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19 試作品
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昼食を終えて食後のお茶を飲んでいると、モーガンが私に近寄って来た。
「ジェシカ様。先程ポロック商会から連絡が入りまして、本日の午後に試作品を持って来るそうです」
一瞬、言葉の意味がわからずに目をパチクリとさせてしまった。
試作品?
話し合いをしたのは昨日なのにもう試作品が出来上がったの?
仕事が早いにしても早すぎるでしょう。
そう心の中でツッコミを入れながら、私はモーガンにニコリと微笑み返す。
「そうなのね、わかりました」
モーガンが一礼して食堂を出ていくと、パトリシアが興味津々で話しかけてくる。
「ポロック商会に何か商品を発注したらしいわね。私は残念ながら仕事で立ち会えないけれど、後で見せていただくわ」
やはりパトリシアの耳に車椅子の事は入っていたのね。
まあ、お祖父様の代わりにこの家の采配を揮っているのだから当然といえば当然ね。
「はい、ぜひお義母様にも見ていただきたいです」
「それでは、ポロック商会との話には僕が立ち会おう」
そこで口を挟んで来たのはやはりハミルトンだった。
多分そうなるだろうなと思ってはいたけれど、実際に口に出されると余計に落胆するわ。
だけど私はそんな態度はおくびにも出さずにハミルトンに微笑んでみせる。
「まあ、お兄様が一緒にいてくださるのですね。とても心強いですわ」
頼むから余計な口は挟まないでね、と心の中で呟いてみるけれど、どうなることやら…。
ポロック商会が来るまで一旦自室に戻ったが、それほど待つ事もなく、昨日と同じように応接室へと通された。
「ジェシカ様、お待たせいたしました。試作品が出来上がりましたので、目を通していただけますか?」
応接室に入ると昨日と同じく商会長のレイモンドと開発部のニコラスが立ち上がって私に挨拶をしてくる。
私は一旦ソファーに腰掛けようとしたが、そこには既にハミルトンが座っていた。
…何で先にそこに座っているの?
だが、ここで目くじらを立てるわけにもいかないので、私はニコリと微笑むとハミルトンの隣に腰を下ろした。
勿論、あまり近寄らないように、間はきっちり空けておいたわ。
私が腰を下ろすとニコラスが私の側に車椅子を押して持って来た。
わあ、凄い!
前世で見た車椅子とほとんど遜色がないわ。
「座ってみても良いかしら?」
ニコラスに尋ねると「どうぞ」と頷かれて、私は車椅子に座ってみる。
うん、いい感じ。
ちゃんと自分で車椅子の操作も出来るし、後ろから押してもらえるようにハンドルも付いている。
ニコラスと細かい部分についてあれこれ話をしていると、ふと視線を感じて顔を上げた。
そこには鋭い視線を私に向けるハミルトンの顔が見えた。
…どうしてそんなに私を睨みつけているのかしら?
きっと車椅子なんて理由のわからない物を作ろうとしている私の事が気に入らないのね。
公爵家に利益をもたらそうとしているのだから、そこは目を瞑ってほしいわね。
ハミルトンの視線に気付かないふりをしてニコラスと細々とした打ち合わせを続ける。
「ジェシカ様、ありがとうございます。ご指摘された部分を改良してみますね。それとドアチェーンの方ですが、試作品を作って商会の従業員に使ってもらったのですが、なかなか好評でした。なので正式に契約を交わしたいと思います」
契約、と言われて私はどうしていいのか困ってしまい、思わずハミルトンに目をやった。
「契約か。それに関してはモーガンに立ち会ってもらった方がいいだろう」
モーガンはお祖父様やお義母様の仕事の手伝いもしているので、契約書の確認をしてもらうのにうってつけらしい。
これだけ大きな商会だから、騙したりはして来ないとは思うけれど、何事も確認は大事よね。
それにしても「モーガンに」とか言いながらハミルトンまで口を出して来るのはどういう事なのかしら?
何とか契約を終えた頃にはどっと疲れてしまったわ。
部屋に戻ったら夕食までゴロゴロして過ごしましょう。
「ジェシカ様。先程ポロック商会から連絡が入りまして、本日の午後に試作品を持って来るそうです」
一瞬、言葉の意味がわからずに目をパチクリとさせてしまった。
試作品?
話し合いをしたのは昨日なのにもう試作品が出来上がったの?
仕事が早いにしても早すぎるでしょう。
そう心の中でツッコミを入れながら、私はモーガンにニコリと微笑み返す。
「そうなのね、わかりました」
モーガンが一礼して食堂を出ていくと、パトリシアが興味津々で話しかけてくる。
「ポロック商会に何か商品を発注したらしいわね。私は残念ながら仕事で立ち会えないけれど、後で見せていただくわ」
やはりパトリシアの耳に車椅子の事は入っていたのね。
まあ、お祖父様の代わりにこの家の采配を揮っているのだから当然といえば当然ね。
「はい、ぜひお義母様にも見ていただきたいです」
「それでは、ポロック商会との話には僕が立ち会おう」
そこで口を挟んで来たのはやはりハミルトンだった。
多分そうなるだろうなと思ってはいたけれど、実際に口に出されると余計に落胆するわ。
だけど私はそんな態度はおくびにも出さずにハミルトンに微笑んでみせる。
「まあ、お兄様が一緒にいてくださるのですね。とても心強いですわ」
頼むから余計な口は挟まないでね、と心の中で呟いてみるけれど、どうなることやら…。
ポロック商会が来るまで一旦自室に戻ったが、それほど待つ事もなく、昨日と同じように応接室へと通された。
「ジェシカ様、お待たせいたしました。試作品が出来上がりましたので、目を通していただけますか?」
応接室に入ると昨日と同じく商会長のレイモンドと開発部のニコラスが立ち上がって私に挨拶をしてくる。
私は一旦ソファーに腰掛けようとしたが、そこには既にハミルトンが座っていた。
…何で先にそこに座っているの?
だが、ここで目くじらを立てるわけにもいかないので、私はニコリと微笑むとハミルトンの隣に腰を下ろした。
勿論、あまり近寄らないように、間はきっちり空けておいたわ。
私が腰を下ろすとニコラスが私の側に車椅子を押して持って来た。
わあ、凄い!
前世で見た車椅子とほとんど遜色がないわ。
「座ってみても良いかしら?」
ニコラスに尋ねると「どうぞ」と頷かれて、私は車椅子に座ってみる。
うん、いい感じ。
ちゃんと自分で車椅子の操作も出来るし、後ろから押してもらえるようにハンドルも付いている。
ニコラスと細かい部分についてあれこれ話をしていると、ふと視線を感じて顔を上げた。
そこには鋭い視線を私に向けるハミルトンの顔が見えた。
…どうしてそんなに私を睨みつけているのかしら?
きっと車椅子なんて理由のわからない物を作ろうとしている私の事が気に入らないのね。
公爵家に利益をもたらそうとしているのだから、そこは目を瞑ってほしいわね。
ハミルトンの視線に気付かないふりをしてニコラスと細々とした打ち合わせを続ける。
「ジェシカ様、ありがとうございます。ご指摘された部分を改良してみますね。それとドアチェーンの方ですが、試作品を作って商会の従業員に使ってもらったのですが、なかなか好評でした。なので正式に契約を交わしたいと思います」
契約、と言われて私はどうしていいのか困ってしまい、思わずハミルトンに目をやった。
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これだけ大きな商会だから、騙したりはして来ないとは思うけれど、何事も確認は大事よね。
それにしても「モーガンに」とか言いながらハミルトンまで口を出して来るのはどういう事なのかしら?
何とか契約を終えた頃にはどっと疲れてしまったわ。
部屋に戻ったら夕食までゴロゴロして過ごしましょう。
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