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〜王子side〜6
96エドワード王子の油断1
しおりを挟む王族の呪いが解けてアンドルと一緒に元の世界に戻ってきたら私は元の姿に戻れると確信していたんだが。
「ゴロゴロ……」
(アンドルゥ、ミルクちょうだいな)
「エディ、ミルクが欲しい?ちょっと待っててね!!」
ゴロゴロと鳴けばアンドルは私の言いたい事が伝わって、私の為に新しく購入した哺乳瓶でミルクを用意し始める。
私はこの世界に戻ってきても羽根の生えた黒猫の姿のまんまだった。
それどころか子猫に逆戻りだ。
その時の事はあまり覚えていないが、アンドルに抱き締められて元の世界に戻った時は全身血だらけになっていた為、アンドルが甲斐甲斐しく毎日手当てをしてくれていた。
随分と身体が弱ってしまい、元の大きさと健康状態が完全に戻るまでにはほぼ一年もかかってしまったんだ。思ったより内臓の損傷もあったかも知れないな。
現在はアンドルには内緒でどこでも駆け回る事ができるのだが、お世話されたくてアンドルの前ではまだまだ調子が悪いフリを続けている。
アンドルはやっぱり可愛いし、いつでもアンドルのそばにいれる黒猫のままでもいっかな。
……ってそんな事思っている訳ないだろうが!!
何故私は黒猫のままなんだ!!
こんな事おかしいだろうがっ!!
アンドルが言っていたぞ!!
「エディのお陰で呪いが解けてアンと王族全員が輪廻の流れに戻ったんだよ。多分エドとエドの兄も。魔石は割れたのを確認したよ。エディは一体どうやったの?」
って!!
呪いは解けたんだろう?それなのに何故私だけ黒猫のまんまなんだ!!
おいっ呪いめ!!ふざけるなっ!!
ふざけるなああああーーーヌグワアアアーーー!!
「エディ!!もうっ空腹だからってジタバタしないの。ミルクが遅くなってごめんごめん、今あげるからね」
チュパチュパッ
「うふふっ本当にエディはミルクが好きなんだから。でもその食欲のお陰で身体も随分と良くなってきたね」
「ゴロゴロ……」
(待てアンドル、まだ調子が悪いからもっともっと沢山お世話をしておくれ。)
「飲み終わったね。じゃあ……そろそろ寝よっか。フワァ……おやすみエディ」
ぎゅうっとアンドルに抱きしめられておやすみのキスをされてから私達は寝る。
あー幸せ。
って……違う違う!!
とにかく何故私の身体が元に戻らないんだ??
アンドルが寝静まった夜中にモソモソと起き出し、私のこのフラストレーションを解消する為に、小さなアンドルと最近気になるあの子に会いに行く。
最近のアンドルはすくすくと成長しているせいか少し大きさに余裕のあるパンツを履いてくれるようになった。
パンツはゴムが入っている腰から潜らなくても足の付け根側からすんなり潜り込める様になり、前よりもパンツの中へ行き来がスムーズになったのだ。
(王子~最近はいつもお顔が不貞腐れていますねぇ~)
(ああ、小さなアンドルよ、君は私の事をよく分かっているね。そうなんだよ。大きなアンドルは優しいし現状には不満はないんだが……分かってくれるか?)
(王子を見れば分かりますよ。僕は王子とどれだけ長い付き合いだと思っているんですか?うふふっ少しでも僕で王子の心を癒せるなら癒していって下さいね)
(小さなアンドルよ……やはり私には君しかいない)
小さなアンドルは色々な経験を経てここに小さなスナックをオープンさせた。
オープン前から携わっている私はそのスナックの常連客だ。
狭いパンツの中だけの極小空間だが、何故だかここに来ると懐かしくなったり、安心したりととにかく心が落ち着く場所だった。
これも小さなアンドルから滲み出る人柄の良さなのかも知れない。
(ふふっ僕も王子しかいませんよ。でも貴方には他に良い人ができたみたい)
ギクッ……
小さなアンドルは微笑んだままそれとなく自分の胸の内を私に伝えてきた。
勘づいていたか……先程まで優しくて癒されていたその微笑みに少しゾクッとしてしまう。
(うっ……ち、違うんだ。本当に違う。これは……前にも言ったが、私は小さなアンドルの事がずっと好きなんだ。……だが……)
(分かってますよ。違うんですよね?……用途が)
(はは……ははは……小さなアンドルは全てお見通しだなぁ)
小さなアンドルは昔の様に私の不貞を疑っていても、もう取り乱したりしなかった。呪いの件では私の知らない経験もしたんだろう……精神的にも一回り強くなっている気がした。
(僕も色々な人生経験を積んでますから、もう小さな嫉妬心なんて無くなりましたよ。それに王子が僕を好きなのは変わらないんですもんね?)
(ああ!!勿論だ!!一生君の事を愛している)
(それだけで僕は幸せなんです。さあっそろそろあの子に会いに行くんでしょ?)
(……お前にはいつも気苦労ばかりかけてすまない……じゃあ行ってくる)
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明日も投稿予定です。
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