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しおりを挟む「ニコル先生の気持ち……ですか?」
先生の気持ちを俺に?先生の気持ち………今まで俺には伝えていなかったと言う事か……。
先生は少し姿勢を正して言った。
「私はね、エネの事が好きなんだ。先生と生徒という関係ではなく、エネの唯一になりたいと思っている」
「!!………ふえっ……ええっ!!」
突然の先生からの告白に動揺してしまっている。
唯一ってあれだよね!!まさかっ先生が!!えっ!!俺の事が好きだって!!先生が……
「あ、あの……あの……その……ええっ!!」
「動揺して当然だと思うが、私はずっと前からエネの事が好きだったのだよ」
先生は姿勢は正しているが、表情はとても優しい微笑みでずっと俺の事を見ていた。
「それは……先生が俺の事を……いつからですか?」
「そうだなぁ……私はエネの勉強を見ている内にかな。一心不乱に勉強をしているエネに心を打たれたのが始まりかもね」
「そ、それなら今までの先生の生徒だったり、俺じゃなくてもいっぱいいましたよ。まさか先生が俺の事を特別に思っていたなんて全然気づかなくって……」
「エネ、私が誰かを好きになる気持ちに具体的な理由なんてないんだ。私もいつの間にか色んなエネを見ていたら、エネに目が離せなくなってしまってね。
それともう一つ、あらかじめ言っておくけど……私は先生として授業や勉強に関しては、エネや他の誰かを特別扱いした事は一度もないからね。試験に受かる事や単位取得には私の気持ちは全く関係がなく生徒達自身の実力だから」
先生が公平なのは一緒に授業や勉強を見てもらっていた人なら分かるだろう。それにしても先生が俺を好きって……全く実感が湧かない。
「先生……」
余りに突然の告白に俺は質問したい事が沢山あるはずなのに、何を質問したら良のか言葉が続かない。
「エネが学生だからと躊躇した事もあったが、アルバイトでも薬剤師としてのキャリアをスタートしているし、先ほどノートを見させて貰ったが……他の授業もしっかり勉強を重ねているね。エネは見かけの可愛さよりよっぽど自分を持っているししっかりしているよ。今のエネは学生でも十分独り立ちできる。だから私の思いを伝える事ができたんだ」
先生は……そうか。先生は教え子の成長する姿が見るのが好きだった。だから俺が学生として頑張っている姿とか、薬剤師として仕事をしている姿も……ずっと成長を見守っていてくれてたんだ。
だけど、俺がもし独り立ちできない様な状況だったら告白するつもりは無かったとも言える。
先生にとって、自分の気持ちより生徒の成長の方が大切なんだ。そんな先生の思いに少し切なくなる。それに……
「先生は貴族しょう?それに……俺はこの間の食事会で先生のご家族に嫌われています。それに俺は平民だし、裕福でもありません。先生は上級薬剤師で、薬局の監修もしていて、学園の教授なんですよ。俺は……俺には先生には不釣り合いです……」
そうなのだ。先生の気持ちがあっても俺がそれに応えられるがと言ったら色んな問題もある。
昔の俺ならお互いが好きなら恋人になって……その先に結婚とかあるんだろうなーとぼんやりと思っていた。
しかし、世の中そんな単純じゃなかった。いや、単純じゃない人達がいると言った方がいいかもしれない。
一族だったり、地位だったり……本人の恋愛より守らなくてはいけない物がある人達がそうだ。
先生は……俺が足を引っ張って、現に俺のせいで家族とも仲が悪くなってしまったりしたじゃないか。先生の幸せを願うならどう考えても俺は不釣り合いなのだ。そう思ったら自然と自分の顔が俯いてしまう……。
「先生の気持ちには感謝していますが、やはり…」
「エネ!!エネ!!ちょっと待って欲しい!!私の話を聞いて欲しいんだ!!」
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