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83〜ニコルside2〜夢の続き
しおりを挟む誰かに甘えた事はここ何年もなかったが、倒れた俺に気を使ってエネが誘っていたとしてもつい甘えてしまいたくなってしまうな。
エネを忘れる事なんて出来ない。ずっと一緒にいたい。
だけど……たとえエネが自分の事を思ってくれなくても、そばにいられるだけでいい。姿を見られるだけでいい。そう思っていたのに……
エネは俺に甘え過ぎたと言っていたのに俺を甘えさせてくれるのかい?
俺だって立場をわきまえないといけなくなるね。
でも……休みを取って甘えてみたい。
良いだろうか?
俺が何かしてあげたいと思って近づいてもエネを傷つけてしまっていたのに、エネの作った朝食をずっと食べたいと思ってしまうんだ。
今日食べたエネのご飯は自分の家でも俺が「食べたい」と言えば、直ぐに作ってくれるだろうがエネが作るご飯が絶対美味しいと確信している。
つい明日の約束を取り付けてしまった。
わがままな俺を許しておくれ。
流石に連絡をしないと不味いので魔法で学園と薬局の開発部門と伯爵家のメリーに連絡を入れる。
どうやらそれぞれが俺が休む事を喜んでいるようだった。
みんなが俺の事を心配していた事にやっと目を向けられるようになった。
みんなごめんね。
自宅に帰るとメリーが待っていた。
「ニコル様おかえりなさいませ。昨日は連絡もなく……心配しておりましたので、ご無事でホッとしております」
「メリー心配させて済まなかったね。どうやら俺は昨日倒れてしまってね」
「ニコル様!!そ、それは大丈夫でしたでしょうか?お身体は!!色々と!何かされませんでしたでしょうか?」
「なーんにも!!エネに助けられて一晩ベッドを借りて今日の朝はご飯も頂いちゃったんだよ」
「何とっエネ様にですか!!ほう……それはそれは……ようございましたね!!しかし何もされなかったのは残念でした」
「そうでしょう??あーあ俺ってそんなに魅力ないのかなー?」
「ニコル様ほど魅力がある方はそうそういないと思いますが……ニコル様が最近塞ぎ込んでおられましたので、元気になったご様子にメリーは安心した次第でございます」
「ああ……そうだね。メリーにも心配かけたな。身体の方は元気だが、一週間ほど仕事を休む予定だ。
それと明日もエネが作った朝食を食べに行く事になったんだ。それまでには寝不足を治すから俺を呼ばずに部屋にも入らないでくれ」
「承知しました。誰もニコル様の研究を止められなかったのですが、恋のパワーとは素晴らしい力があるものですね」
「メリー……ああそうだな。気長に応援していてくれ!!」
明日エネの家に行く前に自分の体調を万全にして行く。
最近は身体が疲れていたが、別にどうでも良かった。頭が流石に回らなくなってきたと思っていた所でエネに助けられたというわけだ。
しかし今回はそのお陰でまた会話できるきっかけが生まれたんだ。
明日もエネが朝食を作ってくれると思うだけでこんなに自分の健康を大切に思うなんてな。
作ってくれるお礼に何か持って行こうかと考えていたが、エネからは受け取ってくれないのに強引に持って行くのはやめよう。
俺は自分の事には興味がなかったが……自分の外見はチヤホヤされている自信があった。
それがエネには全く通用しない。
それにエネと私には先生と生徒という立場と貴族というフィルターがかかっているだろうし、距離を縮める事は難しいだろうが、俺は俺の後悔しない様に行動していく。
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