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このスーツだって必要な出費だもんな。

今後もこのスーツは使うと思うし上質な布で仕立てたとかでは無いが、普段着よりはずっとマシだろう。

それに、何を隠そうガロン団長のあのシンプルでかっこいい私服を真似たのである!!

一応衣料量販店の店員さんに相談したら、「スーツを持っていないのでしたら、どんな時でも使用範囲が広い黒や紺色のスーツを1着持っていると使えますよ」とアドバイスを貰ったので黒色にした。

本当は白いシャツもガロン団長みたいにシンプルな物にしたかったが、店員さんが「貴方はこのレースとリボンの飾りがついたシャツの方がいい」と譲ってくれなかった。

試しに試着した時は、「ちょっとこれ可愛いすぎませんか?俺はカッコ良いのが良いのですけど」と言ってみたのだけど、店員さんは「……素晴らしい……とても素敵です!!貴方の魅力が存分に発揮される事でしょう!!」と言われて嬉しくなってこっちを買ってしまったのである。

煽てられて直ぐ流される俺……自分の服のセンスに自信が無いのがそもそもの原因なんだが、今回は自分のカッコイイを優先するより、侯爵家で少しでも印象良く見られたいという打算もある。

だって、ニコル先生に招かれた者として恥ずかしくないようにしなければならないっ!!
店員さんの言う通り、自分の魅力が倍増したら良いんだけど……

地図をみながらニコル先生のお宅に来たけれど、ここらの家は豪邸が建ち並んでいるが、その中でも大きくて目立っていたのですぐ見つけられた。

しかし家が大きくてニコル先生を呼び出すのに怖気付きそうになる。

家の大きな門にブザーみたいなボタンが付いていたので押せば良いのかな……っと思い、緊張しながら押してみた。
すると執事さんと思われる方がやって来て「どちら様でいらっしゃいますか?」と聞かれたので緊張しながら「ニコル先生にお招き頂きましたエネと言います」と伝えた。

執事さんはすぐ理解したと言わんばかりにニッコリ笑って「エネ様お待ちしておりました。ご案内致しますね」と敷地の中に案内してくれた。ホッ。

敷地内には手入れの行き届いた木や花が咲いていて、執事さんは「日が暗くなってきて見にくいですが、今はローズメアンリーの花が咲いて綺麗ですよ」とお庭を通りながら教えてくれる。執事さんのその動作には無駄がなくて、とても洗練されているようにみえた。

「エネ!!今日はよく来てくれたね!!さっどうぞ入って!!」

玄関に入ると、ニコル先生が待ち構えていた。俺もニコル先生の顔を見てホッとする。こんな豪邸に入るのも初めてなのだから緊張しない訳がない。

「ニコル先生、今日はお招き頂きまして有難う御座います。これ、ニコル先生が気に入ってくれるか分からないのですが……俺が薬剤師として働いた初お給金で購入した物です。受け取って下さい」

そう言って早速先生にプレゼントを渡した。

ニコル先生はプレゼントを受け取った時、目をウルウルさせて「とても嬉しいよ。有難う!」と、感激していた。
うあわわっ!ニコル先生がウルウルしていたら美人すぎて破壊力抜群だった。美人って倍増する事があるんだな。
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