29 / 33
ウェイの家
14王様に抱っこされる
しおりを挟むは……はは……それなのにお父様は髪や瞳だけで俺をハオランなんて……本当の子供の様に扱って……最近の俺は何だかその気になってしまっていた。
そう思ったら王様の前で奴隷の俺の姿を晒してしまった事が途轍もなく無礼な行為だったと居た堪れなくなって、とうとう自分から目を逸らして俯いてしまった。
お父様達……王様と全然似てないのに俺に振り回されて守ってくれてごめんなさい。
俯いてしまったのに、王様はすかさず俺の両肩に手を置いて顔を近づけて俺の顔を隅々迄覗いてきた。
王様の背後ではお父様とチェン様が王様の身体を掴んで離れろと言わんばかりに引っ張るが、そんなに強く引っ張っている訳ではなくて王様に配慮しているみたいだった。
リー様は俺が王様に見える位置に移動してからも剣は構えたまま鋭い目を王様に向けていた。
「お前がハオランか」
俺の顔を見ながら初めて王様が俺に声をかけた。
俺はハオランだけど……本当にハオランかと言えば良く分からない。
王様にもお父様にもそんなに似てない俺は一体何者何だろう……なんてな。
本当は知ってる。
自分が奴隷だって分かっている。
「……ハオランと言われておりますが……本当は違うかも知れません。私は自分が本当にハオランなのか良くわからないままここで生活をしています……」
そう正直に言ってみた。
もうこんな偉い人の前では小さな嘘でも冗談でもつけそうにない。
すると、王様は俺を見続けながらフッと初めて笑った。
「ふふっ確かにお前はハオランだ!!15年振りに会ったな。どこに隠れていたんだ?探したぞ!!」
そう言って俺を抱き上げられてしまった。
えっ?今王様が俺をハオランと確信するような要素があったのか?
王様は俺と瞳以外にも姿や顔がもっと似ていると思っていたのに実際には全然違っていて……やっぱり違うじゃんと……そんな上手い話が世の中にある訳がないよな……と思っていたのに。
それなのに王様もお父様達と同じで俺がハオランとして認めてくれるのか?
「ジン様、ハオラン君は微熱が続いています。こんな場所では体調が悪くなるから一度部屋に戻りませんか?」
「そうだ。ハオランがもっと元気になってからと思っていたのに」
「ジン様、ハオラン様はチェン先生の診察を受ける必要があります。一旦ハオラン様と部屋に戻りましょう」
お父様達が変わるがわる王様に話していた。
先程迄王様と怒鳴り合っていたのに今はとても気安く話しかけていて……お父様達は王様と喧嘩もできる位深い仲なんだとやっと理解した。
ーーーーーーー
「えっと……あの……王様?自分で歩けます……」
何故が王様が俺を抱き上げたまま家に向かっている。
自分の両手の行き場はなくて、何故が王様の首に両手を回している状態だ。
俺と王様が先頭でその後ろにお父様達が控えて歩き、またその後ろに王様の護衛が何人かついて来ている。
俺が自分で歩けるとボソッと王様に言って見たものの……王様は笑ったまま俺を離してくれる事はなく、そのまま大股で家に向かって歩いていた。
どうしたものかとお父様達に助け船を出してもらえないかという訴えで目線を送ってみたのに、今回は3人共顔を横に振って「あきらめろ」と言わんばかりだった。
いつもお父様達は俺を全力で助けてくれるから最近の俺も甘えてしまっている。
だけど王様の前だと流石に何も出来ないという事なんだろう。
この王様の前では俺も大人しくしていよう……。
7
お気に入りに追加
2,043
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜
楠ノ木雫
ファンタジー
孤児院で暮らしていた女の子リンティの元へ、とある男達が訪ねてきた。その者達が所持していたものには、この国の紋章が刻まれていた。そう、この国の皇城から来た者達だった。その者達は、この国の皇女を捜しに来ていたようで、リンティを見た瞬間間違いなく彼女が皇女だと言い出した。
言い合いになってしまったが、リンティは皇城に行く事に。だが、この国の皇帝の二つ名が〝冷血の最強皇帝〟。そして、タイミング悪く首を撥ねている瞬間を目の当たりに。
こんな無慈悲の皇帝が自分の父。そんな事実が信じられないリンティ。だけど、あれ? 皇帝が、ぬいぐるみをプレゼントしてくれた?
リンティがこの城に来てから、どんどん皇帝がおかしくなっていく姿を目の当たりにする周りの者達も困惑。一体どうなっているのだろうか?
※他の投稿サイトにも掲載しています。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。
白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。
僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。
けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。
どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。
「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」
神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。
これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。
本編は三人称です。
R−18に該当するページには※を付けます。
毎日20時更新
登場人物
ラファエル・ローデン
金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。
ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。
首筋で脈を取るのがクセ。
アルフレッド
茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。
剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。
神様
ガラが悪い大男。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる