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しおりを挟む「じゃあそういうあらすじでお願いね」
「酷いな……」
「えっ?何か言ったかしら?貴方は言われた通りにすればいいのよ。お金で殺し以外は何でもやってくれるんでしょ!!」
「……ああ…」
ーーーーーーーーー
この国には人の心を掻き乱すのが大好物な魔女がいた。
王族や貴族が通う王都学園に男爵の娘と偽って入学し、魅了の魔法を使って、婚約者のいる貴族男性を次々と自分に夢中にさせていったのだ。
貴族男性の婚約者だった女性達は男爵の娘を非難するが、男爵の娘に変装している魔女は非難される時になると、決まって彼女達の婚約者が偶然居合わせる様に誘導し、自分がいじめれらている可哀想な人を上手く演じるのだ。
男性は虐めている自分の婚約者に怒り、婚約破棄を言いつけたりする者が次々と現れ、学園内は大混乱になった。
「ふーーー人の欲望に晒されるって疲れるな…」
俺は自分が設定した魔女が扮する男爵の娘の変装魔術を解いてそう呟いた。
俺はクリス。フリーの魔術師だ。
元々孤児だったけど、魔力が高かったので田舎の名ばかり男爵だったトム爺ちゃんが俺を養子として育ててくれた。
優しくて魔術師の学校にも通わせて貰ったし、俺の生まれた孤児院の子供達の事もずっと気にかけてくれた立派なトム爺ちゃん。
しかし、とうとう老いには勝てず3年前に亡くなった時には、男爵領の人々や成人して立派に成長した元孤児達など沢山の人々に見送られながら旅立って行った。
そして俺は男爵となり孤児院の見守りも引き継ぐ事になった。
男爵と言っても管理する領地も小さいから、自分で稼ぐしかない。
フリーの魔術師は男爵領の領地経営と孤児院を見守りながらできるのでありがたい仕事だ。
そして今は依頼を受けて魔女が女装をして王都学園の男爵の娘となりすますという設定で学園に先入しているのだ。
ここでは卒業と同時に婚約者と政略結婚すると決まっている男女が多い。
だからこの学園は独身最後の自由という事もあり、婚約者がいるにも関わらず禁断の恋を燃え上がらせてしまう男女も大変多いらしい。いい気なもんだ。
そんな時に俺の役目は依頼者の女性に出来るだけ非がない様な形で婚約破棄を婚約者に突きつけて貰うように誘導するのだ。
俺が男爵の娘になりすまし、魔女伝説の話を折り込みながら仕事を成功させていくと女性達の口コミで静かに広がり仕事の依頼が途切れない。
依頼者は女性ばかり。女って怖い。
自分の方が真っ先に他の男性と恋仲になってるのに、婚約者の方が悪かったように仕組んで婚約破棄をしてもらうとはね……
まあ婚約者もそんな相手と結婚しなくて良かったじゃんといつも心の中で呟く。
そして今回の依頼は……なんと大物が釣れた。
第2王子の婚約者である公爵の娘だ。それが冒頭の話である。
聞けば留学してきた隣国の王子が好きになってしまい、どうしても結婚したいのだという……
あーあ……第2王子も可哀想に……
俺は孤児院の子供達も心配だし、報酬額も他の貴族とは比べられないほど良い金額だったので、依頼を受ける事に決めた。
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