【完結】幼馴染みが今日もうるさい

うらひと

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17〜ニコルside〜天職

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「なあニコル……そろそろ結婚を考える相手はいないか」

「うーん、この子だと思った子がいれば……」

「そう言って何年も結婚しないではないか……」

「うーん、でも俺次男でしょ?もう家を継ぐ予定のシュワルツ兄さんの子にはヨシュアとセーラもいるし、正直結婚の必要性を感じなんだよねぇ」

「……まったくお前は」

夜の食事を両親と共にすると時々この話が持ち上がる。

鬱陶しいと思いつつ親の気持ちも分からないでもないので、話を聞くがもう対応には慣れた。

毎回同じ対応をする俺の返事に両親は諦めにも似た表情をして終わる。

だって興味がないんだもん。
逆にどうしたら結婚したいと思う相手ができるのか教えて欲しい。

俺は代々学者を多く輩出する侯爵家の次男に生まれた。
虎の獣人の父は生物学者で、豹の獣人の母は小学校の先生をしている。
父の姿を受け継いだ虎の獣人の兄も国の生物研究所の研究者として国に貢献している。
そして、俺は母の姿を受け継いだ豹の獣人だったので男なのに小さい時から美人で大変賢いと家族に愛されて育った。

特に家族愛が異常だ。
父は自分に似た兄も可愛いがったが、生まれた時から侯爵家の跡取りだと決めていたので甘やかしたりはしなかった。
しかし大好きな母に似た俺にはびっくりするほど甘く、兄から嫉妬されるくらいだった。
自分の姿に自信がある母からも、豹の獣人の俺を大変可愛がってくれた。

豹の獣人はこの国では大変姿が美しいとされている。

俺の母の家系は豹の獣人が多く、親戚には女優や王族に嫁いだ人もいる。


兄は俺との扱われ方が違う事に兄には一時的に嫉妬されたが、跡取りは兄だからと両親が伝え続けたお陰で弟とは別の意味で大切にされていると理解し、今では立派な次期侯爵として成長した。

小さい時こそ兄は俺に嫉妬していたが、跡取りには全く興味もない俺に対し嫉妬が馬鹿馬鹿しくなり、その内呆れ、最終的に兄までも俺を溺愛するようになっていった。

そんな美人で頭もよく家柄も申し分なく生まれた俺自身は……自分に全く興味がなかった。

何をやっても褒められるし、道を歩けは周りが騒つく。

はー俺ってめんどくさ。

俺自身には興味はないけど性欲は人並みにあるので色んな人と付き合った。

ただ、自分から好きな人ができる訳ではないので、顔を赤くして俺に告白してくれた人と、その時たまたま特定の人がいなければ付き合ってみるのだ。

女性にも男性からも告白されるので付き合ってみるが、付き合った女性からはそのうち「ごめんなさい……美人で何でもできるニコルの隣にいると自分が惨めになる」と振られたり、俺の外見を気に入って告白してきた男性からは「すまない、ニコルの話が難しすぎて俺には理解出来ないんだ」と振られる。

俺に合う人っているのか?
俺に合う人は俺より賢くて、お年を召した大賢者とかがいいかもしれないな。

俺は何でも出来る子だったので、1番覚える事が沢山ありそうな薬剤の勉強をする事にした。
勉強していくと中々奥が深く、新しい薬草や薬剤の発見が永遠にあるので全く飽きる事がなくていい。

どんどんのめり込んだら、この国でその当時3人しかいない上級薬剤師の免許も賜り、その才能や知識を王都にある防衛学園の優秀な生徒達に伝授して欲しいと要請された。

自分にも興味が持てない俺が他人に興味を持てるのか疑問に思っていたが、まあ暇を持て余しているので、防衛学園の教授の仕事に就く事にした。

教授としての研究と学会に出席しながら薬剤学部の先生として生徒と接していると、薬剤師になりたいと真摯に学んでいる生徒達が可愛いと自分が思っている事を発見した。

自分だけなら自分が頑張ればいいだけだが、自分以外の人に薬剤に興味を持ってもらい、理解してくれるよう分かりやすく説明する。1人1人性格も理解の仕方も違うので、教え方に正解はないから退屈しない。

そして薬剤師試験に合格して喜ぶ生徒をみると、合格迄導いてあげられた事に大きな喜びを感じるようになった。
生徒達も一生懸命勉強して試験に合格する者、不合格で来年リベンジする者、諦める者と色々いるが、生徒達が一時でも頑張った時間は素晴らしいと思っているし、俺だけでもちゃんと記憶していきたいと思った。


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