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51 王宮へ
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私が立ち上がってユージーンに手を取られて歩きだすと、ハミルトンが慌てて近寄ってきた。
「僕も一緒に行こう。さあ、フェリシア」
手を差し出してくるハミルトンと私の間にずいとユージーンが割り込んでくる。
「まだ正式な婚約者でもない君がフェリシアの手を取るのは流石にいただけないな。悪いが遠慮してもらうよ」
ここにいるのは身内だけだからそんなに問題にはならないと思うんだけど、頑として譲らないユージーンにハミルトンが渋々折れた。
申し訳なくってチラリとハミルトンを見やるとユージーンがさっさと私の手を引いて歩き出す。
「気にする事はないよ。正式に婚約すればいいだけの話だからね。もっとも父上が許すかどうかは疑問だけどね」
恐ろしい事をサラリと言ってくれるわね。
国王、もといお父様の私の母親への執着を見れば、私に対しても同じように溺愛されそうで怖いわ。
お義母様、いえもうパトリシア様か叔母様と呼ばなくては駄目ね。
叔母様とお祖父様も私達を見送る為に、後から着いて来ている。
ハミルトンは私と手を繋がないまでも、すぐ隣を歩いている。
時折、ユージーンと目を合わせて火花を散らしているけど、間に挟まれている私の事を少しは考えてほしい。
玄関の扉を出て、そこに止まっている馬車を見て私は固まってしまった。
昨日、乗った馬車とは比べ物にならないくらいの豪華さだ。
「…何これ…」
真っ白な車体にあちこち金が散りばめられている。
「父上が用意させたらしいね。来る時も皆が立ち止まって見るから恥ずかしくて仕方がなかったよ。帰りはフェリシアが乗っているから余計に人目を惹きそうだな」
余計にって私にそんな効果があるわけないと思うんだけど、どうして誰も否定しないのかしら。
「お祖父様、短い間でしたけれど、お世話になりました。どうかお身体を大事にしてくださいね」
馬車に乗り込む前に私はアシェトン家の人々に挨拶をした。
「フェリシアもな。もっともエリックとユージーンが過保護に構いそうだけどな。そのうち王宮に顔を出すよ」
私はコクリと頷くと叔母様に向き合った。
「叔母様、お世話になりました。もっと叔母様とお話をしたかったです」
「私もよ。王宮には話相手になるような女性はいないから、そのうち遊びに行くわね」
「はい、お待ちしております」
最後はハミルトンだ。
「ハミルトン様、お世話になりました。またお会い出来る日を楽しみにしてます」
ハミルトンの目が赤いように見えるのは気の所為かしら。
そのせいで私も鼻の奥がツンとしてきたわ。
ハミルトンは一度、グッと唇を噛み締めた後で、フッと息を吐き出す。
「フェリシア、きっとすぐに会いに行くからね。待ってておくれ」
一歩私に近付きかけたハミルトンの前にまたしてもユージーンが立ち塞がる。
「お前! 何で邪魔するんだよ!」
「可愛い妹を狼の手から守るのは当然だろう。まったく油断も隙もない」
「何だと、この野郎!」
また始まったわ。
お陰で涙が何処かへ引っ込んじゃったから、助かったけれどね。
「うるさい! いい加減にしないと水をかけるぞ!」
お祖父様の鶴の一声で、二人はピタッと大人しくなった。
私はお祖父様達の後ろに並ぶ使用人達にも声をかける。
「皆さん、短い間でしたがお世話になりました」
使用人の皆が私にお辞儀をする中、私はユージーンに手を取られて馬車に乗り込む。
外装だけでなく、中身も豪華絢爛だわね。
これってもしかして国王陛下用の馬車じゃないのかしら?
座席の座り心地も昨日の馬車とは比較にならないくらいにフカフカしている。
この馬車ならば長時間乗っても疲れないかもね。
私とユージーンが向かい合って座ったのを確認すると、従者が扉を閉めてゆっくりと馬車が走り出した。
私が窓から皆に手を振ると、ハミルトンは馬車に合わせて歩き出した。
「フェリシア、絶対に会いに行くからね」
直に馬車は速度を上げてハミルトンの姿が見えなくなると、私はゆっくりと座席にもたれかかった。
「僕も一緒に行こう。さあ、フェリシア」
手を差し出してくるハミルトンと私の間にずいとユージーンが割り込んでくる。
「まだ正式な婚約者でもない君がフェリシアの手を取るのは流石にいただけないな。悪いが遠慮してもらうよ」
ここにいるのは身内だけだからそんなに問題にはならないと思うんだけど、頑として譲らないユージーンにハミルトンが渋々折れた。
申し訳なくってチラリとハミルトンを見やるとユージーンがさっさと私の手を引いて歩き出す。
「気にする事はないよ。正式に婚約すればいいだけの話だからね。もっとも父上が許すかどうかは疑問だけどね」
恐ろしい事をサラリと言ってくれるわね。
国王、もといお父様の私の母親への執着を見れば、私に対しても同じように溺愛されそうで怖いわ。
お義母様、いえもうパトリシア様か叔母様と呼ばなくては駄目ね。
叔母様とお祖父様も私達を見送る為に、後から着いて来ている。
ハミルトンは私と手を繋がないまでも、すぐ隣を歩いている。
時折、ユージーンと目を合わせて火花を散らしているけど、間に挟まれている私の事を少しは考えてほしい。
玄関の扉を出て、そこに止まっている馬車を見て私は固まってしまった。
昨日、乗った馬車とは比べ物にならないくらいの豪華さだ。
「…何これ…」
真っ白な車体にあちこち金が散りばめられている。
「父上が用意させたらしいね。来る時も皆が立ち止まって見るから恥ずかしくて仕方がなかったよ。帰りはフェリシアが乗っているから余計に人目を惹きそうだな」
余計にって私にそんな効果があるわけないと思うんだけど、どうして誰も否定しないのかしら。
「お祖父様、短い間でしたけれど、お世話になりました。どうかお身体を大事にしてくださいね」
馬車に乗り込む前に私はアシェトン家の人々に挨拶をした。
「フェリシアもな。もっともエリックとユージーンが過保護に構いそうだけどな。そのうち王宮に顔を出すよ」
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「叔母様、お世話になりました。もっと叔母様とお話をしたかったです」
「私もよ。王宮には話相手になるような女性はいないから、そのうち遊びに行くわね」
「はい、お待ちしております」
最後はハミルトンだ。
「ハミルトン様、お世話になりました。またお会い出来る日を楽しみにしてます」
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ハミルトンは一度、グッと唇を噛み締めた後で、フッと息を吐き出す。
「フェリシア、きっとすぐに会いに行くからね。待ってておくれ」
一歩私に近付きかけたハミルトンの前にまたしてもユージーンが立ち塞がる。
「お前! 何で邪魔するんだよ!」
「可愛い妹を狼の手から守るのは当然だろう。まったく油断も隙もない」
「何だと、この野郎!」
また始まったわ。
お陰で涙が何処かへ引っ込んじゃったから、助かったけれどね。
「うるさい! いい加減にしないと水をかけるぞ!」
お祖父様の鶴の一声で、二人はピタッと大人しくなった。
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「皆さん、短い間でしたがお世話になりました」
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私とユージーンが向かい合って座ったのを確認すると、従者が扉を閉めてゆっくりと馬車が走り出した。
私が窓から皆に手を振ると、ハミルトンは馬車に合わせて歩き出した。
「フェリシア、絶対に会いに行くからね」
直に馬車は速度を上げてハミルトンの姿が見えなくなると、私はゆっくりと座席にもたれかかった。
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