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40 登城
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馬車が走り出すと、隣に座っているハミルトンとの距離が近いような気がして、少しだけ座り直すふりをして距離を取る。
すると向かいに座るユージーンがフッと目を細める。
足と腕を組んで悠然と座るその姿は、王太子と呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出している。
「フェリシアの兄としては、僕以外の男の隣に座らせたくはないんだがな」
ほんの少し前に顔を合わせたばかりなのにすぐにそんな台詞が出てくるなんて、本気で思っているのかしら。
「フェリシアに会ったばかりなのにもう兄貴ヅラか? お前がそんなに妹思いだったとは知らなかったよ」
「そう言うお前こそ、フェリシアのボディガードぶっちゃってるじゃないか。そんなに嫉妬深いとフェリシアに嫌われるぞ」
ハミルトンとユージーンの間で火花が散っているように見えるのは気の所為じゃないみたい。
二人共幼馴染で仲が良いのかと思っていたけれど、実際は違うのかしら?
下手に口を挟むと余計な諍いを生みそうなので、私は黙って外の景色を眺めた。
前方に大きな門が近付いて来たけれど、馬車は止まることなく門を通り過ぎた。
ユージーンが乗って出ていったのだから、戻って来るのはわかりきっているものね。
公爵家もそうだったけれど、王宮も門をくぐってから建物に到着するまでが長いわね。
ようやく馬車が停まって外から扉が開けられると、ユージーンが真っ先に馬車から降りた。
そして私に向かって「さあ、どうぞ」と手を差し出してくる。
「おい、ユージーン!」
ハミルトンが怒鳴りながら私の隣から立ち上がると馬車から降りた。
そしてユージーンの反対側から私に手を差し出してくる。
…これはやっぱりハミルトンの手を取るべきなのかしら…
そう思ってハミルトンに手を伸ばそうとしたらユージーンがニコリと微笑んだ。
「まさか僕に恥をかかせたりはしないよね?」
ハッとして周りを見渡すと王宮の使用人がズラリと並んでいる。
ここでユージーンの手を取らなかったらどうなるのかしら?
流石に言い触らされたりはしないかもしれないけれど、あまり良い印象は与えないかもしれないわ。
かと言ってハミルトンの手を取らないのも何だか申し訳ないしね。
仕方なく私は両手をそれぞれに差し出す事にした。
これはこれで問題があるかもしれないけれど、とりあえずユージーンに恥をかかせる事にはならないと思うわ。
ユージーンは満足そうに頷いたけれど、ハミルトンはムスッと不満気な顔をしている。
そのまま二人に手を引かれて私は王宮の中へと足を踏み入れた。
公爵家で多少は慣れたと思っていたけれど、この王宮の豪華さには度肝を抜かれるわ。
こんな場所を私が歩いてもいいのかしら?
すれ違う人はユージーンの姿を見ると立ち止まり、頭を下げて通り過ぎるのを待っている。
中には明らかに貴族とわかる人達もいたが、誰も私の事を見咎めたりしない。
それほど歩く事もなく、ユージーンはとある扉の前で足を止めた。
扉の前には護衛騎士らしき人が二人立っている。
ユージーンとハミルトンに手を繋がれている私の姿を見ても、眉一つ動かさない。
「ユージーン様がお戻りになりました」
一人の護衛騎士が声をかけると、カチャリと扉が開いた。
ユージーンに促されるまま部屋の中に足を踏み入れると、奥の机で書き物をしていた男性が立ち上がった。
「ユージーン、やっと戻ったか。勝手に飛び出しおって。おまけにハミルトンまでが一緒とはどういう事だ?」
そう言いながら男性はどんどんと私に近付いて来る。
…もしかしてこの人が国王陛下?
確かにどことなく私に似ているような気がしないでもないわね。
だけど、もっと熱のこもった歓迎をされるかと思っていたのだけど、案外あっさりしているわね。
国王陛下は私のすぐ近くまで来ると、私を見下ろしながら口を開いた。
「確かに私に似ているな。だが、本当に私とアイリスの娘なのか? フェリシアと言ったな。すまないが確かめさせてもらうぞ」
一体どうやって確かめるのかしら?
すると向かいに座るユージーンがフッと目を細める。
足と腕を組んで悠然と座るその姿は、王太子と呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出している。
「フェリシアの兄としては、僕以外の男の隣に座らせたくはないんだがな」
ほんの少し前に顔を合わせたばかりなのにすぐにそんな台詞が出てくるなんて、本気で思っているのかしら。
「フェリシアに会ったばかりなのにもう兄貴ヅラか? お前がそんなに妹思いだったとは知らなかったよ」
「そう言うお前こそ、フェリシアのボディガードぶっちゃってるじゃないか。そんなに嫉妬深いとフェリシアに嫌われるぞ」
ハミルトンとユージーンの間で火花が散っているように見えるのは気の所為じゃないみたい。
二人共幼馴染で仲が良いのかと思っていたけれど、実際は違うのかしら?
下手に口を挟むと余計な諍いを生みそうなので、私は黙って外の景色を眺めた。
前方に大きな門が近付いて来たけれど、馬車は止まることなく門を通り過ぎた。
ユージーンが乗って出ていったのだから、戻って来るのはわかりきっているものね。
公爵家もそうだったけれど、王宮も門をくぐってから建物に到着するまでが長いわね。
ようやく馬車が停まって外から扉が開けられると、ユージーンが真っ先に馬車から降りた。
そして私に向かって「さあ、どうぞ」と手を差し出してくる。
「おい、ユージーン!」
ハミルトンが怒鳴りながら私の隣から立ち上がると馬車から降りた。
そしてユージーンの反対側から私に手を差し出してくる。
…これはやっぱりハミルトンの手を取るべきなのかしら…
そう思ってハミルトンに手を伸ばそうとしたらユージーンがニコリと微笑んだ。
「まさか僕に恥をかかせたりはしないよね?」
ハッとして周りを見渡すと王宮の使用人がズラリと並んでいる。
ここでユージーンの手を取らなかったらどうなるのかしら?
流石に言い触らされたりはしないかもしれないけれど、あまり良い印象は与えないかもしれないわ。
かと言ってハミルトンの手を取らないのも何だか申し訳ないしね。
仕方なく私は両手をそれぞれに差し出す事にした。
これはこれで問題があるかもしれないけれど、とりあえずユージーンに恥をかかせる事にはならないと思うわ。
ユージーンは満足そうに頷いたけれど、ハミルトンはムスッと不満気な顔をしている。
そのまま二人に手を引かれて私は王宮の中へと足を踏み入れた。
公爵家で多少は慣れたと思っていたけれど、この王宮の豪華さには度肝を抜かれるわ。
こんな場所を私が歩いてもいいのかしら?
すれ違う人はユージーンの姿を見ると立ち止まり、頭を下げて通り過ぎるのを待っている。
中には明らかに貴族とわかる人達もいたが、誰も私の事を見咎めたりしない。
それほど歩く事もなく、ユージーンはとある扉の前で足を止めた。
扉の前には護衛騎士らしき人が二人立っている。
ユージーンとハミルトンに手を繋がれている私の姿を見ても、眉一つ動かさない。
「ユージーン様がお戻りになりました」
一人の護衛騎士が声をかけると、カチャリと扉が開いた。
ユージーンに促されるまま部屋の中に足を踏み入れると、奥の机で書き物をしていた男性が立ち上がった。
「ユージーン、やっと戻ったか。勝手に飛び出しおって。おまけにハミルトンまでが一緒とはどういう事だ?」
そう言いながら男性はどんどんと私に近付いて来る。
…もしかしてこの人が国王陛下?
確かにどことなく私に似ているような気がしないでもないわね。
だけど、もっと熱のこもった歓迎をされるかと思っていたのだけど、案外あっさりしているわね。
国王陛下は私のすぐ近くまで来ると、私を見下ろしながら口を開いた。
「確かに私に似ているな。だが、本当に私とアイリスの娘なのか? フェリシアと言ったな。すまないが確かめさせてもらうぞ」
一体どうやって確かめるのかしら?
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