【完結】幼馴染みが今日もうるさい

うらひと

文字の大きさ
上 下
1 / 93

1

しおりを挟む

ここは王都の街から少し離れた小さな薬局


「なあ  仕方ないから俺が嫁に貰ってやるって言ってんだろ」

「お前鈍臭いし、今まで付き合えた相手も居ないときたもんだ」

「ミネラおばさんも俺がエネを貰ってやるって言ったら泣いて喜んでたぞ」

ミネラおばさんというのは女手1つで育ててくれた俺の母だ。
俺はポーションの棚を綺麗に並べながらため息をつく

「リーアス…無理して俺と付き合わなくていいよ…」

「何だよ 折角幼馴染みのよしみでこうして会いにきてやってるのに …チッ      もういいよ」

リーアスが言いたいこといって薬局のドアを勢い良く開けて出で行った

俺はリーアスが出て行ってくれた事でホッとしたのと、これからの事を想像してまた1つため息をついた。



俺はエネ。
獣人が大多数のこの国でリーアスとは同じ田舎町に生まれた幼馴染みだ。

この世には番がどこかにいて、男同士でも女同士でも番を見つけたら幸せになるらしい。

そんな世界で俺は生きている。

俺は猫の獣人で近所のリーアスと毎日のように遊んてそれはもう楽しかった。

小さい時は身体も2人共同じ位で力も同等だったと思う

喧嘩してもお互い何となく寂しい気持ちになり、だんだん身体を寄せ合い、ペタペタと触り合って、最後には2人とも謝って臭いをかきながら安心して寝落ちする

そして次の日にはまた2人で遊ぶんだ

そんな関係が変わったのは魔力測定が行われた時からだ。

この国では10歳になると魔力測定が全員行われる。
そこで特別魔力の高い子供は王都に士官候補生として防衛学園に入ることになっている。
これは大変名誉な事で、その町で1人でも入学できた時には町全体の獣人レベルが上がったような気分になるらしい。

防衛学園は強制入学にはなっていまうが、学費は無料なうえ、士官候補として王都に貢献しているという名目で毎月本人の家族に給金も入るのだ

俺は女手1つで育ててくれたミネラ母さんに早く楽をさせてあげたかったので、密かに魔力が高かったら良いなあとぼんやり考えていた。
そうしたら何と、魔力が本当に高かったからうれしかった。特に回復魔力が高いという。

そしてリーアスも魔力が高く、特に潜在戦闘魔力は余り見たことが無い程だったとか。

しかし元々狼獣人は軒並み魔力が高いのだ。
リーアスの父親であるレオナルドは狼獣人で元王都の騎士団に所属していた。
辺境の田舎町であるここの町にも見守りとして一時的に派遣された時、リーアスの母と運命的な出会いをして王都に戻るのを嫌がりまくっていたら、王都騎士師団所属のま定住する許可が降りたらしい。

普通は王都から辺境の田舎町なんかに行きたくない人が大多数いるのが現状だったので、逆バージョンの場合はむしろ王都騎士団は歓迎したようだ

そうしてこんな田舎町から2人も防衛学園に入学が決まったのは町としても名誉な事であり町をあげて送別会を開いてくれた。

俺もリーアスも2人で一緒に学園に行ける事に安心感と希望に満ちた将来を想像して笑い合った。

そんなに仲が良かった2人なのに、王都学園に入ってからは全然2人は一緒にいる暇がなくなってしまった。

リーアスの方は攻撃魔法が強かった為、入学早々同じく攻撃魔法の強者達の方が気が合うのかすぐに仲が良くなり、将来の騎士団予備軍として先生からも一目置かれるようになった。

俺の方はというと、身体強化の防衛魔法や結界魔法、回復魔法はずば抜けているが、攻撃魔法は得意でなかった。
それでもポーションや身体強化の薬草などの調合などが上手く出来た時には喜んだし、何より入学できただけでミネラ母さんにお給金まで送れるのだから嬉しい。

そんな生活を始めながら学園内でリーアスを見かければ声をかけていたのに、何故かその頃からリーアスが素っ気ない態度をとるようになった。

それでも偶然リーアスが友人達といる所に出くわして声をかけてみれば、リーアスの友人達は俺を見て何故か驚いた顔をしてリーアスにコソコソと何かを言っていて、俺には言葉もかけてくれなかった。
何か……リーアスの友人達にしては感じ悪いな。
リーアスは俺を睨んで友人を紹介するどころか俺を無視して向こうに行ってしまった。

なんで? 
俺そんな悪いことしたか?
もう同じ田舎者と思われたくないのか
ショックではあったが、自分では何かしたつもりが無いので、一度リーアスに聞いてみたいと思っていた。

そうしたらリーアスの方から俺に「話したい事がある」と声をかけてきてくれ、久しぶりに嬉しくなって2人で話せる所までついていった。

「なぁ リーアス 俺 お前になんか悪い事したか?」

「お前…もう俺に話しかけるな」

「えっ?何で?」

「…俺が疲れるからだ。」

「そんな…酷い」

「いやっお前が悪い訳じゃないが…」



「……そうかよ……ならもっとハッキリ言えばよかったじゃないか!!声をかけても訳もわからず無視されて悩んでいたのがバカみたいじゃないか!
分かった…お望み通り、もう俺からも声かけるはやめる。リーアスじゃあな」



しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...