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ウェイの家
6本当の親子?
しおりを挟むシ……ン
また部屋に静寂が訪れた。失敗だ……俺が娼館の話をするとこうなってしまう事ばかりだ。
ウェイ様を見ると悲しそうな顔をしていたので理想のハオランに中々なれなくて冷や汗が出てくる。
ハオランのお役目がなくなったら俺はこの家から放り出される可能性もあるんだから失敗ばかりでとても焦っていた。
「すみません。私はまだ……ウェイ様が思う様なハオランにはなれてないかもしれません。
本当に私は愚かで……何度も話す事を間違えてしまうのです。
私にはまだハオランの事が完全に理解出来ていないのです。
ですがっ!!……ハオランがどんな人物だったのか詳しく教えて下さればもう少し出来る様になると思いますから!!
どうかまだ見捨てないで下さい!!」
また俺はベッドの上で平伏して部屋にいる3人に謝った。
本当に何度も謝ってばかりでウェイ様が折角大金を支払って俺を身請けしたのに失望されたらどうしよう。
そうなればどうやって生きていけば良いか分からないし、俺のこんな髪と瞳の色で体力も無くなってしまった自分。
普通の働き口がこの誰も知らない土地で見つかるのだろうか……それか、また元の娼館に戻されるだけだ。
だから焦ってそう言ってみるとこの部屋にいたウェイ様もリー様も医師のチェン先生も今度は泣いてしまって混乱する。
「えっ……?」
この状況はどういう事だと考えていると、ウェイ様が俺をまた抱き締めてきた。
「ハオラン!!ハオランは君なんだよ!!私が思うハオランなんていないんだ。だって君こそがハオランだから!!ああ……どうしたら分かって貰えるのだろうか……君と私は本当の親子なのに。早くジンに合わせたら分かって貰えるのだろうか」
「えっ?本当の親子?お父様は私を本当の親子にしたいのですか?」
そう言うと3人はギョッとして俺を見た。
そしてまだハオランに何にも話てないのかとウェイ様がリー様とチェン先生の2人から責められていてウェイ様はしどろもどろになっていて……
今迄のやり取りを見ていると立場的にはウェイ様が1番高い位の方だと思ったのに今は……そうじゃないかもしれないと思った。
それからの3人は俺を見つけるまでの話をしてくれた。
ウェイ様と俺が本当の親子だという事、俺の母は王族の血が流れており、俺は誘拐されて見つけ出す為にこの国を王が鎖国した事、ウェイ様が15年間俺を探し続けていた事を話してくれた。
「でも…わ、私は……でもこんな髪で、瞳で……身体も細く、とてもウェイ様とは似ても似つきません」
「ハオランは王族の血が流れているんだよ。正確に言うと隣国の王女だったお祖母様だ。彼女は隣国から嫁いできた王女で金の髪色にエメラルドの瞳だったんだよ。丁度今のハオランとそっくりだ。身体が細いのはしっかり食べたら変わってくるかもしれないよ。」
「私と一緒……?このように髪も明るく、瞳も皆と違う方が私以外にも王族にいらっしゃったのですか?」
「そうだよ。そもそも我が国以外の国には色々な色をした髪や瞳の色をしている者が沢山いるんだ。
ただ、今のこの国には君を見つけ出す為に王が鎖国を続けているから今では君と王であるジンしかエメラルドの瞳の者はいないと言う訳だ。
ハオランが産まれた時に王も私も君が産まれた事をとても喜んだ。金色の髪にエメラルドの瞳の素晴らしく可愛い赤ん坊だったんだ。今はその頃より少し髪色が変わったね。
大人になると少し髪色が暗くなる事はよくある事だし、よく見ればこの指の形や鼻筋ははっきり私に似ている!!
ハオランは王族の血が濃く出たが、私の血がちゃんと入っていると思うと嬉しくなるよ!!」
ウェイ様はそう言って俺の顔を間近でずっと見てくる。そんなに俺を見ても何にも得なんかないのに……産毛でも数えているのかな……あんまりじろじろ見られると恥ずかしくなった。
ウェイ様はそんなに俺を見て飽きないのか……。
それに俺は王族の血なんか入っている?……本当に?王様が俺と同じ色の瞳だって??
俺は騙されていないか……話がぶっ飛び過ぎてどうしても信じられない。
それに……俺はこの髪と瞳の色のせいでずっと辛かったのだ。
毎日汚い色だと、気持ち悪いと……ずっと言われて来たのに今更王家の血が入っているなんて言われたって、じゃあ何故俺はこんなに汚いとか気持ち悪いと言われて生きて来たのかと言いたい。
「私は……私は本当にウェイ様の息子なのですよね?」
「勿論だよ。ハオランは私の息子だ!!分かってくれたかい?」
「だったら私はウェイ様の様に黒い髪と黒い瞳の人間に産まれたかったです……どうして私はお父様に似なかったのでしょう?
私は誰にも似ていないこの髪と瞳の事でずっと嫌われて、気持ち悪がられて生きて来ました。
出来るなら……出来る事なら……お父様に似て産まれたかった!!」
完全には信じられないけれど、俺がもし本当にウェイ様の息子だとしたら黒髪で黒い瞳になっていた可能性だってあったのだ。
もしそうだったら……同じ孤児でも汚いとか気持ち悪がられずにいじめられる事だって少なくて、身体も大きくなって、働き口も見つかって……今よりもっと生きやすかった筈なのに。
ずっと村人と一緒の黒髪と黒目に憧れて生きてきた。
だけどそんな事を今まで何度考えたって泣いたりする事なんてなかったのに、今日はなぜか大声を出して泣いてしまった。
ウェイ様……俺のお父様はまた俺を抱き締めてくれた。
分かっている。決してウェイ様のせいではないのは分かっていたが、自分の境遇の不運さに抱き締めた手を拒絶したくなって
「離してっ!!」
と俺は奴隷の癖にウェイ様の胸を思いっきり推した。何度も押した。なのにずっとウェイ様は俺を離してくれなかった。
俺の押す力が弱いので、いくら押してもウェイ様に叶う筈はない。
仕方なく諦めてそのままウェイ様の胸の中で疲れて眠る迄泣き叫んでしまった。
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