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しおりを挟むガロンさんは話ている俺をじっと見ながら何か考えているよう見えた。
「あ、あの、私はまだ自宅付近の店にしか行った事がなくて……王都の中心部の街の素敵なお店とか知らないのです…」
「そうか……そういう事ならリーアスより私の方が詳しいだろう。ニコル先生の好みも少しはアドバイスできる筈だ。授業が終わったら、またこの場所に来なさい。いいね」
「ええーっ!!」
「なんだ、私では不満か?」
ガロンさんが更に険しい表情で俺を見た。どうしよう……俺殺される……殺されるより生きる方を選択するしかない。
「い、いえ……宜しくお願いします……」
「ああ、では授業後に」
「……はい」
どうしてこうなった!!
もう一度言おう……どうしてこうなったんだ!!
授業後は約束をしてしまったガロン団長が恐いので待たせると悪いと思い、走ってまた騎士団候補生の校舎に着いた。
少し待っていると、「待たせたか」と低めのよく通る声が聞こえた。
「ふえっ!!ガロン団長……」
声のした方を振り向くと、私服に着替えたガロン団長が来た。
ガロン団長を一目見て「なんてカッコ良いんだ!!」と思った。
襟付きのシャツに細身のズボンにジャケットというオーソドックスだけどきちんとした格好だった。身体が引き締まっているのと姿勢がとても良いので、立っているだけでとても絵になる。
団長として王都騎士団の制服を着ていた時は貫禄があって恐い気持ちが先行してしまい、あまりそういう目でみてなかったが、制服の時とは全然違う……かっこいい人というのはこう言う人の事をいうのか……と思った。
「い、いえ……私も今来たばかりです……この度は私にお付き合い頂きありがとうございます」
私服のガロン団長を前につい緊張してしまい、堅い挨拶しかできなかったが、ガロン団長はふっと笑って俺の頭を撫でた。
「そんなにかしこまらなくていい。馬車を用意してあるから早速行くぞ」
そう言ってガロン団長は俺が「えっ?えっ?」と言っている間に楽しそうに俺の手を握って引っ張って歩きだした。
歩いている内にプレゼントの予算と母さんの好きな物などを詳しく聞いてくるガロン団長の行動力が凄い。
馬車に向かってズンズン歩いている途中、遠くからゴッスとゲオが俺に気づいて目を丸くし、近くにいたリーアスとギルベルトにガロン団長と俺を指をさしながら伝えた様だった。
リーアスとギルベルトも俺とガロン団長を見て驚き、口をパクパクしていたが意を決して此方に向かって来た。
「ガロン団長!!ちょっと待って下さい!!そいつは俺の幼馴染みなんです。そいつと何かあったんですか?誤解かも知れませんので、私も話を聞かせて下さい!!」
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