【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編8

94この世界が消えてく

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「アンドル!!アンディの事はエドから聞いたわ!!私ずっとエドを孫のアンディだと思って一緒に暮らしていたなんて馬鹿みたいでしょ。でもね、よく考えたらアンディの魂はちゃんと恋人と一緒にいる事ができて幸せだったんだと思ったの。それに呪いの影響がある私やアンディの姿が生まれない様にずっと侯爵家を守ってくれていたに違いないわ。私今度こそ孫のアンディに会って沢山お話する予定だからっ!!」

  
  そうか……アンは本当のアンディの魂がこの世界に来ていなかったって知ったんだね。

 アンは身体が消えながらも笑って一生懸命僕に伝えてくれていた。明るいアンの性格で僕がどれだけ救われたか……もっとお話をしたかったのに。

「アン……僕はアンに会えて本当に良かった。アンディに会えたら宜しく伝えてね」


「ええ勿論よっ!!ああ……王族達より私の方が先に魂が解放されたのね。王族の皆様、それではお先に失礼致します。それとアンドル、私は王族の人達が嫌いだったけど、エディの事は大好きだわ!!だからエディと末長く幸せになってね!!」


「あっそんな!!ア、アン、まだ行かないで!!」


 アンともっと沢山話したい事もあったのに何も話せないまま消えてしまって……本当に急なお別れしてしまった。
 時間がないと言って本当にすぐ居なくなってしまうなんて……。
 それに王族の人達が嫌いだったと消える直前に王族の人達の前で爆弾発言するなんて、ここにいる元王族達が苦笑いしているじゃないかっ!!

   
    最後は王族は嫌いだけどエディの事は大好きってどういう事?ああ……アンに質問したいのに消えてしまったからモヤモヤしてしまう。


 それでもアンとの突然のお別れが辛い……僕がこの世界で迷子になってから初めて優しく声をかけてくれたご先祖様のアン。


 僕が今自分にも失望して心が弱くなっている時に、エディだって瀕死な状態でうずくまっているのに……アンまで突然のお別れをする事になるなんて……辛いよ。

「うう……アン……うっ……うっ」


「アンドルさん、エドワードは無事だから安心して欲しい」

「うえっエドワード王子!!エドワード王子がここにっ!!ど、どこにいるのですか!!」

 その時突然若い王族から声をかけられたが、いきなりエドワード王子が今無事だと言うのでこの部屋にいるのかとキョロキョロ探してしまった。

 この部屋にいる沢山の男の人達は元はついても王族なんだから、この中にエドワード王子がいたとして何ら不思議では無いのかもしれない。
 しかしエドワード王子らしき人物はやっぱり何処にも見当たらなかった。


「そうか……そうだったな。アンドルさん、私はエドマイヤと申します。私とした事が名前を間違えて呼んでしまいました。
 アンドルさんの膝にいるエディは無事です。
 ちょっと頑張り過ぎたようで鼻の粘膜の弱い部分や、眼球周辺の毛細血管、それに身体全体の毛細血管などに負担がかかり、そこから一時的に血が滲んでしまったんです。
 安静にしていれば少しずつですが治りますので、手厚い看護をお願いします」


「あっ……エディの状態を詳しく診て下さったんですね!!有難う御座います!!良かった!!またエディが元気になれる事が分かっただけでも安心しましたっ!!」

 しっかりとエディの状態を丁寧に説明してくれた青年は僕か……もしくは僕よりも若い王族の青年だった。
 お名前は「エドマイヤ」と名乗って下さった。王族だろうが僕の中ではその名前には記憶はない。
 王族名鑑に載っているだろうか……しかし成人王族しか掲載されていないから探してもエドマイヤという名前は載っていないかも……それでも一応自分の世界に戻った時には調べてみよう。


「アンドルさんはエドワードの婚約者ですね。エドワードは貴方との将来の為に一生懸命頑張っています。中々会えない日々が続いていると思いますが、どうか見捨てずにいて貰えませんか……ずっと王族の使命を全うしているのです」


 エドマイヤさんがエドワード王子の事を伝えてくれている。今、エドワード王子と僕が会えていないのを知っているのか……?
 確かにどこかで繋がっているのかも……王族同士ならそんな事もあるかもしれない。

 それでエドワード王子は留学中に王族の使命を全うしていたなんて知らなかった。だからエドワード王子の情報が流れない様にしていたのか!!


 だけど……「見捨てずにいて貰えませんか」って……見捨てるとかの問題ではない。だって僕は……僕の方こそ……


「エドマイヤ様……僕は違うんです。……僕の方こそエドワード王子に見捨てられるべきなんです。」



  自分で自分の事をこんな風に伝えるのは辛いな。でも自分に向き合い、正直に答えなければ僕も次には進めない。


「…………アンドルさん……それは違います。ちゃんとエドワード王子としっかりと話し合って下さい。自分1人で勝手に決めつけてはいけません。必ず2人で解決すべきなのです!!そうでしょっ!!」


「えっ……」


「必ずエドワードと話し合うんですよ!!きっと納得いく答えが見つかる筈です!!」


「はっ……はい」


 エドマイヤ様の勢いと圧が強くて、押し切られる様に返事をしてしまった。しかしエドマイヤ様や他の裸の王族の人達は少しずつアンと同じ様に姿が消えかかっていく。

「必ずだよっ!!私はエドワードに感謝している。他の王族もだ。だからエドワードが幸せになるには君の力が必要なんだよ!!分かったね!!必ずだよ!!」


「え……はっ……わかりました」

 エドマイヤ様の姿はどんどん消えかかっているのに、本人の顔は嬉しくてたまらなそうな表情でずっと笑っていた。笑ったまま最後の時を待っているかのようだ。しかし最後に何かを思い出したかの様に僕に言った。

「アンドルさん、国王に伝えておいてくれっ!!「エドワードがやってくれた」となっ。それだけでいいからっ!!じゃあ……またいつかどこかの世界でまた会えるさっ!!エドワードと仲良くなっ!!」

「あっ……エドマイヤ様!!」

 エドマイヤ様は終始嬉しそうに消えていった。他の王族達も皆笑顔で手を振りながら消えていってしまった。呪いからようやく解き放たれたんだ。消えてしまったけれど、これは良かった事なんだよな……。

 辺りはもう薄暗くなってしまい、僕がいるベットと……魔石がある場所だけがほんの少しまだ明るい。魔石はこのままどうなってしまうのか……だけど僕は危険な魔石に近づいてはいけない。


「うわっ!!」


 気づかなかった!!
 まだ姿が消えていない男の人がいた!!砂の上に落ちている魔石の前で静かに佇んでいるこの男の人も王族なんだろうか……。

   しかし消えた王族の方達とは違い、1人だけヨレヨレの服を着ているし、腰は曲がってしまっていてかなり………何というか王族特有の威厳や威圧感が全くない人だった。その男の人はゆっくりと僕の方に振り向いたので目が合ってしまう。


「アンドルさん……私はエドの兄です。この度は私が元になった王家の問題に……永い永い刻を侯爵家にも被害を与えてしまい、申し訳ありませんでした」


「!!…………」



ーーーーーーーー
明日も投稿予定です。
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