76 / 98
76 決着
しおりを挟む
その途端、ミランダは私から手を離すと両手で目を覆った。
「ギャアアア! 目が…目が…焼ける!」
ミランダの叫びに私は唖然とした。
そんなに目に影響のあるような光だったろうか?
私には普通に眩しいだけの光だったのに、ミランダにとっては違ったようだ。
ミランダが離れたせいか、先程まで動けなかった身体も普通に動かす事が出来るようになっている。
それはお父様とお兄様にとっても同じだったようだ。
動けるようになったお兄様の行動は早かった。
剣を持ったままミランダに踊りかかったかと思うと、目を押さえているミランダの胸を一突きにした。
「グッ!」
胸を剣に貫かれたまま、ミランダはその場に倒れた。
お兄様は私の側に駆け寄ると、ミランダから私を庇うように立ち塞がる。
けれどミランダは起き上がる事も出来ずに、顔を私に向けたまま息絶えた。
見開かれたままの目がこちらを見ているが、その目に光はなかった。
「フェリシア、傷は大丈夫か?」
ミランダの死を見届けたお兄様が、私の傷を心配してくれる。
「大丈夫、かすり傷です。私よりもお父様の方が…」
私の言葉にお兄様が慌ててお父様の元に駆け寄った。
お父様も身体が動けるようになったためか、その場にうずくまっている。
剣によってつけられた傷から、血がとめどなく溢れている。
「早く止血しないとお父様が死んでしまうわ」
「だけど、この場にヒールを使える魔術師はいないぞ。こんな時間じゃ王宮に残っている魔術師もいないだろう」
「そ、そんな…」
お父様は既に顔面蒼白で息も絶え絶えになっている。
ヒールを使える魔術師を探しに行っても間に合うかどうかわからない。
(私にヒールが使えたら…)
うずくまっているお父様の傷に触れながらそんな事を考えると、突然私の手がぼうっと光った。
その光によってお父様の傷が消えていく。
「フェリシア? まさかヒールが使えたのか?」
お兄様が驚きの声をあげるが、驚いているのは私も一緒だ。
傷が塞がっていくにつれて、お父様の顔色もだんだんと良くなってくる。
傷は治ったけれど、切り裂かれた衣服までは修理出来ないみたいね。
お兄様に手を取られて立ち上がったお父様だけれど、少しふらついてお兄様にもたれかかっている。
「ありがとう、フェリシア。まさかお前がヒールを使えるなんて知らなかったよ」
「私も今日初めて知りました。…もっと早くわかっていたらジェシカも死なずにすんだのかしら…」
私は自分の手を見つめながら、日に日に弱っていったジェシカを思い出していた。
魔法がある世界に転生したのに、どうして「ヒール」を試さなかったのかしら…。
ごめんね、ジェシカ。
「フェリシア。ジェシカだってわかってくれているよ。そんなに気に病むことはない」
お兄様が優しく頭を撫でて私を慰めてくれる。
「それにしても、ミランダが私の妹だったとは…」
お父様の呟きに私ははっとミランダの遺体に目を向けた。
「すみません、父上。生かしておいて色々と聞かなければいけない事があったのでしょうが、手加減出来ませんでした」
「いや、あの場合は仕方がない。それにたとえ生かしておいても結局は死刑になるのだからな」
お父様が憐れみの目をミランダに向ける。
前国王の娘と認められていれば、こんな事態にはならなかったのだろうか?
復讐など考えなければミランダはもっと別の幸せを掴めたかもしれない。
「…う…」
倒れているアガサからうめき声が聞こえて、私は急いでアガサを助け起こした。
「アガサ、大丈夫?」
「フェリシア様。大丈夫です。それよりミランダは?」
起き上がったアガサは倒れているミランダを見て何があったのかを察したようだ。
「まさかミランダがフェリシア様を襲ってくるなんて思いもしませんでした。こんな事になって残念です」
アガサは視線をお父様に向けると不思議そうに首をかしげた。
「ところで陛下。どうしてそんなにお召し物が破れているのですか?」
「ギャアアア! 目が…目が…焼ける!」
ミランダの叫びに私は唖然とした。
そんなに目に影響のあるような光だったろうか?
私には普通に眩しいだけの光だったのに、ミランダにとっては違ったようだ。
ミランダが離れたせいか、先程まで動けなかった身体も普通に動かす事が出来るようになっている。
それはお父様とお兄様にとっても同じだったようだ。
動けるようになったお兄様の行動は早かった。
剣を持ったままミランダに踊りかかったかと思うと、目を押さえているミランダの胸を一突きにした。
「グッ!」
胸を剣に貫かれたまま、ミランダはその場に倒れた。
お兄様は私の側に駆け寄ると、ミランダから私を庇うように立ち塞がる。
けれどミランダは起き上がる事も出来ずに、顔を私に向けたまま息絶えた。
見開かれたままの目がこちらを見ているが、その目に光はなかった。
「フェリシア、傷は大丈夫か?」
ミランダの死を見届けたお兄様が、私の傷を心配してくれる。
「大丈夫、かすり傷です。私よりもお父様の方が…」
私の言葉にお兄様が慌ててお父様の元に駆け寄った。
お父様も身体が動けるようになったためか、その場にうずくまっている。
剣によってつけられた傷から、血がとめどなく溢れている。
「早く止血しないとお父様が死んでしまうわ」
「だけど、この場にヒールを使える魔術師はいないぞ。こんな時間じゃ王宮に残っている魔術師もいないだろう」
「そ、そんな…」
お父様は既に顔面蒼白で息も絶え絶えになっている。
ヒールを使える魔術師を探しに行っても間に合うかどうかわからない。
(私にヒールが使えたら…)
うずくまっているお父様の傷に触れながらそんな事を考えると、突然私の手がぼうっと光った。
その光によってお父様の傷が消えていく。
「フェリシア? まさかヒールが使えたのか?」
お兄様が驚きの声をあげるが、驚いているのは私も一緒だ。
傷が塞がっていくにつれて、お父様の顔色もだんだんと良くなってくる。
傷は治ったけれど、切り裂かれた衣服までは修理出来ないみたいね。
お兄様に手を取られて立ち上がったお父様だけれど、少しふらついてお兄様にもたれかかっている。
「ありがとう、フェリシア。まさかお前がヒールを使えるなんて知らなかったよ」
「私も今日初めて知りました。…もっと早くわかっていたらジェシカも死なずにすんだのかしら…」
私は自分の手を見つめながら、日に日に弱っていったジェシカを思い出していた。
魔法がある世界に転生したのに、どうして「ヒール」を試さなかったのかしら…。
ごめんね、ジェシカ。
「フェリシア。ジェシカだってわかってくれているよ。そんなに気に病むことはない」
お兄様が優しく頭を撫でて私を慰めてくれる。
「それにしても、ミランダが私の妹だったとは…」
お父様の呟きに私ははっとミランダの遺体に目を向けた。
「すみません、父上。生かしておいて色々と聞かなければいけない事があったのでしょうが、手加減出来ませんでした」
「いや、あの場合は仕方がない。それにたとえ生かしておいても結局は死刑になるのだからな」
お父様が憐れみの目をミランダに向ける。
前国王の娘と認められていれば、こんな事態にはならなかったのだろうか?
復讐など考えなければミランダはもっと別の幸せを掴めたかもしれない。
「…う…」
倒れているアガサからうめき声が聞こえて、私は急いでアガサを助け起こした。
「アガサ、大丈夫?」
「フェリシア様。大丈夫です。それよりミランダは?」
起き上がったアガサは倒れているミランダを見て何があったのかを察したようだ。
「まさかミランダがフェリシア様を襲ってくるなんて思いもしませんでした。こんな事になって残念です」
アガサは視線をお父様に向けると不思議そうに首をかしげた。
「ところで陛下。どうしてそんなにお召し物が破れているのですか?」
14
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆小説家になろう様でも、公開中◆

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜
清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。
クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。
(過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…)
そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。
移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。
また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。
「俺は君を愛する資格を得たい」
(皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?)
これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる