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22 違和感(ハミルトン視点)
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車椅子の試作品を確認すると、僕は応接室を出て自室に戻った。
だが、先程のジェシカのニコラスへの態度を注意しておいた方がいいだろうと思い、ジェシカの部屋を訪ねる事にした。
(別にジェシカに会いたいわけじゃないぞ。こういう事は忘れないうちに伝える事が大事だからな)
僕は部屋を出る前に鏡を見て自分の身だしなみを整えると、意気揚々と廊下に出てジェシカの部屋を目指した。
階段を降りて玄関ホールを横切り、ジェシカの部屋に向かう。
今はまだジェシカの部屋は客間の仮住まいだ。
早く二階の親族の居住区の方にジェシカの部屋を移してしまいたい。
僕の隣の部屋でもいいな。
いっそのこと、部屋の中からお互いの部屋を行き来出来るようにしてもいいだろう。
そんな事を考えていると、ジェシカの部屋からアンナが出てくるのが見えた。
アンナに声をかけようとして、何だか様子がおかしい事に気付いて立ち止まる。
アンナは僕がいる事に気付かないようで、思い詰めたような顔をしている。
(ジェシカに何かあったのか?)
意を決して声をかけようとしたその時、アンナの呟きがはっきり聞こえた。
「本当にジェシカ様はダグラス様とケイティの娘なのかしら…」
「今、何と言った?」
思わず冷えたような声音でアンナに話しかけた。
アンナはピクリと身体を震わせて振り返り、そこで初めて僕がいる事を認識したようだ。
「申し訳ございません、大変失礼な事を申しました」
アンナは慌てて頭を下げて、この場から逃げようとしたが、僕はアンナの手を掴んで逃さなかった。
今の言葉が本当ならば、ジェシカと僕は血が繋がっていない事になる。
そうであれば僕とジェシカが付き合うのに何の障害もないという事だ。
だが、今はアンナの話を聞かなければいけないだろう。
アンナは僕が手を掴んだ事でびっくりして、少し怯えたような顔をした。
僕は慌てて手を離すとアンナを安心させるように微笑んでみせる。
「すまない、怖がらせてしまったね。アンナがどうしてそう思ったのか聞かせてもらえるかな?」
何か明確な証拠でもあるのかと思っていたが、話を聞く限り単なる思い込みのような気がしてきた。
ケイティに似ていないとか、ケイティと仕草が違うとか、まるで話にならない。
「アンナ、君の言い分はわかった。だが、ベイル先生が捜して来られたんだ。間違いのはずはない。この事は誰にも話さないように、いいね。それでなくても君はケイティの駆け落ちに加担していたと思われているんだからね。次はないよ」
少し脅したような口調になってしまったが、それも致し方ないだろう。
実際にアンナはケイティと僕の父親の駆け落ちに加担したと言われて解雇寸前にまでなったと聞いている。
これでジェシカの話を誰かにしようものなら即刻解雇してやる。
この公爵家をクビにされたとなったら、もう何処の貴族にも雇っては貰えないだろう。
アンナはコクリと頷くと、そそくさと僕の前から姿を消した。
僕はジェシカの部屋の扉を一瞥した後、踵を返して僕の部屋へと戻った。
アンナにはああ言ったが、ベイル先生が間違いを犯さないとも限らない。
何しろベイル先生も結構なお年寄りで、時々人の話を聞かずに一人で納得している時があるからだ。
部屋に戻ると僕は侍従に言い付けて下町に遊びに行く時に使う馬車を準備させた。
その間に僕も目立たないような平民の衣装に着替える。
これは時々、友人達と遊びに行くために準備している物だ。
母上にはいい顔をされなかったが、あまりがんじがらめにするのも良くないと考えたらしく、多少は目溢しをしてもらえた。
準備が整うと僕は「夕食までには戻る」と言って、公爵邸を後にした。
先ずはジェシカが居たという孤児院を訪ねてみよう。
だが、先程のジェシカのニコラスへの態度を注意しておいた方がいいだろうと思い、ジェシカの部屋を訪ねる事にした。
(別にジェシカに会いたいわけじゃないぞ。こういう事は忘れないうちに伝える事が大事だからな)
僕は部屋を出る前に鏡を見て自分の身だしなみを整えると、意気揚々と廊下に出てジェシカの部屋を目指した。
階段を降りて玄関ホールを横切り、ジェシカの部屋に向かう。
今はまだジェシカの部屋は客間の仮住まいだ。
早く二階の親族の居住区の方にジェシカの部屋を移してしまいたい。
僕の隣の部屋でもいいな。
いっそのこと、部屋の中からお互いの部屋を行き来出来るようにしてもいいだろう。
そんな事を考えていると、ジェシカの部屋からアンナが出てくるのが見えた。
アンナに声をかけようとして、何だか様子がおかしい事に気付いて立ち止まる。
アンナは僕がいる事に気付かないようで、思い詰めたような顔をしている。
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意を決して声をかけようとしたその時、アンナの呟きがはっきり聞こえた。
「本当にジェシカ様はダグラス様とケイティの娘なのかしら…」
「今、何と言った?」
思わず冷えたような声音でアンナに話しかけた。
アンナはピクリと身体を震わせて振り返り、そこで初めて僕がいる事を認識したようだ。
「申し訳ございません、大変失礼な事を申しました」
アンナは慌てて頭を下げて、この場から逃げようとしたが、僕はアンナの手を掴んで逃さなかった。
今の言葉が本当ならば、ジェシカと僕は血が繋がっていない事になる。
そうであれば僕とジェシカが付き合うのに何の障害もないという事だ。
だが、今はアンナの話を聞かなければいけないだろう。
アンナは僕が手を掴んだ事でびっくりして、少し怯えたような顔をした。
僕は慌てて手を離すとアンナを安心させるように微笑んでみせる。
「すまない、怖がらせてしまったね。アンナがどうしてそう思ったのか聞かせてもらえるかな?」
何か明確な証拠でもあるのかと思っていたが、話を聞く限り単なる思い込みのような気がしてきた。
ケイティに似ていないとか、ケイティと仕草が違うとか、まるで話にならない。
「アンナ、君の言い分はわかった。だが、ベイル先生が捜して来られたんだ。間違いのはずはない。この事は誰にも話さないように、いいね。それでなくても君はケイティの駆け落ちに加担していたと思われているんだからね。次はないよ」
少し脅したような口調になってしまったが、それも致し方ないだろう。
実際にアンナはケイティと僕の父親の駆け落ちに加担したと言われて解雇寸前にまでなったと聞いている。
これでジェシカの話を誰かにしようものなら即刻解雇してやる。
この公爵家をクビにされたとなったら、もう何処の貴族にも雇っては貰えないだろう。
アンナはコクリと頷くと、そそくさと僕の前から姿を消した。
僕はジェシカの部屋の扉を一瞥した後、踵を返して僕の部屋へと戻った。
アンナにはああ言ったが、ベイル先生が間違いを犯さないとも限らない。
何しろベイル先生も結構なお年寄りで、時々人の話を聞かずに一人で納得している時があるからだ。
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母上にはいい顔をされなかったが、あまりがんじがらめにするのも良くないと考えたらしく、多少は目溢しをしてもらえた。
準備が整うと僕は「夕食までには戻る」と言って、公爵邸を後にした。
先ずはジェシカが居たという孤児院を訪ねてみよう。
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