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ウェイの家
13俺と王様
しおりを挟む一際大きな身体の人がお父様とチェン先生を飛び越えてリー様に向かって叫んでいた。
リー様の後ろにいる者って……俺じゃないか……
「なりませんっ!!」
人を圧倒する様な相手の叫び声ににも関わらず、リー様は毅然とした態度でそう言い返していた。
「何だと!!お前は殺されたいのか!!」
だが大きな姿の人は更に激高してリー様に怒鳴った。
「………いつでもその覚悟はできておりますが、果たしてこの場に私を殺せる者はいるのでしょうか」
それでもリー様は落ち着いた低い声で言い返す。
「……………」
さっき迄怒鳴り合っていたのが、膠着状態になって束の間の静けさに包まれた。何故か妙に川の音が大きく聞こえる。
……この状況ってきっと俺のせいだよな……。
この大きな人は俺を出せって言ってた。
もしかして、お父様もチェン先生もリー様も俺が知らない所で俺の事を沢山護ってくれてたのかも知れない。
俺がここで生活するものだから……。
俺は一緒にいたいけど、もし俺が3人の迷惑になるのだったら一緒に生活するのを辞退したっていい。
そうだ。そんな事を考える程3人には短い間だったけど良くして貰ったし、お世話になった。
だからこの3人が俺のせいで困った事になるのだけは嫌だと思う位には絆されてしまっている。
リー様の身体に隠れて何も出来ない自分が何とも情けない。俺が原因なら俺が出て行った方が良いのかも知れない。
「リー様、俺のせいみたいで迷惑を掛けてごめんなさい」
俺はリー様の背後から少し顔を出してその場を覗いてみた。
すると、さっき迄叫んでいた大きな身体の人と目が合ってしまったが……その顔に驚いてしまった。
目が、目が!!俺と同じ色だ!!
すると相手の人も俺の顔を見て予想外の出来事が起こったかの様に驚いた顔をした。
辺りは静まり帰っていて、さっきから川のせせらぎの音がやけに大きく聞こえてくるし、鳥の鳴き声もよく聞こえてきた。
同じ色の目をした人と目が合ってから時が止まったかの様に皆んなが動かない。けれどお父様達から話は聞いていたから分かってしまった。
この方はこの国の王様でジン様だ。
ジン様が何を思ったのか、ハオランが本物かとどうかわざわざ俺に会いに来て下さったのかな……
そうしたら俺は……挨拶しなければならないのか、それとも王様から声を掛けられるまでは話してはいけないのか……
身分が高いお父様達は俺のやる事はあまり注意とかしなくて身分の高い人達の対応は実は何が正しいのか分からないし、この方はそれ以上の身分どころか、この国の1番偉い人。
俺のせいで3人が殺される様に裁く事が出来る人なんだ。
目を合わせてから逸らす事ができなくなって随分と沈黙の時間が経過した気がする……。
その沈黙が居た堪れなくなってきて、挨拶した方がいいのかなと思えてきた。
失礼な事だとしても、お父様達が俺を庇って罪になる事よりはマシじゃ無いかな……
「あ、あの……この国の王様初めまして。お父様のウェイ
様の子供として引き取られましたハオランです。何も証拠はないのですが……」
目を合わせたまま俺がそう言うと、王様は表情がもっとびっくりした表情になって更に目を見開いていた。
「……おい、リー。そこをどけ」
王様が再度リー様に命令したら、リー様は俺が挨拶をしたからか、今度は黙って俺か王に見える位置に静かに移動した。
「…………」
ゆっくり王様が目の前にやって来た。
王様の身体はとても大きくて……髪の色は真っ黒だった。黒い髪にエメラルドの瞳がとても良く似合っていた。
顔も整っていて男らしく精悍な顔つきで、……物凄くかっこよかった。
似てない……。
俺の顔はずっと女っぽい顔で、今は痩せていて髪も長く女みたいだった。
お父様の話だと俺はこの王様の妹の子供である筈で……俺は亡くなったお母様に似ているって聞いていた。
その兄の王様は瞳も同じ色だって言うからもっと姿や顔も似てると思っていたのに、全然俺と姿も顔も似てなかった。
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