【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編9

99僕の婚約者

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「えっ?」

「えっ?」



 一瞬時が止まったかと思った。


 僕は陛下に呼ばれて、僕の身に起こった出来事の話をしていたんだ。

 あんなに不思議な出来事をどうやったら信じて貰えるのか分からなかったけど、陛下はそんな僕の話を真剣に聞いて下さった。

 エディは陛下を前にすると人間みたいに頭が良いのでもしかして陛下に対して偉い人だと感じるのだろうかと思ったけれど、全く動じる事がなくてむしろ堂々とした姿にやっぱり猫だもんなと思ったものだ。

 しかし、やっぱりエディは人の感情を理解している出来事があって、陛下が僕の話で泣き出してしまった時、何と!!陛下の側に行き、肩を優しくトントンしていたのにはビックリしたけれど……。


 しばらく話を続けていると興味のそそる物はこの部屋に無くなったのかエディはノソノソ僕の膝の上に登り、身体をダラーンと伸ばし始めた。こういう時のエディは何でこんなに伸びるのだろうという程身体が長くなる……。


   さながらその格好は黒くて高級な膝掛けににしか見えなくて、しかも肌触りも良くとても暖かい。
   エディは万歳したまま頭は落ちているし、お腹だけ僕の膝の上で、足はまた膝下に落ちている……本当によくこんな柔軟な姿勢ができるよ。

 両手も上げるその伸びた姿勢はエディによる「お腹を掻いて」の合図。僕が勉強中にたまにエディにされているから慣れてはいた。


 陛下と会話している前で?……と思いつつ、猫の気まぐれに人間の事情は関係ないものな……と考え直し、できるだけカキカキしてあげていた。


 それなのに陛下が本の呪文を唱えた瞬間、エディの身体が光り出し、急にエディが大きく重くなってしまって僕は支えるのに必死になってしまったんだ。

 座っていたソファからもはみ出す程の大きさにとうとうエディを支えきれず僕諸共ソファから崩れ落ちてしまった。


 ドタ!!ガダンッ!!

    いたたっ!!

 大きくなっても猫だからエディなら僕を踏み台にジャンプするか、受け身ができるだろうと思っていたのに一緒にソファから落ちてしまったみたいだ。


「ううっ……いたたた……エディ大丈夫?急に重くなって……えっ……はっ??」

「えっ?」


 僕は両手を万歳しているでっかくなったエディと目があった。しかし……そこにいるのはエディじゃない……えっ??

「えっ?」

「えっ?」


 相手も目を丸くして僕を見て驚いている。
 エディみたいな黒髪で青い瞳の彼を僕は昔から知っている。でも僕が知っている彼よりまた随分と身長も伸びてお顔も凛々しくなっていらっしゃるが……


「ア……アン……ドル……」

 この声……少し擦れているけれど、聞いた事のある懐かしい声だ。

「エ、エ、エド……ワード王子!!……あえっなぜ……」


 陛下が目の前にいるのも関わらず、僕とエドワード王子は見つめ合ったまま何て言って良いか……お互い言葉を失っていたんだと思う。

 そ、そうだ!!此処は陛下の目の前!!

 ハッとして陛下の方を見ると、僕達の方は一切見ておらず国王陛下なのに頭を抱えて突っ伏していた。


 ああ……これは陛下の唱えた呪文のせいだと思うけど、陛下も両手を万歳した全裸のエドワード王子が僕の上に乗っかって現れるなんて想定外だったんだ。


 突然の出来事に頭が働かないけれど、とりあえず万歳したまま全裸で現れて顔を真っ赤にさせてしまっているエドワード王子が不憫になり、僕の制服の上着をそっとエドワード王子の下半身にかけてあげてから跪いた。

「エ、エドワード王子、お久しぶりでございます。アンドルです。突然の出来事に驚いてしまい、ご挨拶が遅れて申し訳御座いません」

 エディが何処に行ったのか分からないが、今はそれどころじゃない。エドワード王子が!!何年も会えなかった僕の婚約者が今目の前にいるっ!!

 跪きながら色々な記憶が絡まっている僕の頭の中を今のうちに整理しないといけない。僕の膝の上には確かにエディがいた筈なんだ。
   いつもの様にダラーンと身体が伸びまくったエディは先程まで僕にお腹をカキカキされてウットリさせていた。

 それが……陛下が呪文を唱えた瞬間、エディの身体が光り出してエドワード王子に変わったんだ!!

 そもそも何故、陛下は僕の飼っている黒猫の事情を知っていた?侯爵家以外には姿が見えない黒猫の存在なんて普通はご存知ない筈なんだ。

 万歳全裸の状態のエドワード王子に視線を向ける事は不敬にあたると思い、陛下の方を見て質問をした。

「あ、あの……陛下……陛下にお伺いしたい事があります」

 そう言うと頭を抱えて突っ伏していた陛下はすぐに頭を上げ「アンドル、君の質問したい事は分かっている。今からエドワードと一緒に説明するから聞いてくれないか……?」

 と、陛下が僕にそう言えばエドワード王子も姿勢を正して僕に挨拶してくれた。


「アンドル……私がこの姿で君に会うのは久しぶりだな。上着をかけてくれたアンドルの気遣いに感謝する。だが、随分と裸にも慣れてしまったんだよ?…………私は……エディだ」


「……はっ?………うえええっ!!!」


 僕はよく人形みたいな顔と言われてしまうけれど、この時の自分の顔は生まれてから1番の人間らしい変顔をしたと思う。少し白目も入ったらしいその顔は陛下も王子も驚いていたんだから。


 それから僕は………国王陛下と……エドワード王子から驚愕の事実を知る事となった。



ーーーーー
明日も投稿予定です。
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