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ウェイの家
15俺の望みは?
しおりを挟むううっ……
王様の視線が痛い………
部屋に戻ってからチェン先生がいつもの様に診察して貰っているのだけど……王様が俺に近いっ!!
「あ……あの……」
「ハオラン何だ?」
「い、い、いえ……何でも無い……です……」
先生が裸になった俺の傷を丁寧に確認して新しい塗り薬や微熱の状況を診てくれている横で、同じ様に俺の顔や身体を触って確認してくる王様……
お父様達にはもう俺の知らない内に色んな所を見られてしまったし、あの時はペニスにも怪我をしていた。
でも今は俺の身体も火傷の跡以外は随分綺麗になって打たれたアザの跡なんかは本当に綺麗になったというのに王様に見られるなんて恥ずかしい……
チェン先生は王様に何も言えないみたいだし、お父様とリー様も俺の部屋にはいるが、やはり一歩下がって王様に控えている位置で立っている。
何も言えなくて恥ずかしくて……俺の顔が真っ赤になっていたようでチェン先生からは「熱上がった??」と再度熱を測って貰うハメになってしまった。
流石にお父様が注意してくれた。
「おいジン、そんなにハオランの身体をジロジロ見ているからハオランが怯えるだろう?私の息子をそんなに見るのはやめてくれないか?」
王様の護衛は部屋の外で待機しているせいか、お父様はフランクな言葉遣いに変わっていて王様も特に咎める様子もない所をみると、本当に幼馴染みで仲が良いんだと思った。
「……お前らはな……何故私にすぐ報告をしなかったんだ?」
「だからすぐ言う予定だったが……ハオランは身体が傷まみれで弱っていたし、今でも微熱が続いているんだぞ」
「それでも、報告くらいはできるだろう?」
「あのなぁ、ジンの事だからどうせどんなに忙しくても私の家に来て騒がしくするじゃないか!!ハオランの体調を1番に考えた結果だ」
「……クソが」
……お父様と話している時も王様の視線は俺の方をジッと見ている。
俺は男娼だったし、お客様の要望があればどんな体勢になってたし何でもやっていたけれど、羞恥心くらいはあったのだ。
「何だ?ハオラン何か言いたい事があれば言ってみろ」
「おい、ハオランはまだ自分の気持ちも中々出せないぞ!!ハオラン別に無理して言葉を捻り出さなくていい」
王様が俺に聞いてきた。
お父様は言わなくていいって言ってるけど……
「あの……王様」
そう王様に呼びかけて見ると王様は破顔して余計俺をジロジロ見てきた。
うわっドアップドアップ!!
自分の瞳はあまり好きではなかったが、王様の瞳はとても綺麗で大きくて光でも発しているような眼力があった。
「何だ!!ハオラン、言ってみろ!!」
「王様が……」
「ん?私が何だ?」
「………近いです……」
「………」
部屋が一瞬静寂に包まれた後、王様以外の大人が一斉に笑っていた。
リー様なんか腹を抱えて笑っている……リー様も家臣だけど、とても気さくな関係なんだろうけど、王様に向かってそんなに笑って怒られないか大丈夫なのかな?
王様は一瞬黙って俺を睨んでいたが、俺の頭をポンポンと叩かれて
「すまんな」
と笑って言った。
王様まで……俺の生い立ちを既に知っていると思うのに嫌な顔を何一つされなくて優しい眼差しに自分の心も舞い上がってしまう。
リー様が「笑顔が嬉しかったら笑顔で返すと喜ぶ」と教えて貰ったから俺も笑顔の練習の成果を発揮しなければ!!
細くて裸だなんて滑稽な姿だけど、俺は王様に笑顔を返してみるといきなり抱き締められてしまった。
「わっ!!王様!!」
チェン先生もお父様もリー様も……特に王様の行動を止めるような素振りはない。
俺に危害は加えないと分かっているからなのかな?
でも今の俺……薬まみれの裸……
「あの……?」
「ハオラン。お前は何が望みだ?」
王様が唐突にそんな事を聞いてきた。
「望み……?」
「そうだ。お前の望みは何だ?無いのか?」
そんないきなり聞かれても……望みか……俺が望んでいる事なんて聞かれた事も無かったし口に出した事もなかった……
「…………」
「お前の望みはないのか?」
「あ、あります………」
「何だ?勿体振らずに言ってみろ!」
「…………えっと……」
王様に抱き締められながら、お父様と目が合った。
お父様は王様と俺のやり取りを聞きながら、俺が自分の望みを言うのを待っているように優しい目をしてうんうんと頷いていた。
「私は……私の望みは、働いてお金を貰って、そのお金で欲しい物を買ってみたいです。
そうは言っても俺はこんな髪と瞳ですし、普通の働き口が見つかるかどうか……それに男娼と子守りと畑仕事しかした事がなくて……計算も苦手ですし、まだ熱があって何言ってるんだかと思われるでしょうけど」
エヘヘっと。
そんな事が俺の小さい時からの夢だった。
普通の人なら出来る事だから恥ずかしかったけど、なぜか正直に口にしてしまった。
しかも王様に。
自分で言ってしまった内容に、恥ずかしくなって笑って誤魔化してしまったのは許して欲しい。
「…………そうか」
だけど王様は俺の言った事にもちゃんと笑わないでくれてホッとした。
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