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53 王宮の中
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「こちらがフェリシア様のお部屋になります」
アガサが扉を開けて私に部屋の中を見せてくれたが、ピンクを基調とした、いかにも女の子らしい部屋だった。
ちょっと幼すぎるような気がしないでもないが、私の為に整えてくれたのだから文句は言えない。
アガサに促されるまま部屋の中に足を踏み入れたが、この部屋にはベッドがない事に気付いた。
それにあちこちに扉が付いている。
「こちらが普段お過ごしになるお部屋です。お手洗いはこちらの扉になります。それからこちらはお風呂になっております」
そう言って開けられた扉向こうには広々とした脱衣場があり、更に浴室への扉が付いていた。
ワンルームで風呂トイレ付きと思えばいいのだろうけど、流石に広すぎるわね。
アガサは説明だけをすると扉を閉めて今度は部屋の反対側にある扉の方へと歩き出した。
私が後を付いていくと、私が追いついたのを見て次の扉を開けた。
「こちらが寝室になります」
部屋の中央には大きな天蓋付きのベットがデンと据えられている。
こちらは少し落ち着いた色でまとめられている。
ドレッサーが壁際に置いてあるが、この部屋にもまた別の扉が付いていた。
「こちらがお手洗いになります。そしてこちらは衣装部屋になりますが、フェリシア様が足を踏み入れられる事はほとんどないと思われます」
寝室にもトイレが付いているのね。
トイレのは度にいちいち部屋を行き来しなくて済むのは助かるわ。
それにしても衣装部屋ってどれだけのドレスが詰まっているのかしら。
恐る恐る中を覗いて見たけれど、ほんの数着だけだったので、ちょっとホッとした。
「ドレスと装飾品についてはフェリシア様の好みもありますので、最低限でと陛下からお達しがありました」
あら、意外とお父様って気が利くのね。
「なので、午後からは仕立て屋と宝石商が来る手筈になっております」
「そ、そうですか…」
私一人でドレスや装飾品なんて決められそうもないのにどうしたらいいのかしら?
だが、そんな悩みもアガサの次の言葉で解消された。
「アシェトン公爵家のパトリシア様をお呼びしておりますのでアドバイスをしていただけると思います」
良かった、叔母様が来てくださるのね。
そんな話をしながら最初の部屋に戻ると、中央のソファーセットにお茶の準備がされていた。
後ろから付いてきていた侍女達が準備してくれていたのだろう。
私にお茶を入れてくれると侍女達は部屋から下がって行った。
ソファーに座ってお茶を一口飲むと、ようやくひと息つけた。
改めて部屋の中をぐるりと見渡すと本棚が目に入った。
半分は本で埋まっているが、残りの半分の棚は空っぽのままだ。
「あちらの本棚にはこの国の歴史や王族についての本を収めております。後はフェリシア様のお好みの本が入れられるようになっております」
私の視線の先に気付いたアガサが説明をしてくれる。
「家具の配置につきましても、フェリシア様の好みに合わせるように仰せつかっております」
別にこのままでもいいかなと思うんだけれど、部屋で過ごすうちに配置を変えたくなるときが来るかもしれないわね。
お茶を飲み終えるとすかさずアガサが私に近寄ってきた。
「フェリシア様。よろしければ王宮の中をご案内いたしますが、いかがいたしましょうか?」
このまま座っていても仕方がないので私が頷いて立ち上がると、アガサが先導して私を部屋の外へといざなった。
「フェリシア様のお部屋の向かいは図書室になっております。そしてこちらが…」
アガサの後をついて行き王宮の中を案内されたが、一箇所だけ説明されない扉があった。
「ねぇ、アガサさん。あちらの扉は何があるの?」
アガサは一瞬顔を強張らせたが、すぐに何事もなかったように微笑んだ。
「あちらは王妃様がいらした別邸に通じる扉です。ですが王妃様が亡くなられたので今は封鎖されております」
別邸?
王妃様はこの王宮には住んでいなかったの?
思いがけない事実に私は「…そう」としか返す事が出来なかった。
自分の部屋に戻る際にチラリとその扉に目をやったが、何か不穏な空気を感じて私はすぐに目を反らした。
アガサが扉を開けて私に部屋の中を見せてくれたが、ピンクを基調とした、いかにも女の子らしい部屋だった。
ちょっと幼すぎるような気がしないでもないが、私の為に整えてくれたのだから文句は言えない。
アガサに促されるまま部屋の中に足を踏み入れたが、この部屋にはベッドがない事に気付いた。
それにあちこちに扉が付いている。
「こちらが普段お過ごしになるお部屋です。お手洗いはこちらの扉になります。それからこちらはお風呂になっております」
そう言って開けられた扉向こうには広々とした脱衣場があり、更に浴室への扉が付いていた。
ワンルームで風呂トイレ付きと思えばいいのだろうけど、流石に広すぎるわね。
アガサは説明だけをすると扉を閉めて今度は部屋の反対側にある扉の方へと歩き出した。
私が後を付いていくと、私が追いついたのを見て次の扉を開けた。
「こちらが寝室になります」
部屋の中央には大きな天蓋付きのベットがデンと据えられている。
こちらは少し落ち着いた色でまとめられている。
ドレッサーが壁際に置いてあるが、この部屋にもまた別の扉が付いていた。
「こちらがお手洗いになります。そしてこちらは衣装部屋になりますが、フェリシア様が足を踏み入れられる事はほとんどないと思われます」
寝室にもトイレが付いているのね。
トイレのは度にいちいち部屋を行き来しなくて済むのは助かるわ。
それにしても衣装部屋ってどれだけのドレスが詰まっているのかしら。
恐る恐る中を覗いて見たけれど、ほんの数着だけだったので、ちょっとホッとした。
「ドレスと装飾品についてはフェリシア様の好みもありますので、最低限でと陛下からお達しがありました」
あら、意外とお父様って気が利くのね。
「なので、午後からは仕立て屋と宝石商が来る手筈になっております」
「そ、そうですか…」
私一人でドレスや装飾品なんて決められそうもないのにどうしたらいいのかしら?
だが、そんな悩みもアガサの次の言葉で解消された。
「アシェトン公爵家のパトリシア様をお呼びしておりますのでアドバイスをしていただけると思います」
良かった、叔母様が来てくださるのね。
そんな話をしながら最初の部屋に戻ると、中央のソファーセットにお茶の準備がされていた。
後ろから付いてきていた侍女達が準備してくれていたのだろう。
私にお茶を入れてくれると侍女達は部屋から下がって行った。
ソファーに座ってお茶を一口飲むと、ようやくひと息つけた。
改めて部屋の中をぐるりと見渡すと本棚が目に入った。
半分は本で埋まっているが、残りの半分の棚は空っぽのままだ。
「あちらの本棚にはこの国の歴史や王族についての本を収めております。後はフェリシア様のお好みの本が入れられるようになっております」
私の視線の先に気付いたアガサが説明をしてくれる。
「家具の配置につきましても、フェリシア様の好みに合わせるように仰せつかっております」
別にこのままでもいいかなと思うんだけれど、部屋で過ごすうちに配置を変えたくなるときが来るかもしれないわね。
お茶を飲み終えるとすかさずアガサが私に近寄ってきた。
「フェリシア様。よろしければ王宮の中をご案内いたしますが、いかがいたしましょうか?」
このまま座っていても仕方がないので私が頷いて立ち上がると、アガサが先導して私を部屋の外へといざなった。
「フェリシア様のお部屋の向かいは図書室になっております。そしてこちらが…」
アガサの後をついて行き王宮の中を案内されたが、一箇所だけ説明されない扉があった。
「ねぇ、アガサさん。あちらの扉は何があるの?」
アガサは一瞬顔を強張らせたが、すぐに何事もなかったように微笑んだ。
「あちらは王妃様がいらした別邸に通じる扉です。ですが王妃様が亡くなられたので今は封鎖されております」
別邸?
王妃様はこの王宮には住んでいなかったの?
思いがけない事実に私は「…そう」としか返す事が出来なかった。
自分の部屋に戻る際にチラリとその扉に目をやったが、何か不穏な空気を感じて私はすぐに目を反らした。
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