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しおりを挟む「おはよう、エネ!!待ったかい?」
「おはようトーイ、今日は初めてのバイトだからトーイが迎えに来るのを楽しみに待っていたんだ!今日から宜しくお願いします」
「エネ、僕も一緒に仕事が出来て嬉しいよ。あんまり緊張しないで頑張ろうね!」
「うん!」
今日は俺が初めてワンスター薬局で働く日。
トーイは薬局の場所も仕事内容も分かっているので、今日は俺の家に迎えに来てくれて一緒に働き先であるワンスター薬局の支店にいってからトーイに仕事の仕方を教えて貰うのだ。
だから今日はトーイに一日中教えを乞うから俺にとってトーイ先輩なのである。
「エネ、ところで、先日の酔っ払い騎士の件の事だけどね」
お店に向かっている途中でトーイが先日の酔っ払い騎士の事を話した。
そういえばニコル先生に薬剤師のバッチを貰った時は、トーイが薬のお金を公爵家に分取って来ると意気込んで帰って行ったけど、あれからどうなったんだろうか……
「トーイはあれから公爵家に行ってきたの?1人で?」
「いいや、王都騎士団の人達と共に行って来たよ。
あの時リーアスがエネを助けてくれたでしょう?リーアスは王都騎士団の先輩方と治安維持の見回りをしていたんだよ。だからリーアスの他にも駆けつけてくれた人達は王都騎士団の人達でね、目撃者としても仲介してくれる事になったんだ。」
「そうだったんだ。ごめんね、俺も当時者なのに何も出来なくて……」
「はははっエネ、大丈夫だよ。向こうは公爵家で貴族の中でも力が強い。だから中々一平民のエネや僕のような学生だけが動くのは難しいんだ。
今回はたまたま、目撃者に騎士団の方もいらっしゃるし、僕の家の者も酔っ払い達の取り調べに同席していたから、証拠も揃っているし心配しないで」
ニコッとトーイは何でもないよっていう風に笑った。
トーイは凄い!!
トーイは身体は大きいけれど、騎士団の人達みたいに屈強で戦いに強い訳ではないのに、とても強くて頼もしく見える。
「それで、どんな話をしたの?」
「うん、公爵家の酔っ払い騎士達はトラブルを起こしたのは初めてじゃないんだ。公爵としても自分の騎士達の行いに困り果てていて、同席した王都騎士団に相談をしていたよ。君の事も心配していて、公爵様は全面的に謝罪していたよ。本当はエネにも謝りたいと言っていたんだけど、あの時の事を急に思い出して怖がるかも知れないから勝手にお断りしておいたけど……よかった?」
「うん……俺は結局トーイの手当てのお陰で怪我も治ったし心配いらないと思うけど……俺の配慮をしてくれてありがとう」
「エネ……本当は薬の代金を分取るって言ったけど、それはついでで、エネが精神的なダメージの慰謝料を貰う為でもあったんだ……それで、貰ってきたから今日エネを家に送る時に渡すね」
「えっ?俺は怪我が治ったんだから大丈夫だよ!それにリーアスも助けてくれたし、トーイも慰めてくれたじゃないか」
「エネ、精神的なダメージっていうのは今大丈夫であっても、暫くしてショックをうける事もあるんだ。だから解決金みたいな気持ちで受け取る方が公爵様としてもこれで処理が終わるとホッとすると思うよ」
そうなんだ……よく考えれば、公爵様は自分で悪さをしてる訳でもなく、指示もしてないのに自分の騎士団の悪さの尻拭いをしたんだよな……
上に立つ人間も大変なのかも知れない……。
「ねえトーイ、そういえばあの酔っ払いの騎士達はこれからどうなるの?」
「ああ……あの男達はさっき言った通り、エネの前にも一般の女性とトラブルを起こしていて、今回が初めてじゃないんだ。
だから騎士としての称号は剥奪されるだろう。そして公爵家の騎士ではいられなくなるだろうね」
「騎士が騎士じゃなくなったら……」
「そこまでは僕にも分からないけど、酔っ払い騎士達は騎士の称号を剥奪されるまでの間は王都騎士団の管轄下でボランティア活動をする事になっているよ。ただ、手続きが終わったら自由になってしまうからまた犯罪を起こさないか心配だよね」
「そうなんだ……トーイ、色々と話をつけてくれてありがとう。トーイって凄いんだね」
「た、たまたま上手く行ったんだよ!!気にしないで」
と、またニコっとトーイが笑った。
俺は……自分が弱くて鈍臭いといつも思っているのに、思っているだけで方法がわからず何もしていなかった。
強さは何も身体を鍛えるだけじゃない。
俺はリーアスの様に身体は強くなれなくてもトーイの様な頼りになる強さには努力次第でなれないだろうか……
トーイの頼もしい行動を見て、自分自身が強くなるヒントがあるかもしれないと思った。
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