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しおりを挟むここは王都の街から少し離れた小さな薬局
「なあ 仕方ないから俺が嫁に貰ってやるって言ってんだろ」
「お前鈍臭いし、今まで付き合えた相手も居ないときたもんだ」
「ミネラおばさんも俺がエネを貰ってやるって言ったら泣いて喜んでたぞ」
ミネラおばさんというのは女手1つで育ててくれた俺の母だ。
俺はポーションの棚を綺麗に並べながらため息をつく
「リーアス…無理して俺と付き合わなくていいよ…」
「何だよ 折角幼馴染みのよしみでこうして会いにきてやってるのに …チッ もういいよ」
リーアスが言いたいこといって薬局のドアを勢い良く開けて出で行った
俺はリーアスが出て行ってくれた事でホッとしたのと、これからの事を想像してまた1つため息をついた。
俺はエネ。
獣人が大多数のこの国でリーアスとは同じ田舎町に生まれた幼馴染みだ。
この世には番がどこかにいて、男同士でも女同士でも番を見つけたら幸せになるらしい。
そんな世界で俺は生きている。
俺は猫の獣人で近所のリーアスと毎日のように遊んてそれはもう楽しかった。
小さい時は身体も2人共同じ位で力も同等だったと思う
喧嘩してもお互い何となく寂しい気持ちになり、だんだん身体を寄せ合い、ペタペタと触り合って、最後には2人とも謝って臭いをかきながら安心して寝落ちする
そして次の日にはまた2人で遊ぶんだ
そんな関係が変わったのは魔力測定が行われた時からだ。
この国では10歳になると魔力測定が全員行われる。
そこで特別魔力の高い子供は王都に士官候補生として防衛学園に入ることになっている。
これは大変名誉な事で、その町で1人でも入学できた時には町全体の獣人レベルが上がったような気分になるらしい。
防衛学園は強制入学にはなっていまうが、学費は無料なうえ、士官候補として王都に貢献しているという名目で毎月本人の家族に給金も入るのだ
俺は女手1つで育ててくれたミネラ母さんに早く楽をさせてあげたかったので、密かに魔力が高かったら良いなあとぼんやり考えていた。
そうしたら何と、魔力が本当に高かったからうれしかった。特に回復魔力が高いという。
そしてリーアスも魔力が高く、特に潜在戦闘魔力は余り見たことが無い程だったとか。
しかし元々狼獣人は軒並み魔力が高いのだ。
リーアスの父親であるレオナルドは狼獣人で元王都の騎士団に所属していた。
辺境の田舎町であるここの町にも見守りとして一時的に派遣された時、リーアスの母と運命的な出会いをして王都に戻るのを嫌がりまくっていたら、王都騎士師団所属のま定住する許可が降りたらしい。
普通は王都から辺境の田舎町なんかに行きたくない人が大多数いるのが現状だったので、逆バージョンの場合はむしろ王都騎士団は歓迎したようだ
そうしてこんな田舎町から2人も防衛学園に入学が決まったのは町としても名誉な事であり町をあげて送別会を開いてくれた。
俺もリーアスも2人で一緒に学園に行ける事に安心感と希望に満ちた将来を想像して笑い合った。
そんなに仲が良かった2人なのに、王都学園に入ってからは全然2人は一緒にいる暇がなくなってしまった。
リーアスの方は攻撃魔法が強かった為、入学早々同じく攻撃魔法の強者達の方が気が合うのかすぐに仲が良くなり、将来の騎士団予備軍として先生からも一目置かれるようになった。
俺の方はというと、身体強化の防衛魔法や結界魔法、回復魔法はずば抜けているが、攻撃魔法は得意でなかった。
それでもポーションや身体強化の薬草などの調合などが上手く出来た時には喜んだし、何より入学できただけでミネラ母さんにお給金まで送れるのだから嬉しい。
そんな生活を始めながら学園内でリーアスを見かければ声をかけていたのに、何故かその頃からリーアスが素っ気ない態度をとるようになった。
それでも偶然リーアスが友人達といる所に出くわして声をかけてみれば、リーアスの友人達は俺を見て何故か驚いた顔をしてリーアスにコソコソと何かを言っていて、俺には言葉もかけてくれなかった。
何か……リーアスの友人達にしては感じ悪いな。
リーアスは俺を睨んで友人を紹介するどころか俺を無視して向こうに行ってしまった。
なんで?
俺そんな悪いことしたか?
もう同じ田舎者と思われたくないのか
ショックではあったが、自分では何かしたつもりが無いので、一度リーアスに聞いてみたいと思っていた。
そうしたらリーアスの方から俺に「話したい事がある」と声をかけてきてくれ、久しぶりに嬉しくなって2人で話せる所までついていった。
「なぁ リーアス 俺 お前になんか悪い事したか?」
「お前…もう俺に話しかけるな」
「えっ?何で?」
「…俺が疲れるからだ。」
「そんな…酷い」
「いやっお前が悪い訳じゃないが…」
「……そうかよ……ならもっとハッキリ言えばよかったじゃないか!!声をかけても訳もわからず無視されて悩んでいたのがバカみたいじゃないか!
分かった…お望み通り、もう俺からも声かけるはやめる。リーアスじゃあな」
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