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74 凶行
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ミランダと私の前で宙に浮いている剣はスッとお兄様の所に近寄って行った。
お兄様の目の前でピタリと剣が止まる。
隙を見てその剣でミランダに斬り掛かってくれたらいいのに…。
けれど、お兄様は身動き一つせずに、剣を凝視している。
お兄様達と私達の距離を考えれば、お兄様がミランダに斬り掛かるより先に私がミランダに殺されそうだわ。
お兄様もそれがわかっているから、剣に手を伸ばそうとしないのね。
「ユージーン、その剣でエリックを斬りなさい!」
まさかとは思ったが、一番聞きたくない言葉がミランダから発せられた。
その途端、ものすごい形相でお兄様がミランダを睨みつける。
いつも優しい眼差ししか知らなかったけれど、お兄様にはこんな顔も出来るのね。
剣に手を伸ばそうとしないお兄様にミランダは更に追い打ちをかける。
「あなたがエリックを斬らないのならば、私がこのフェリシアを切るわよ。自分の父親と、ほんの少し前に現れたばかりの妹。あなたはどちらを選ぶのかしら?」
お父様と私の命を天秤にかけるのね。
そんなの決まってるわ。
当然付き合いの長いお父様を選ぶに決まっているじゃない。
「ユージーン! 私の事はいいからフェリシアを助けてやってくれ」
お父様は私を助けようとしてくれるけれど、お兄様にお父様が斬れるわけないじゃない。
「どう、エリック? 自分の息子に殺されるのと、自分の娘が目の前で殺されるのと、どちらがお好みかしら?」
ミランダが心底愉しそうな声でお父様に問いかける。
そんな選択肢なんてちっとも嬉しくないわ。
一向に剣を持とうとしないお兄様に業を煮やしたミランダは強行手段に出る事にしたようだ。
「こんな手は使いたくなかったんだけど、仕方がないわね。…さあ、ユージーン。剣を持ちなさい」
ミランダが命令すると、お兄様の手が剣の柄に伸ばされた。
お兄様は必死に抗おうとしているようで、ブルブルと震える手が剣の柄に伸ばされる。
「やめろ! ミランダ! 僕に父親殺しをさせる気か!」
「勿論よ。エリックは息子に殺されて死亡。息子は父親殺しの罪で処刑。この国はフェリシアが継ぐけれど、後見人として私が側にいてあげるわ。フェリシアはただ玉座に座っていればいいだけよ」
私に王位を継がせるような事を言っているが、おそらく傀儡として私を操るつもりなのだろう。
このままミランダの思い通りにさせたくはない。
そのうちにお父様の身体が硬直したように動かなくなったかと思うと、お兄様が剣を振りかぶった。
お兄様が剣を振り下ろすと同時にお父様の身体から血が飛び散る。
「くっ!」
お父様の顔が苦痛で歪むけれど、硬直した身体は微動だにしていない。
ダラダラとお父様の血が流れて衣服を濡らしていく。
「大丈夫。ひと思いに殺したりはしないわ。じわじわとなぶり殺してあげる」
「やめろ、ミランダ! これ以上はやめてくれ!」
お兄様が叫ぶとミランダは、「チッ」と舌打ちをする。
「ギャアギャアうるさいわね。少し静かにしてちょうだい」
お兄様の口がはくはくと動くけれど、声はは発せられなくなっていた。
「それじゃ次にいきましょうか。今度は反対側にしましょうか」
またもやお兄様が剣を振りかぶると、今度は反対側に斬り掛かった。
「うわあっ!」
お父様の叫び声と同時にまたもや血しぶきがあがって、お兄様の頬に飛び散った。
お兄様の目から溢れた涙が、その血を洗い流していく。
「うふふ、楽しいわね。本当はこれを前国王とエリックでやりたかったのよ。ねぇ、エリック。殺す方と殺される方とどちらが良かったかしらね」
楽しそうなミランダの声に私はゾッとした。
こんな事をさせて喜んでいるなんて、明らかに狂ってるわ。
もうやめさせないと、お父様が死んでしまう。
またもお兄様が剣を振りかぶった途端、私は思いっきり叫んだ。
「もう、止めて!」
その途端、まばゆい光があたりを照らした。
お兄様の目の前でピタリと剣が止まる。
隙を見てその剣でミランダに斬り掛かってくれたらいいのに…。
けれど、お兄様は身動き一つせずに、剣を凝視している。
お兄様達と私達の距離を考えれば、お兄様がミランダに斬り掛かるより先に私がミランダに殺されそうだわ。
お兄様もそれがわかっているから、剣に手を伸ばそうとしないのね。
「ユージーン、その剣でエリックを斬りなさい!」
まさかとは思ったが、一番聞きたくない言葉がミランダから発せられた。
その途端、ものすごい形相でお兄様がミランダを睨みつける。
いつも優しい眼差ししか知らなかったけれど、お兄様にはこんな顔も出来るのね。
剣に手を伸ばそうとしないお兄様にミランダは更に追い打ちをかける。
「あなたがエリックを斬らないのならば、私がこのフェリシアを切るわよ。自分の父親と、ほんの少し前に現れたばかりの妹。あなたはどちらを選ぶのかしら?」
お父様と私の命を天秤にかけるのね。
そんなの決まってるわ。
当然付き合いの長いお父様を選ぶに決まっているじゃない。
「ユージーン! 私の事はいいからフェリシアを助けてやってくれ」
お父様は私を助けようとしてくれるけれど、お兄様にお父様が斬れるわけないじゃない。
「どう、エリック? 自分の息子に殺されるのと、自分の娘が目の前で殺されるのと、どちらがお好みかしら?」
ミランダが心底愉しそうな声でお父様に問いかける。
そんな選択肢なんてちっとも嬉しくないわ。
一向に剣を持とうとしないお兄様に業を煮やしたミランダは強行手段に出る事にしたようだ。
「こんな手は使いたくなかったんだけど、仕方がないわね。…さあ、ユージーン。剣を持ちなさい」
ミランダが命令すると、お兄様の手が剣の柄に伸ばされた。
お兄様は必死に抗おうとしているようで、ブルブルと震える手が剣の柄に伸ばされる。
「やめろ! ミランダ! 僕に父親殺しをさせる気か!」
「勿論よ。エリックは息子に殺されて死亡。息子は父親殺しの罪で処刑。この国はフェリシアが継ぐけれど、後見人として私が側にいてあげるわ。フェリシアはただ玉座に座っていればいいだけよ」
私に王位を継がせるような事を言っているが、おそらく傀儡として私を操るつもりなのだろう。
このままミランダの思い通りにさせたくはない。
そのうちにお父様の身体が硬直したように動かなくなったかと思うと、お兄様が剣を振りかぶった。
お兄様が剣を振り下ろすと同時にお父様の身体から血が飛び散る。
「くっ!」
お父様の顔が苦痛で歪むけれど、硬直した身体は微動だにしていない。
ダラダラとお父様の血が流れて衣服を濡らしていく。
「大丈夫。ひと思いに殺したりはしないわ。じわじわとなぶり殺してあげる」
「やめろ、ミランダ! これ以上はやめてくれ!」
お兄様が叫ぶとミランダは、「チッ」と舌打ちをする。
「ギャアギャアうるさいわね。少し静かにしてちょうだい」
お兄様の口がはくはくと動くけれど、声はは発せられなくなっていた。
「それじゃ次にいきましょうか。今度は反対側にしましょうか」
またもやお兄様が剣を振りかぶると、今度は反対側に斬り掛かった。
「うわあっ!」
お父様の叫び声と同時にまたもや血しぶきがあがって、お兄様の頬に飛び散った。
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「うふふ、楽しいわね。本当はこれを前国王とエリックでやりたかったのよ。ねぇ、エリック。殺す方と殺される方とどちらが良かったかしらね」
楽しそうなミランダの声に私はゾッとした。
こんな事をさせて喜んでいるなんて、明らかに狂ってるわ。
もうやめさせないと、お父様が死んでしまう。
またもお兄様が剣を振りかぶった途端、私は思いっきり叫んだ。
「もう、止めて!」
その途端、まばゆい光があたりを照らした。
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