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「ニコル先生……そんな事したら先生とご家族の関係もおかしくなってしまうでしょう?だめですよ。
それに先程から言うように俺は怒っていません。
先生のご家族も貴族なら当然の事をしたんだろうと今更ながら気づいたのです。
ご家族の方には怒ってないからと伝えて下さい。
それと、先生も俺の事を心配ばかりさせてしまってすみませんでした。
これからも頑張りますのでもう心配しなくて大丈夫ですよ」

「エネ……それは……もう許してくれないのだろうか?」

「いいえ、先生俺は本当に怒ってないのです。逆に俺は立場をわきまえていなかった事を気づかせてくれて感謝しています」

「エネ、違う……違うよ……立場とかわきまえるとか……私や私の家族には今後気を使わなくていいから……」

「先生、大丈夫です!俺の事は心配しないでください。俺が先生を心配させてしまったのも悪かったのかもしれませんが、何とかやっていきますからね!!」


先生にこれ以上は心配させてはいけないと俺は思いっきり笑顔を作ってみせた。それを見た先生は心なしか悲しそうな顔をしている。


「私の説明では分かってくれないのだろうか?あっそうだ!!昨日エネにお土産に渡そうと思っていた物を持って来ていたんだよ」

先生が席を立って持ってきた物は綺麗にラッピングされた沢山のクッキーだった。「昨日の食事が終わった後の帰りに渡そうと思っていたんだ」少し寂しそうに先生は言った。

「とても美味しいそうなクッキーです……でも先生これは受け取れません」

「な、何故?もう私の家族の誤解も解いたし、何も問題はないでしょう?これは元々昨日渡す予定だったんだよ」

「先生は優しいです。……もう俺はその優しさに付け入る事はできません」

「……そんな……エネは付け入ってなんかいないよ」

「先生はそう思って下さって感謝しています。でも、今後も先生の周りの人達がどう思うか……また誤解をされたくないのです。先生ごめんなさい」

「エネにそんな事を言われたら……私は何もエネにしてあげられなくなっていまうじゃないか……エネは……私の事をどう思っているの?」

「ニコル先生は俺に充分して下さいましたし、これからもご指導賜りたいと思っています。俺にとってずっとずっと尊敬する偉大な先生です」

「そう……か……」


先生は考え事をしているようだった。視線は俺を見ているようでみていないというか、俺を通して何処か遠くを見ているように見えた。

「一度歯車が狂うと元に戻すのには時間がかかるもの……なのか……エネが……これからも成長する姿を先生は楽しみにしているからね……それくらいは見守らせて欲しい」

「はい!!先生の生徒として恥じないように、これからも頑張りますからね!!」

「……うん」
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