【完結】幼馴染みが今日もうるさい

うらひと

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50〜ニコルside〜冷静

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「エネ!!」


どうしてこんな事になってしまったんだ!!

「エネ様が門を開けて欲しいと言われましたのでお送り致しました」

執事のメリーがそう伝えてくるのでつい怒りが湧き起こってくる。

「メリー!!どうして呼んでいたのにエネを止めてくれなかったんだ!!」

「エネ様にはニコル様が呼んでいると伝えたのですが……首を横に振ってお帰りになられてしまい……」

「ニコル!!もっと冷静になれ!!メリーに言っても仕方がないだろう!!最近のお前はおかしいぞ!!今までほとんど怒った事も無かっただろうに」

「……兄さん……そうだよ……今まで特別に興味を持った事なんて無かったんだからね。兄さん俺は今とても冷静だよ。
一度ダイニングに戻って父さん、母さんとも話がしたい」

エネが帰ってしまった今、自分の怒りが頂点に達してしまった。こんな事は今までで一度も経験がなかったかも知れない。
不思議なもので怒りが頂点に達すると自分の中で大爆発が起こると思っていたのだが、自分の大きくなった怒りは濃縮と圧縮で純粋な黒い塊の様な物に変わった。
そうなったらスンッと心が冷たくなり、自分でも怖いほど冷静になっているのだ。

ダイニングに戻ると、両親も座っていて、シュワルツ兄さんにももう一度席に着いて貰った。

「ニコル……」

「母さんも今日の質問の事は知ってたのでしょう?……今は怒りしが湧かないけれど、俺はとても冷静だよ。
さて、みんなには順を追って説明して貰う……場合によっては父さん、母さん、兄さんを許さない」

「ニコル!!」

「父さん何だい?怒りたいのはこっちの方だよ!前からエネが薬剤学部の試験に合格したら、俺が作ったご飯をご馳走してあげると約束をしていたんだよ。それでエネは一生懸命勉強して合格したんだ。その合格祝いで俺が家に招いたというのに、俺のお客様を食事の途中で帰らせるなんてっ!!いくら家族でも許す訳にはいかないよ!!」

「ニコル、今回は私が事前に父さんと母さんに話したんだ。ニコルに好きな人が出来たってな。ニコルは少し相手の事を好きになり過ぎている様な気がして、冷静じゃないと思っていた」

シュワルツ兄さんが俺を宥めるように話し始めた。

「ニコルの話を聞いてエネ君がどんな人物なのか調べさせて貰ったよ。ニコルはエネ君のお母さんの話も裏付けをとっていなかっただろう?分かっていると思うが、うちの侯爵家と関係を持ちたいという人達は非常に多い。その中には良からぬ事を企む人達がいる事はニコルでも充分理解しているはずだ」

「ああ……分かっている。侯爵家として調べたんだね……それでどうだったの?」

「エネ君の話はその通りだった。元々田舎街で母と暮らしていて、魔力判定により防衛学園に学びに来た子だったよ」

「じゃあ……何で……どうしてエネにあんな質問や態度をとったんだ!!」

「2つある……1つ目はエネ君のご家庭が貧困で侯爵家を陥れようとする者達に雇われたのではないだろうかという疑問、2つ目はニコルお前が原因だ」

「俺が?何だ?」

「お前がエネ君に肩入れし過ぎて心配になったからだ」

「どういう事だ?別に勉強でいくら肩入れしたって試験は本人の頑張りでしか受からないのはみんな知っているじゃないか?」

「勉強の事じゃない。ニコルはエネ君に沢山プレゼントを贈ったんだろう?そういうのは冷静に考えてどうなんだ?しかも今日のエネ君の様子じゃ、ニコルから貰った事も忘れていたみたいじゃないか」

そうか……ようやくエネが俺の家族から変な質問をされていた全貌が分かった。兄さんは凄い誤解をしていたままエネと会ったのか……俺が何度も大した物を贈ったりはしていないと言っていたにも関わらず……
エネの事を思うと悔しくなって涙が溢れて来た。

「違う……そうじゃない」

「ニコル……どうした?」

「兄さん……確かに先月の末にエネの痩せている姿と頑張っている姿が健気に思えて沢山プレゼントしたよ。でもそれはパンなんだよ!!エネの身体が心配で……帰り道にたまたま見かけたパン屋があったから大量に渡したんだ。エネは……凄く驚いていたけど……高級な宝石とか洋服とかでもないのに……凄く喜んんでくれて……うっうっ……」

「!!!」

「パンッ!」

「え……パン?……パンだけ?……他にはどんな物を?」
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