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初老の男性side
4彼を発見
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「すみません。すみません。お許し下さい。まだ掃除が終わっていません。血がまだ止まらなくて……怠けていた訳ではありません」
背中だけしか見えなかったが、身体の色は通常の国の民よりも白かった。
そして至る所に火傷の痕や切り傷、打たれた痕がついていてとても痛ましかったのだが、奴隷で男娼ともなるとこんな事は日常茶飯事の事でこの国の闇の部分でもある。
髪の色は明るい金髪ではなかったが、この国にはいないブラウンゴールドだった事に非常に驚いた。こんな明るい髪の色を見たのは赤ん坊とイーラン以来か……それだけでもこの国では殆どいないのだ。
多分日の光加減によっては明るい金色にも見える程の色だ。
もうこれだけでハオランで間違い無いかも知れない……もっと彼を近くで見たい。私はそう思いながら膝をついて「顔を上げてよく見せて欲しい」と言うと、俯いたまま四つん這いになっていた彼は私の方を向いてくれた。
その見せてくれた顔に驚愕する。
その顔は痩せていたが王の妹のイーランそっくりだった。イーランは金色の髪に茶色の瞳だったから。それよりも彼のお祖母様の方が似ているかもしれない。隔世遺伝というのか。
そして瞳の色は……お祖母様と王のジンと同じエメラルドの色をしていた。
15年振りに王のジン以外に見たエメラルド色の瞳。
ここにいたのか……君はこんな処に……何と惨い。
思わず抱き寄せて泣き出したくなった気持ちをグッと堪えて声を殺した。
娼館の係の者が
「こいつですけど……本当にこいつなんかで良いんですか?こんな髪と瞳も変な色ですし、こいつの尻の穴はゆるゆるになっていて評判が悪いんですよ。貴方ならもっと綺麗で具合のいい男娼を勧められますぜ」
と言ってくる。
怒りで我を忘れそうになり、殴ってやりたい気持ちだったが、まだだ。まだ駄目だ。
ここで私の気持ちと目の前にいる彼がどんな人物なのかを悟られるのは得策じゃない。
気に入ったからと身請けの話をする。
係の者が渋りながら金額を言ってきたので、その金額に色をつけて支払ってやると喜んで身請け用の服を持って来た。
「服を着せてやれ」と指示すると、係の者が彼に対して乱暴な態度をするものだから注意をしたのだが、係の者はヘラヘラと笑っていた。それを見た時には、自分の怒りで叫び散らかしたい気持ちを落ち着かせるのに必死だった。
ハオラン……彼は今一体自分に何が起こってきるのかと状況を把握するのに精一杯の様子で、顔には困惑と戸惑いの表情が見て取れる。
彼が今にも倒れそうだったので腰に手を回して支える。こうすれば娼館の者達にも彼を気に入って身請けにしたのだろうと変な疑いをかけられずにすみそうだ。
不安そうな彼を連れてゆっくり馬車に乗せて出発した。
馬車は走りだして暫く経過してから、やっと彼を落ち着いて眺められる。
やっと彼に優しく出来ると思って彼の方を見ると、疲れからか頭が船を漕ぎそうな処を必死になって起きようとしているのが微笑ましかった。
優しく「寝ていいよ」と言ったら、眠気に勝てなかったのかそのまま寝てしまったので頭から転倒しない様に肩を抱き寄せた。
肉があまりついていない肩で強く掴んだらあっという間に壊れそうだ。こんな傷まみれの身体で……よくぞ生きていてくれた……
この国の王の妹イーランの息子ハオラン。
そして我が息子よ。
いつの間にか私は嗚咽を漏らしながら涙を流していた。
背中だけしか見えなかったが、身体の色は通常の国の民よりも白かった。
そして至る所に火傷の痕や切り傷、打たれた痕がついていてとても痛ましかったのだが、奴隷で男娼ともなるとこんな事は日常茶飯事の事でこの国の闇の部分でもある。
髪の色は明るい金髪ではなかったが、この国にはいないブラウンゴールドだった事に非常に驚いた。こんな明るい髪の色を見たのは赤ん坊とイーラン以来か……それだけでもこの国では殆どいないのだ。
多分日の光加減によっては明るい金色にも見える程の色だ。
もうこれだけでハオランで間違い無いかも知れない……もっと彼を近くで見たい。私はそう思いながら膝をついて「顔を上げてよく見せて欲しい」と言うと、俯いたまま四つん這いになっていた彼は私の方を向いてくれた。
その見せてくれた顔に驚愕する。
その顔は痩せていたが王の妹のイーランそっくりだった。イーランは金色の髪に茶色の瞳だったから。それよりも彼のお祖母様の方が似ているかもしれない。隔世遺伝というのか。
そして瞳の色は……お祖母様と王のジンと同じエメラルドの色をしていた。
15年振りに王のジン以外に見たエメラルド色の瞳。
ここにいたのか……君はこんな処に……何と惨い。
思わず抱き寄せて泣き出したくなった気持ちをグッと堪えて声を殺した。
娼館の係の者が
「こいつですけど……本当にこいつなんかで良いんですか?こんな髪と瞳も変な色ですし、こいつの尻の穴はゆるゆるになっていて評判が悪いんですよ。貴方ならもっと綺麗で具合のいい男娼を勧められますぜ」
と言ってくる。
怒りで我を忘れそうになり、殴ってやりたい気持ちだったが、まだだ。まだ駄目だ。
ここで私の気持ちと目の前にいる彼がどんな人物なのかを悟られるのは得策じゃない。
気に入ったからと身請けの話をする。
係の者が渋りながら金額を言ってきたので、その金額に色をつけて支払ってやると喜んで身請け用の服を持って来た。
「服を着せてやれ」と指示すると、係の者が彼に対して乱暴な態度をするものだから注意をしたのだが、係の者はヘラヘラと笑っていた。それを見た時には、自分の怒りで叫び散らかしたい気持ちを落ち着かせるのに必死だった。
ハオラン……彼は今一体自分に何が起こってきるのかと状況を把握するのに精一杯の様子で、顔には困惑と戸惑いの表情が見て取れる。
彼が今にも倒れそうだったので腰に手を回して支える。こうすれば娼館の者達にも彼を気に入って身請けにしたのだろうと変な疑いをかけられずにすみそうだ。
不安そうな彼を連れてゆっくり馬車に乗せて出発した。
馬車は走りだして暫く経過してから、やっと彼を落ち着いて眺められる。
やっと彼に優しく出来ると思って彼の方を見ると、疲れからか頭が船を漕ぎそうな処を必死になって起きようとしているのが微笑ましかった。
優しく「寝ていいよ」と言ったら、眠気に勝てなかったのかそのまま寝てしまったので頭から転倒しない様に肩を抱き寄せた。
肉があまりついていない肩で強く掴んだらあっという間に壊れそうだ。こんな傷まみれの身体で……よくぞ生きていてくれた……
この国の王の妹イーランの息子ハオラン。
そして我が息子よ。
いつの間にか私は嗚咽を漏らしながら涙を流していた。
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