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しおりを挟むリーアスはこういった店に慣れているのか、店員さんと何か話して奥に通されたので俺もついていく。通された場所は半個室のようなプライベートが保たれるような場所だった。
「ここのメニューはコーヒーとカネレしかないからさっさと2人分頼んでおいた」
リーアスがさっき店員さんに注文してくれたようだ。スマートな対応でとても尊敬する。俺も注文とかスマートにしてみたいと勉強中だが、田舎町から出てきた時はリーアスだって俺と同じだったのに……。リーアスは王都に来てから経験を積んだんだろう。
「有難う。リーアスは王都のお店も知っていて注文もスマートにできるんだね」
「当然だ。騎士団として王都の中心街ではどんなお店があるのか……お店の把握もしていかないといけないからな」
そうか……リーアスも将来騎士団に入るつもりで頑張っているんだ……ああ、それは置いといて、俺は今日はしっかりと話し合いたかったんだ!!
「リーアス!!俺が今日リーアスと話したかったのは母さんとレオナルドおじさんからの手紙の内容だよ。
お、俺とリーアスとのこ、婚約が決まったって書いてあったんだぞ!!一体どうなっているんだ?
レオナルドおじさんからはリーアスから聞いたって書いてあるし……何なんだよ一体!!……えっ?……」
そうリーアスに詰め寄るとリーアスはとても落ち込んで耳がぺったんこに垂れて身体も丸めて項垂れている。
こんなリーアスの姿を見るのは何年振りなんだろうか……
「エネ、まずは落ち着いてくれ。順番が逆になってしまって申し訳なかったが……俺は……今とても悩んでいるんだ」
「えっ?リーアスが悩んでいるのか?……大丈夫か?俺がもし出来る事なら力になってやりたいけれど……どんな悩みなんだ?」
「騎士団候補生以外ではエネくらいしか俺が信用できる者がいない……こんな悩みを真剣に聞いてくれるのはエネしかいないんだ……呆れずに聞いてくれないか?俺は真剣なんだ」
リーアスはさっきからずっと思い詰めている様だった。
俺は……前までそんなリーアスの気持ちを分かってあげていた筈なのに王都に来てから分からなくなって……申し訳ないと思った。
そもそもリーアスは悩みがあっても自分で直ぐに解決してしまうから悩まない奴だったし。
だからこれからも悩みもなく生きて行くんだろう……良いなあ……とか呑気な事を思っていたのだ。反省。
「分かった。俺もリーアスが悩んでいるなら助けになりたいし、真剣に聞くよ」
「そうか!!エネ有難う!!ところでエネの今日のクリーム色のカーディガンはミネラおばさんの手作りか?
とてもいいな!!
昔からおばさんはおしゃれだと思っていたが、流石はミネラおばさんだ!!センスがいい」
「ふえっ!!」
リーアスがいきなり俺のカーディガンを誉めてきた。母さんがクリーム色のフワフワの毛糸で作ってくれたカーディガン……あったかいから早速着てしまったが、流石に俺の事を赤ちゃんみたいだとは思われてはいないだろうが……褒めたのは、バカにしているのか本心なのか??
そして直ぐに母さんの手作りと分かってしまうとは…
「えっ!?確かに母さんの手作りだけど……何で直ぐに分かった?」
「だってほらさ、……こんなにエネにピッタリ似合う服を作れるのはミネラおばさんしかいないし、エネはセンスがないからこんな似合う服を買わないじゃないか。あと胸元……」
そうリーアスに言われて俺の胸元を咄嗟に見ると、隠していた筈のeneの文字がガッツリ出てしまっていた事に気づいた。
恥ずかしい!!素早く隠すが……もう見られてしまった後に隠したって仕方無いと思い直し隠すのを諦めた。
もう……本当に恥ずかしい……
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