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4 到着
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私は馬車の窓から通り過ぎる町並みをしばらく眺めた後、向かい側に座るベイルさんに尋ねてみた。
「ところでお祖父様のお家はどちらにあるんですか?」
ベイルさんは人当たりの良さそうな笑顔を私に向けて話し出した。
「アシェトン家のお屋敷は王都の中心地にあります」
アシェトン家?
オーデンがジェシカの名字じゃないの?
「アシェトン家ですか? お祖父様の名字はオーデンじゃないんですか?」
私の質問にベイルさんは苦々し気な顔を見せる。
「オーデンはダグラス様の家名ではありません。ジェシカ様もこれからはアシェトンの家名をお名乗りください」
それきりベイルさんは口を閉ざしてしまった。
どうやらジェシカの両親は母親の方の名字を名乗っていたようだ。
それが追っ手を逃れるためか、ただ単に家を捨てたためなのかは私には判断が出来ない。
ふと馬車の外に目をやると、先程までとは景色が一変していた。
いかにも高級そうな店が立ち並び、街中を歩く人達の服装も見るからに高価な物だとわかる。
私はハッとして自分の着ている服を見下ろした。
こざっぱりとした装いのワンピースではあるが、いかにも庶民が着ている物だとすぐにわかる。
こんな格好で今外に出されたら、とてもじゃないが歩けるものではない。
お金持ちとしか聞いていないから、ただ単に商売をやっていてお金があるのだろうと思っていたが、どうもそうではないようだ。
馬車は更に進んでいき、大きなお屋敷が立ち並ぶ通りへと入っていく。
…どうしよう…
だけど、今ここで馬車を降りるわけにはいかないのは明白だ。
不安な心を抑えつつ何気ないふりを装っているうちに馬車はどこかの門を抜けた。
だが、門を抜けたのに一向に馬車が停まる気配がない。
…まさか、王都の外に出たのかしら?
一瞬そう思ったが、先程ベイルさんが『王都の中心地』だと言っていたのを思い出した。
と言う事は、門から屋敷までの距離が相当あると言う事だ。
一体ジェシカのお祖父様はどれだけのお金持ちなんだろう。
やがて馬車の窓から建物が見えて来たが、その大きさに度肝を抜かれた。
…まるでお城みたい…
その建物が間近に迫ってきた頃、ようやく馬車が停まった。
馬車の扉が開けられ、見知らぬ壮年の男性が立っていた。
「ジェシカ様ですね。お待ちしておりました。足元に気を付けてお降りください」
そう言って私に手を差し出してくる。
ベイルさんを差し置いて私が先に降りてもいいのだろうか?
そう思ってベイルさんを見やると軽く頷いてくれたので、私はその男性の手を借りて馬車から降りた。
そこで私は衝撃の場面を目にした。
ズラリとメイド服や侍従服を着た女性と男性が、玄関に向かって並んでいるのだ。
「「「お帰りなさいませ、ジェシカ様」」」
一斉に頭を下げられて、思わず固まってしまったのは当然だと思う。
ドレス姿ならまだしも、こんな地味な服を着た女が一斉にかしずかれるなんてありえないわよ。
私は振り返って馬車から降りてきたベイルさんに助けを求めた。
「べ、ベイルさん、これは一体…。ここは何処なんですか?」
ベイルさんはニコリと笑ってサラリと答えてくれた。
「こちらはアシェトン公爵家のお屋敷です。あなたのお祖父様は現公爵様です」
こ、公爵家?
公爵って言ったら王家の次に偉い貴族よね。
それがジェシカのお祖父様?
だったらジェシカは公爵家のお嬢様だったって事?
そんな偉いお家に生まれたんならジェシカのお父さんはわざわざ駆け落ちしなくても、大抵のわがままは許されそうなのに、どうして公爵家を捨てて駆け落ちなんてしたのかしら?
疑問に思いながらも私は壮年の男性に促されるまま、玄関に向かって歩き出した。
玄関の扉が開かれて中に入ると、目もくらむような豪華な内装が目に飛び込んでくる。
キラキラと光るシャンデリアや磨き上げられた家具や調度品が並んでいる。
数歩進んだところで視線を感じて上を見上げると、階段の上から一人の若い男性がこちらを見下ろしていた。
その視線が突き刺さるように痛い。
…あれは憎悪の視線だわ…
彼はどうしてあんな目で私を睨むのかしら?
「ところでお祖父様のお家はどちらにあるんですか?」
ベイルさんは人当たりの良さそうな笑顔を私に向けて話し出した。
「アシェトン家のお屋敷は王都の中心地にあります」
アシェトン家?
オーデンがジェシカの名字じゃないの?
「アシェトン家ですか? お祖父様の名字はオーデンじゃないんですか?」
私の質問にベイルさんは苦々し気な顔を見せる。
「オーデンはダグラス様の家名ではありません。ジェシカ様もこれからはアシェトンの家名をお名乗りください」
それきりベイルさんは口を閉ざしてしまった。
どうやらジェシカの両親は母親の方の名字を名乗っていたようだ。
それが追っ手を逃れるためか、ただ単に家を捨てたためなのかは私には判断が出来ない。
ふと馬車の外に目をやると、先程までとは景色が一変していた。
いかにも高級そうな店が立ち並び、街中を歩く人達の服装も見るからに高価な物だとわかる。
私はハッとして自分の着ている服を見下ろした。
こざっぱりとした装いのワンピースではあるが、いかにも庶民が着ている物だとすぐにわかる。
こんな格好で今外に出されたら、とてもじゃないが歩けるものではない。
お金持ちとしか聞いていないから、ただ単に商売をやっていてお金があるのだろうと思っていたが、どうもそうではないようだ。
馬車は更に進んでいき、大きなお屋敷が立ち並ぶ通りへと入っていく。
…どうしよう…
だけど、今ここで馬車を降りるわけにはいかないのは明白だ。
不安な心を抑えつつ何気ないふりを装っているうちに馬車はどこかの門を抜けた。
だが、門を抜けたのに一向に馬車が停まる気配がない。
…まさか、王都の外に出たのかしら?
一瞬そう思ったが、先程ベイルさんが『王都の中心地』だと言っていたのを思い出した。
と言う事は、門から屋敷までの距離が相当あると言う事だ。
一体ジェシカのお祖父様はどれだけのお金持ちなんだろう。
やがて馬車の窓から建物が見えて来たが、その大きさに度肝を抜かれた。
…まるでお城みたい…
その建物が間近に迫ってきた頃、ようやく馬車が停まった。
馬車の扉が開けられ、見知らぬ壮年の男性が立っていた。
「ジェシカ様ですね。お待ちしておりました。足元に気を付けてお降りください」
そう言って私に手を差し出してくる。
ベイルさんを差し置いて私が先に降りてもいいのだろうか?
そう思ってベイルさんを見やると軽く頷いてくれたので、私はその男性の手を借りて馬車から降りた。
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「「「お帰りなさいませ、ジェシカ様」」」
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ドレス姿ならまだしも、こんな地味な服を着た女が一斉にかしずかれるなんてありえないわよ。
私は振り返って馬車から降りてきたベイルさんに助けを求めた。
「べ、ベイルさん、これは一体…。ここは何処なんですか?」
ベイルさんはニコリと笑ってサラリと答えてくれた。
「こちらはアシェトン公爵家のお屋敷です。あなたのお祖父様は現公爵様です」
こ、公爵家?
公爵って言ったら王家の次に偉い貴族よね。
それがジェシカのお祖父様?
だったらジェシカは公爵家のお嬢様だったって事?
そんな偉いお家に生まれたんならジェシカのお父さんはわざわざ駆け落ちしなくても、大抵のわがままは許されそうなのに、どうして公爵家を捨てて駆け落ちなんてしたのかしら?
疑問に思いながらも私は壮年の男性に促されるまま、玄関に向かって歩き出した。
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数歩進んだところで視線を感じて上を見上げると、階段の上から一人の若い男性がこちらを見下ろしていた。
その視線が突き刺さるように痛い。
…あれは憎悪の視線だわ…
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