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本編8
93僕が目を覚ますと……
しおりを挟むゆっくり寝ていたのに周りがなんだか騒がしい……
「う……うん……」
あれっ?僕は何してたんだっけ?
僕は目が開いていたままだったのか目が乾いて何度も瞬きをしてしまった。
天井には木目の模様と、自分の周りには何人もの男の人達が僕を覗きこんでいて本当にびっくりして声が出ないっ。
「!!」
その内の1人と目が合うと、目が合った男の人も僕の顔を見て驚いて「わっアンドルさんの意識が戻ったぞ」と大きな声で叫ばれてしまう。
誰だか知らない人にジロジロよ覗かれていた上、そ、そんなに僕の顔を見て驚かなくてもっ!!
そういえば僕は……アンディに襲われて……
そうだ……アンディの胸には大きな魔石があったんだ!!それで僕の力が抜けてしまったから抵抗できなかった筈だけど、今なら身体も動きそうだけど今はどういう状況なんだ……?
すると髪の長い女の人がやって来る。アンだ!!
「アンドル意識が戻ったのね!!もう心配は要らないわよ。アンドルは何処まで覚えているのか分からないけど……アンディは……エドだったのよ……私と私の姿にそっくりだったアンディや貴方のエネルギーを魔石に取り込んで王族を呪っていたの」
「ア……アン……助けてくれたんだね」
男の人の大きな声を聞いたアンは僕が寝ていた処まで駆け寄って僕の手を両手で握って安心させてくれているが、アンの表情は少し暗い……アンは顔を横に振って更に話し始めた。
「エディが……貴方のエディが私達を助けてくれたのよ」
「えっ!!エディ!!ディが見つかったの!!どこにいるの!!」
「……アンドル……今エディを連れて来るから……」
悲しそうなアンの顔に何だか不安に感じてしまって僕は上半身を起こした。
ここはアンディの部屋のまんまだけど、至る所に何故か裸の男の人達が沢山いて訳が分からない事態になっている。
若い人からお年寄りまで……大柄な人も小柄な人もいる。どうしてこんなに男の人ばかりがいるのかさっぱり分からない。そして全ての人達は黒髪で青い瞳の精悍な顔立ちの人達だった。
なんで裸の男の人??それにこの部屋にこんなに密集しているなんて……。
それにエドはあれからどうなったんだ……お、思い出したぞ……力のなくなった僕を押し倒してきて……僕の身体をお、犯したんだ……ぐっ。
「ううっ……」
「アンドルさん、大丈夫か」
思い出したら苦しくなって思わず声をだしてしまった。それを心配してくれた僕の知らない裸の男の人が僕の背中をさすってくれている。この男の人達は何者なのかまだ分からないけれど……僕の味方みたいだ。
「はい、大丈夫です。ご心配をお掛けしてしまい申し訳ありません」
「アンドルさん、無理しないで下さい」
「……は、はい……うっ……うっうっ……」
何も知らない筈の男の人から優しい言葉を掛けられて、何故だか涙が溢れてきてしまった。僕はどうしたんだろう……思ったより心が弱ってしまっている。
不可抗力だったとはいえ、自分が婚約者であるエドワード王子を裏切ってしまった事で自分自身に失望し、そのショックが自分で思っている以上に大きかったみたいだ。
その時アンがエディを連れて戻って来てくれた。
しかしエディは……
「えっ……エディ、エディ、エディ!!どうしたの!!何故こんなに全身濡らして小さくなってしまったの、血っ??血が滲んで……」
エディはシーツに包まれて丸くなっていた。しかも全身が濡れていて、シーツには水と血も滲んでいる。それに少し大きく成長していた筈のエディなのに、今は最初に出会った頃の様に身体が小さくなってないか……
「アンドル……エディはね、アンドルのお話の通りとても賢い子でエドがかけた王族の呪いをエディ1人で断ち切ってくれたの……。そして私や王族にかけられた呪いを1人で破ってアンドルにも魔石に取り込まれたエネルギーを取り戻してくれたのよ」
「えっ!!エディが!!」
何故エディにそんな力が……。だから今のエディはこんなに瀕死の状態になってしまっているのか!!
「どうしてエディが……それに何故エディだけこんなに弱ってしまって!!……」
エディが王族の呪いを断ち切ったなんて、何でそんな無茶をエディが……。
「アンドル……御免なさい。泣きたいと思うけど私達……もう時間が無いの。縛られていた魂が解放されて大きな流れに帰るの……輪廻に戻るのよ。
残り少ない時間で伝えられる事を伝えないと……エドはあそこに居るわ」
「えっ!!あそこって魔石しか……」
アンが指し示した方をみると、砂の山になっていてその上には赤い魔石が乗っていた。
「エドの身体は砂になってしまったの。でもエド魂はずべて魔石の中に入っているのよ。アンドルは絶対近づいては駄目」
「う、うん」
あの砂の山がエド!!
そういえば僕のエネルギーを取り込む前は顔にヒビが入っていて……もうエネルギーがないと言っていたから、僕自身のエネルギーが僕に戻ったという事は、とうとう姿を保てなくなって……。
抱いているエディをみるとやはり小さい身体を更に丸くして浅い息をしていた。こんな小さな黒猫のエディが全部やったのかい?
「もうエドには呪う力も無いから安心してね。そしてこの部屋に沢山いる裸の男の人達は全員生前は元王族の人達よ。亡くなってからもずっと呪いにかけられていてこの世界に閉じ込められていたの」
「ええっ!!元王族!!」
という事はエドワード王子のご先祖様達!!
ひええっ!!歴代の国王達もいるって事じゃないかっ!!周りをきちんと見渡して見れば、教科書や肖像画で見た事がある様な顔の方や、何となくエドワード王子や国王陛下に似てる人達ばっかりだ!!
僕の後ろではずっと僕の背中をさすってくれている人も王族!!
「も、申し訳ありません!!僕、王族の方々だとは知らず背中までさすって頂いて……すみません!!すみません!!も、もう大丈夫です!!」
思わず後ろの男性に謝罪したが、「無理するな」と言って下さり背中はずっとさするのを止めなかった。
でも流石に背中が緊張してきたよ……
「ほらっもう私達の身体も少しずつ消えていってるでしょ。エドの作ったこの世界がどんどん無くなっているのよ。アンドルとエディも元の世界に帰れるから心配しないでね。アンドルがやってきた魔法陣はここにいるエドワルドさんが構築した魔法陣なんですって。役割が終われば元の世界に戻れるそうよ」
アンがそう言うと、かなりお年を召したご老人が僕に向かって一礼してきた……けれど、エドワルドって聞いた事がある……まさか……エドワルド前国王!!
はああっ?!
でも……でもあの顔はお年を召しているけれどそうだ!!
僕だって前国王の顔位は知っている。それにたまに食べるビスケットのパッケージが若い頃の前国王の顔だったから!!
『王様も大好き!!エドワルドのビスケット』
っていうキャッチコピーで人気のビスケットは国民達にとって小さな頃から親しみを感じているお菓子の1つだと思う。
あの本の魔法陣は前国王が構築した魔法陣だったのか……どういう仕組みなのか知らないけれど、呪いを破った今はその役割が終わったと言う事なのか……それを聞いて安心したけど、急な展開に頭が追いつかない。
それに自分のご先祖様であるアンとも折角仲良くなったというのに、そのアン達の姿が消えていっているしお別れっていうのは本当みたい……あっという間にお別れだなんて……そうだ!!アンにアンディの事を言わなくてはっ!!
「アン、あの……アンディはね……亡くなった時に魂は……」
ーーーーーーーーー
次の投稿は7月30日の予定です。
宜しくお願い致します。
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