【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

文字の大きさ
上 下
96 / 124
〜王子side〜6

96エドワード王子の油断1

しおりを挟む
 
 王族の呪いが解けてアンドルと一緒に元の世界に戻ってきたら私は元の姿に戻れると確信していたんだが。


「ゴロゴロ……」
(アンドルゥ、ミルクちょうだいな)


「エディ、ミルクが欲しい?ちょっと待っててね!!」


 ゴロゴロと鳴けばアンドルは私の言いたい事が伝わって、私の為に新しく購入した哺乳瓶でミルクを用意し始める。


 私はこの世界に戻ってきても羽根の生えた黒猫の姿のまんまだった。
 それどころか子猫に逆戻りだ。


 その時の事はあまり覚えていないが、アンドルに抱き締められて元の世界に戻った時は全身血だらけになっていた為、アンドルが甲斐甲斐しく毎日手当てをしてくれていた。


 随分と身体が弱ってしまい、元の大きさと健康状態が完全に戻るまでにはほぼ一年もかかってしまったんだ。思ったより内臓の損傷もあったかも知れないな。

 現在はアンドルには内緒でどこでも駆け回る事ができるのだが、お世話されたくてアンドルの前ではまだまだ調子が悪いフリを続けている。


 アンドルはやっぱり可愛いし、いつでもアンドルのそばにいれる黒猫のままでもいっかな。


 ……ってそんな事思っている訳ないだろうが!!


 何故私は黒猫のままなんだ!!

 こんな事おかしいだろうがっ!!


 アンドルが言っていたぞ!!

「エディのお陰で呪いが解けてアンと王族全員が輪廻の流れに戻ったんだよ。多分エドとエドの兄も。魔石は割れたのを確認したよ。エディは一体どうやったの?」

    って!!

 呪いは解けたんだろう?それなのに何故私だけ黒猫のまんまなんだ!!

 おいっ呪いめ!!ふざけるなっ!!

 ふざけるなああああーーーヌグワアアアーーー!!


「エディ!!もうっ空腹だからってジタバタしないの。ミルクが遅くなってごめんごめん、今あげるからね」


 チュパチュパッ


「うふふっ本当にエディはミルクが好きなんだから。でもその食欲のお陰で身体も随分と良くなってきたね」


「ゴロゴロ……」
(待てアンドル、まだ調子が悪いからもっともっと沢山お世話をしておくれ。)


「飲み終わったね。じゃあ……そろそろ寝よっか。フワァ……おやすみエディ」


 ぎゅうっとアンドルに抱きしめられておやすみのキスをされてから私達は寝る。


 あー幸せ。


 って……違う違う!!


 とにかく何故私の身体が元に戻らないんだ??

 アンドルが寝静まった夜中にモソモソと起き出し、私のこのフラストレーションを解消する為に、小さなアンドルと最近気になるあの子に会いに行く。

 最近のアンドルはすくすくと成長しているせいか少し大きさに余裕のあるパンツを履いてくれるようになった。
   パンツはゴムが入っている腰から潜らなくても足の付け根側からすんなり潜り込める様になり、前よりもパンツの中へ行き来がスムーズになったのだ。


(王子~最近はいつもお顔が不貞腐れていますねぇ~)

(ああ、小さなアンドルよ、君は私の事をよく分かっているね。そうなんだよ。大きなアンドルは優しいし現状には不満はないんだが……分かってくれるか?)

(王子を見れば分かりますよ。僕は王子とどれだけ長い付き合いだと思っているんですか?うふふっ少しでも僕で王子の心を癒せるなら癒していって下さいね)

(小さなアンドルよ……やはり私には君しかいない)

 小さなアンドルは色々な経験を経てここに小さなスナックをオープンさせた。
 オープン前から携わっている私はそのスナックの常連客だ。
 狭いパンツの中だけの極小空間だが、何故だかここに来ると懐かしくなったり、安心したりととにかく心が落ち着く場所だった。
 これも小さなアンドルから滲み出る人柄の良さなのかも知れない。


(ふふっ僕も王子しかいませんよ。でも貴方には他に良い人ができたみたい)

   ギクッ……

 小さなアンドルは微笑んだままそれとなく自分の胸の内を私に伝えてきた。
   勘づいていたか……先程まで優しくて癒されていたその微笑みに少しゾクッとしてしまう。


(うっ……ち、違うんだ。本当に違う。これは……前にも言ったが、私は小さなアンドルの事がずっと好きなんだ。……だが……)


(分かってますよ。違うんですよね?……用途が)

(はは……ははは……小さなアンドルは全てお見通しだなぁ)


 小さなアンドルは昔の様に私の不貞を疑っていても、もう取り乱したりしなかった。呪いの件では私の知らない経験もしたんだろう……精神的にも一回り強くなっている気がした。


(僕も色々な人生経験を積んでますから、もう小さな嫉妬心なんて無くなりましたよ。それに王子が僕を好きなのは変わらないんですもんね?)


(ああ!!勿論だ!!一生君の事を愛している)

(それだけで僕は幸せなんです。さあっそろそろあの子に会いに行くんでしょ?)


(……お前にはいつも気苦労ばかりかけてすまない……じゃあ行ってくる)



ーーーーーーーー
明日も投稿予定です。

しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

俺の婚約者は悪役令息ですか?

SEKISUI
BL
結婚まで後1年 女性が好きで何とか婚約破棄したい子爵家のウルフロ一レン ウルフローレンをこよなく愛する婚約者 ウルフローレンを好き好ぎて24時間一緒に居たい そんな婚約者に振り回されるウルフローレンは突っ込みが止まらない

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...