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72 脅迫
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ミランダが王妃様をお父様に執着させた?
本当にそんな事が可能なのかしら?
私は半信半疑だったけれど、お父様には何か思い当たる事があるようだった。
「確かに婚約した当初は普通に私と接していたような気がする。王妃教育をするために王宮に出入りするようになってから、徐々に私に構うようになってきたが、それはお前がそう仕向けたのか?」
「その通りよ。私が世話係に任命されたから、ソフィアに暗示をかけてあなたに執着させたの。それと同時に一緒に侍女をしていたアイリスをあなたに近付けたら、面白いようにあなたはアイリスに夢中になっていったわ」
ミランダの言う通りならば、私はミランダのお陰で生まれたようなものだ。
けれど、お父様にとっては聞きたくもない話だったようだ。
「お前がソフィアを私に執着させたから、私はアイリスを好きになったと言いたいのか? 私とアイリスは真剣に愛し合っていたのに…」
お父様は随分とショックを受けているようだけれど、お兄様が生まれた以上王妃様と離婚なんて出来なかっただろうし、私の母をそのまま王宮には置いておけなかったと思う。
がっくりと打ちひしがれているお父様を見てミランダは高らかな笑い声をあげる。
「本当に見ていて楽しかったわ。ソフィアが怒り狂ったようにアイリスを追い出す姿も、それを知って酷く落ち込むあなたを見た時は溜飲が下がったわ」
身動き一つ出来ないまま、ミランダの話を聞くのは辛すぎる。
私がこうしてミランダに捕まっている以上、お父様もお兄様もミランダに手出しが出来ない。
全神経を指先に集中させてみると、ピクリとほんの僅かだけ指を動かす事が出来た。
この調子で何とかミランダの束縛から逃れたい。
お父様は悲痛な面持ちでミランダに尋ねた。
「お前はアイリスが妊娠している事を知っていて、ソフィアに王宮から追い出させたのか?」
ミランダは残忍そうな表情を浮かべてお父様を見つめる。
「残念ながら知らなかったわ。知ってたらもっとあなたが苦しむような方法を考えたのに…。例えばアイリスを流産させた挙げ句、死なせるとかね」
ミランダの答えにお父様とお兄様は驚愕で目を見開いている。
私も先程「私が生まれたのはミランダのお陰」なんて思った事を後悔した。
私の母の妊娠が発覚していたら、私はミランダによって母の胎内で殺されていたかもしれないのだ。
「なんて事を! お前はそれでも人の子か?」
お兄様が我慢出来ないとばかりに叫んでいる。
けれどミランダはそれを鼻で笑った。
「元はと言えば前国王が私の母を弄んで、王妃が追い出したからよ! 私のせいじゃないわ!」
確かにミランダは前国王の娘である事は間違いないだろう。
だけど、本当に前国王がミランダの母を襲ったのだろうか?
前王妃の言うようにミランダの母が前国王を誘惑したのではないだろうか?
既に三人共この世にいないので、今更どれが真実なのかは確認のしようがない。
ミランダの母が「前国王に乱暴された」と、ミランダに嘘を吹き込んだかもしれないのだ。
「そろそろおしゃべりは終わりにしましょうか。あなたの可愛い娘を助けたかったら私の言う通りにしなさい」
ミランダは私の喉元にナイフを近付けてくる。
それを見たお父様とお兄様は、踏み出しかけた足を少しだけ後ろにずらした。
「ユージーン、このロープでエリックを縛りなさい」
ミランダがお兄様に命令すると、ミランダの側の空間からロープが出現したかと思うと、ヒュッとお兄様の足元に飛んで行った。
どうやら空間魔法で収納していたようだ。
お兄様はすぐには動こうとしない。
するとミランダは私の首にスッとナイフを滑らせた。
チクリとした痛みで顔をしかめると、「やめろ!」とお兄様が叫んだ。
どうやら少し首を切られて血が滲んだようだ。
お兄様は渋々ロープを拾うと、お父様を緩めに縛り上げた。
「フン! まぁいいわ。それじゃ、今度はこれよ」
ミランダが空間魔法で取り出したものは一振りの剣だった。
本当にそんな事が可能なのかしら?
私は半信半疑だったけれど、お父様には何か思い当たる事があるようだった。
「確かに婚約した当初は普通に私と接していたような気がする。王妃教育をするために王宮に出入りするようになってから、徐々に私に構うようになってきたが、それはお前がそう仕向けたのか?」
「その通りよ。私が世話係に任命されたから、ソフィアに暗示をかけてあなたに執着させたの。それと同時に一緒に侍女をしていたアイリスをあなたに近付けたら、面白いようにあなたはアイリスに夢中になっていったわ」
ミランダの言う通りならば、私はミランダのお陰で生まれたようなものだ。
けれど、お父様にとっては聞きたくもない話だったようだ。
「お前がソフィアを私に執着させたから、私はアイリスを好きになったと言いたいのか? 私とアイリスは真剣に愛し合っていたのに…」
お父様は随分とショックを受けているようだけれど、お兄様が生まれた以上王妃様と離婚なんて出来なかっただろうし、私の母をそのまま王宮には置いておけなかったと思う。
がっくりと打ちひしがれているお父様を見てミランダは高らかな笑い声をあげる。
「本当に見ていて楽しかったわ。ソフィアが怒り狂ったようにアイリスを追い出す姿も、それを知って酷く落ち込むあなたを見た時は溜飲が下がったわ」
身動き一つ出来ないまま、ミランダの話を聞くのは辛すぎる。
私がこうしてミランダに捕まっている以上、お父様もお兄様もミランダに手出しが出来ない。
全神経を指先に集中させてみると、ピクリとほんの僅かだけ指を動かす事が出来た。
この調子で何とかミランダの束縛から逃れたい。
お父様は悲痛な面持ちでミランダに尋ねた。
「お前はアイリスが妊娠している事を知っていて、ソフィアに王宮から追い出させたのか?」
ミランダは残忍そうな表情を浮かべてお父様を見つめる。
「残念ながら知らなかったわ。知ってたらもっとあなたが苦しむような方法を考えたのに…。例えばアイリスを流産させた挙げ句、死なせるとかね」
ミランダの答えにお父様とお兄様は驚愕で目を見開いている。
私も先程「私が生まれたのはミランダのお陰」なんて思った事を後悔した。
私の母の妊娠が発覚していたら、私はミランダによって母の胎内で殺されていたかもしれないのだ。
「なんて事を! お前はそれでも人の子か?」
お兄様が我慢出来ないとばかりに叫んでいる。
けれどミランダはそれを鼻で笑った。
「元はと言えば前国王が私の母を弄んで、王妃が追い出したからよ! 私のせいじゃないわ!」
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だけど、本当に前国王がミランダの母を襲ったのだろうか?
前王妃の言うようにミランダの母が前国王を誘惑したのではないだろうか?
既に三人共この世にいないので、今更どれが真実なのかは確認のしようがない。
ミランダの母が「前国王に乱暴された」と、ミランダに嘘を吹き込んだかもしれないのだ。
「そろそろおしゃべりは終わりにしましょうか。あなたの可愛い娘を助けたかったら私の言う通りにしなさい」
ミランダは私の喉元にナイフを近付けてくる。
それを見たお父様とお兄様は、踏み出しかけた足を少しだけ後ろにずらした。
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ミランダがお兄様に命令すると、ミランダの側の空間からロープが出現したかと思うと、ヒュッとお兄様の足元に飛んで行った。
どうやら空間魔法で収納していたようだ。
お兄様はすぐには動こうとしない。
するとミランダは私の首にスッとナイフを滑らせた。
チクリとした痛みで顔をしかめると、「やめろ!」とお兄様が叫んだ。
どうやら少し首を切られて血が滲んだようだ。
お兄様は渋々ロープを拾うと、お父様を緩めに縛り上げた。
「フン! まぁいいわ。それじゃ、今度はこれよ」
ミランダが空間魔法で取り出したものは一振りの剣だった。
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