【完結】幼馴染みが今日もうるさい

うらひと

文字の大きさ
上 下
73 / 93

73

しおりを挟む

それからというものリーアスとは平日リーアスの見回りのない日には授業後にデートをする様になった。


カフェにも行ったりするが、学園から少し離れた公園のベンチに腰掛けてお喋りしたり、王都の少し外れた街を散歩したりと俺が王都に来たらやってみたかった事をリーアスは思いがけなく叶えてくれた。


「俺王都にリーアスと一緒に来てから、本当は最初からこういう事がしたかったんだ。忙しくて忘れていたけど今思い出したよ」


「そうか……その……悪かったな。これからはもっとエネと一緒にやっていけたら良いと思っている」


2人でデートしているとリーアスは昔と違って落ち着いていて特に婚約に対して返事を求めてはこなかった。でも……


「リーアス、俺は婚約者にも婚約者のフリも出来ないよ……やっぱりさ、人を騙したりするのはリーアスにも俺も周りも……良い結果にならないと思うんだ」



思い切って自分の思いを伝えた。一緒にこうして出掛けられたのは嬉しいがそれが婚約に繋がると言えばそうでは無かったからだ。
リーアスは俺の言った事を噛み締めているのか少し考えてから……静かに俺に言った。


「エネ、返事はすぐじゃなくていい。婚約者の振りじゃなくて将来結婚して欲しいと思っている」


ええ!!リーアスが俺と結婚!!はあ?


「リーアスは……俺とそんな事を考えていたのか!!本当に急だよ……急過ぎて今は俺の理解が及ばないんだ。だから返事もできないよ」


「返事はすぐじゃなくて良いんだ。ただ、俺の気持ちはもう動かないから……エネを貰ってやってもいいと思っている」


なんてこった!!あのリーアスが俺を?信じられない。


信じられないけど……それからというものリーアスは土日のどちらかにお店の方にも来て「おい、結婚しようぜ」「ミネラおばさんも喜ぶぜ」っと……気軽に言って来るようになった。


前の態度と全然違うし、どうしたらそんな風に変わったのだろうか?


トーイも最初はとても驚いて、俺に色々と質問してきた。

「ねえ、エネ。本当にリーアスと結婚するの?」

「ははは……リーアスと結婚どころか、誰かと結婚するなんて考えた事がないんだ。
……それどころか付き合った人もいないというのに……」


「そうなの?……エネは誰とも付き合った事がないのか」


「そ、そうだよ。トーイも俺を笑うのか?」


「ううん全然笑わないよ!!むしろ……僕も同じだからさっ!とっても嬉しいんだ!!」


そう言ってトーイは大喜びしていた。


こういうのは仲間意識で喜んでいいのか悪いのか……俺も恥ずかしいけど同じ仲間がいて正直ホッとするし凄い嬉しい!!ははは……これからどちらかに恋人でも出来たら「裏切り者」になるんだろうが今は仲間だw


そんなやり取りがあってからはトーイもリーアスの行動には少し呆れているようだ。


ただ、他のお客様に迷惑はかけていないし、毎回良質のポーションを購入してくれるので「まぁほっときましょう」という事になった。

俺も最初こそ真剣に考えていたのに、重い言葉を頻繁に言われ過ぎたのか正直少し呆れ気味になっていて、「ハイハイ」と言いつつ聞いていない。


アルバイトの方はとても順調で、見習い薬剤師の見習いが取れた。すると、お給金もまた増えて随分気持ち的にも余裕が出てきてきた。


最近のランド店長はなるべく中級薬剤師の勉強に集中したいという事で俺が見習いを外れた時点で土曜日は俺が店長代理、日曜日はトーイが店長代理を務める事になった。


店長代理と言ってもトーイの方がお店の知識があるので、店長の仕事を教えて貰っている様な状態だけど。


ワンスター薬局は薬局に関わるような資格取得に協力的で、資格取得を目指す個人の希望に合わせて働いていない時間でも調合室の利用や勉強の為に労働時間の短縮などをしてくれる。


今のランド店長も平日は店長として働いて、土日は調合室にこもっている。それでも「困った事があったら聞きに来て良いよ」と言ってくれるのでランド店長は優しくて……やっぱりニコル先生みたいだと思った。


「トーイ、ランド店長も頑張ってるよね!凄いな」


「そうだね。中級薬剤師以上の資格を持っているとワンスター薬局ではより良い商品の開発をお願いしているんだ。ランド店長も開発がしたいんだって。それで開発した薬品がワンスター薬局の看板商品にでもなると、開発者にも利益が出る仕組みになっているんだよ。例えばニコル先生なんかは莫大な利益を生み出しているんだけどね。エネはどう?中級薬剤師の資格は目指さないの?」

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...