない。
どうしたらあの剣を処分出来るのかしら?
そんな事を考えているうちにその箱がガタガタと音を立てて揺れだした。
まるで「エクソシスト」みたいだわ。
お兄様は素早く壁に掛けられた剣を手に取ると、両手に握って身構えた。
「フェリシア、気を付けろ。剣が飛んでくるぞ」
お兄様の言葉の通りに箱の蓋が開いたかと思うと、中から剣が飛び出してきた。
自分に向かって飛んできた剣をお兄様は難なく自分の剣で弾き飛ばす。
ミランダが憑依している剣はお兄様に向かって飛んでいくが、その度に上手くかわされている。
もっと剣の動きが素早いかと思っていたが、そんなに早くは動けないようだ。
憑依してもそれほど剣に魂が馴染んでいないのかもしれない。
私はお兄様の邪魔にならないように壁際に立っていたのだが、どうやら剣は私に気付いたようだ。
お兄様に向かいかけていた剣が方向転換をして私の方をめがけてきた。
壁に寄りかかっていた私はすんでの所でその剣を回避した。
剣は私の姿が消えた壁にそのまま突き刺さった。
「くっ、抜けない!」
私は真横で壁に突き刺さっている剣を見つめた。
剣の柄の部分から禍々しいオーラ頑張って出ているのが見える。
もしかしたらこの柄の中に憑依しているのかもしれない。
「お兄様! この柄の部分を斬って!」
私が叫びながらその場から逃げると、お兄様は柄の部分に剣を振り下ろした。
「ギャアアア!」
断末魔と共に柄の部分が割れて、ドロリと黒い血が流れ落ちる。
やはりこの柄の中にミランダの魂を取り込めるようにしていたのだろう。
柄が割れた事で憑依していた魂も消滅してしまったようだ。
「…終わったのか?」
お父様が壁に刺さったまま動かなくなった剣を見て安堵の声をあげる。
「どうやらそうみたいです。ありがとう、フェリシア。フェリシアのお陰で助かったよ」
「とんでもありません。お兄様にお怪我が無くて良かったです」
お兄様は壁に突き刺さった剣を抜くとしげしげと眺めた。
「それにしてもよくもまあこんな剣を作ったものだな。復讐など考えずにその才能を活かす事を考えれば良かったのに…」
しみじみと呟きながらお兄様はその剣と壊れた柄を箱に入れた。
「そういう生き方しか出来なかったのだろう。ブライアン、もう何も起きないとは思うが万が一の為、これは燃やしてくれ」
お父様はお兄様が持っている箱を宰相に手渡した。
「かしこまりました。後で詳しい話を聞かせてもらいますよ」
宰相はお父様から箱を受け取ると、一礼して部屋を出て行った。
床にはまだ、柄からこぼれた黒い血が残ったままだ。
ここは私が綺麗にしてあげないとね。
ついでにミランダの魂が天国に行けるようにお祈りしよう。
「どうか安らかにお眠りください」
そう祈りながらクリーン魔法を床にかけると、ピカッと光って何かが天に昇って行くのが見えた。
「フェリシア、今のは何だ?」
お兄様だけでなくお父様とアガサも怪訝な顔をしている。
「クリーン魔法をかけたつもりだったのですが…。ミランダの魂も天国に行けるようにお祈りをしたせいかしら」
「天国に行けるように? それは浄化魔法じゃないのか?」
お兄様に呆れた顔をしているけれど、私は浄化魔法なんてかけたつもりはないんだけど…。
とりあえずこの騒動は終わったみたいだから良しとしましょう。
ところでお披露目のやり直しなんてしないわよね?
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