【完結】幼馴染みが今日もうるさい

うらひと

文字の大きさ
上 下
22 / 93

22

しおりを挟む

「おはよう、エネ!!待ったかい?」

「おはようトーイ、今日は初めてのバイトだからトーイが迎えに来るのを楽しみに待っていたんだ!今日から宜しくお願いします」

「エネ、僕も一緒に仕事が出来て嬉しいよ。あんまり緊張しないで頑張ろうね!」

「うん!」


今日は俺が初めてワンスター薬局で働く日。

トーイは薬局の場所も仕事内容も分かっているので、今日は俺の家に迎えに来てくれて一緒に働き先であるワンスター薬局の支店にいってからトーイに仕事の仕方を教えて貰うのだ。
だから今日はトーイに一日中教えを乞うから俺にとってトーイ先輩なのである。

「エネ、ところで、先日の酔っ払い騎士の件の事だけどね」

お店に向かっている途中でトーイが先日の酔っ払い騎士の事を話した。
そういえばニコル先生に薬剤師のバッチを貰った時は、トーイが薬のお金を公爵家に分取って来ると意気込んで帰って行ったけど、あれからどうなったんだろうか……

「トーイはあれから公爵家に行ってきたの?1人で?」

「いいや、王都騎士団の人達と共に行って来たよ。
あの時リーアスがエネを助けてくれたでしょう?リーアスは王都騎士団の先輩方と治安維持の見回りをしていたんだよ。だからリーアスの他にも駆けつけてくれた人達は王都騎士団の人達でね、目撃者としても仲介してくれる事になったんだ。」

「そうだったんだ。ごめんね、俺も当時者なのに何も出来なくて……」

「はははっエネ、大丈夫だよ。向こうは公爵家で貴族の中でも力が強い。だから中々一平民のエネや僕のような学生だけが動くのは難しいんだ。
今回はたまたま、目撃者に騎士団の方もいらっしゃるし、僕の家の者も酔っ払い達の取り調べに同席していたから、証拠も揃っているし心配しないで」

ニコッとトーイは何でもないよっていう風に笑った。

トーイは凄い!!

トーイは身体は大きいけれど、騎士団の人達みたいに屈強で戦いに強い訳ではないのに、とても強くて頼もしく見える。

「それで、どんな話をしたの?」

「うん、公爵家の酔っ払い騎士達はトラブルを起こしたのは初めてじゃないんだ。公爵としても自分の騎士達の行いに困り果てていて、同席した王都騎士団に相談をしていたよ。君の事も心配していて、公爵様は全面的に謝罪していたよ。本当はエネにも謝りたいと言っていたんだけど、あの時の事を急に思い出して怖がるかも知れないから勝手にお断りしておいたけど……よかった?」

「うん……俺は結局トーイの手当てのお陰で怪我も治ったし心配いらないと思うけど……俺の配慮をしてくれてありがとう」

「エネ……本当は薬の代金を分取るって言ったけど、それはついでで、エネが精神的なダメージの慰謝料を貰う為でもあったんだ……それで、貰ってきたから今日エネを家に送る時に渡すね」

「えっ?俺は怪我が治ったんだから大丈夫だよ!それにリーアスも助けてくれたし、トーイも慰めてくれたじゃないか」

「エネ、精神的なダメージっていうのは今大丈夫であっても、暫くしてショックをうける事もあるんだ。だから解決金みたいな気持ちで受け取る方が公爵様としてもこれで処理が終わるとホッとすると思うよ」

そうなんだ……よく考えれば、公爵様は自分で悪さをしてる訳でもなく、指示もしてないのに自分の騎士団の悪さの尻拭いをしたんだよな……
上に立つ人間も大変なのかも知れない……。

「ねえトーイ、そういえばあの酔っ払いの騎士達はこれからどうなるの?」

「ああ……あの男達はさっき言った通り、エネの前にも一般の女性とトラブルを起こしていて、今回が初めてじゃないんだ。
だから騎士としての称号は剥奪されるだろう。そして公爵家の騎士ではいられなくなるだろうね」

「騎士が騎士じゃなくなったら……」


「そこまでは僕にも分からないけど、酔っ払い騎士達は騎士の称号を剥奪されるまでの間は王都騎士団の管轄下でボランティア活動をする事になっているよ。ただ、手続きが終わったら自由になってしまうからまた犯罪を起こさないか心配だよね」

「そうなんだ……トーイ、色々と話をつけてくれてありがとう。トーイって凄いんだね」

「た、たまたま上手く行ったんだよ!!気にしないで」

と、またニコっとトーイが笑った。

俺は……自分が弱くて鈍臭いといつも思っているのに、思っているだけで方法がわからず何もしていなかった。

強さは何も身体を鍛えるだけじゃない。

俺はリーアスの様に身体は強くなれなくてもトーイの様な頼りになる強さには努力次第でなれないだろうか……

トーイの頼もしい行動を見て、自分自身が強くなるヒントがあるかもしれないと思った。



しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

処理中です...