【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編7

87エディside9

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(おい!!アンにずっとごめんと謝るなら、先にアンやアンドルだけでも解放してやったらどうだ?
   アンやアンディやアンドルがいる侯爵家は何にも悪い事をしてないし、とんだとばっちりじゃないか?)

「…………」

 とアンディを羽交い締めにしている黒猫達の中の1匹がそう言うと、他の黒猫も(そうだ!!そうだ!!)と言いはじめていた。それを聞いていたエドマイヤ叔父様は諭す様にエドに伝え始めた。


(アンディ……じゃない。もうエドで良いか?エド、どうなんだ?アンを解放してやれよ。
   この小さな黒猫の体の私を見ろ!!私は黒猫の呪いにかかった時に川にいたんだ。だから直ぐ流されて死んでしまったんだよ。私にはエドの様に婚約者も居なかったし、誰かを好きになる幸せも感じる事の無いまま、誰に看取られる事も無く死んだんだよ……私だってエドを恨んでいる。
   なあ……王族だけが強力な力を使用できた……王族の宝だった魔石は今何処にある?)


 えっ?もしかしてエドマイヤ叔父さんはエドが呪いに使った魔石を探していたのか?あの魔石の事は強力なエドの呪いがかけられた魔石としか認識していなかったが、あれは王族の宝だったのか……。
 ではもし魔石が見つかればエド以外の王族も使用できるという訳なのか……ああクソッこんな時にはもっと王族の歴史について調べておけば良かったとつくづく思う。

 私に長年付き添ってくれた侍従長のお陰で一般的な知識はあるが、王族の深い部分は流石に王族の者自ら積極的にならないと知識は得られなかったな。

 私の生活はアンドル中心に回っていたし、黒猫になってもアンドルを守ってあげられると意気込んでいたのに結局は一周回ってアンドルを危険に晒してしまった。
 しかし後悔は後からでもできる。
 とにかく今はアンドルだ!!
 ここにいるアンドルはまだ意識がないんだぞ!!


(エド、頼む!!アンドルはどうなってしまったんだ?何故意識が戻らないんだ?教えてくれ!!)


 アンドルの横から私はアンディの姿をしたエドを見た。先ほどまでは悪巧みをしていそうなアンディの顔だったが、今は少し悩んでいる様子で目を瞑ったり、顔を横に振ったり、たまにうずくまって泣いてしまったアンを悲しそうに見つめたりしていたが、1つため息を吐いてアンドルの方を見た。


「……確かにアンやアンディ、そしてそこにいるアンドルには悪い事をした。私は王族の宝だった魔石に私の命を込めて呪いを発動した。小さな黒猫の言う通りその魔石は王族が使用すると強力な力を発動できるから、私はアンとその姿で生まれてくる侯爵家の子孫の命を魔石に縛りつけてエネルギーに変え、そのエネルギーを使って兄の子孫直系を呪ったんだ」


(んなっ!!)


「アンとここでずっと暮らすにはもっとエネルギーが必要だった時、アンディの存在を感じてまた命を縛ってエネルギーを蓄える事に成功したんだ。しかし、魂だけは奪えなかったが私が記憶のアンディの姿を貰えたのだから結果オーライだったんだよ。だが……それから暫くアンやアンディと同じ姿をした子供は侯爵家では生まれなくなってしまったんだ。
   今から考えるとアンディの魂が侯爵家伝統の髪色や瞳を持つ者を生まれない様にしていたかも知れないなぁ……」


 エドは1人言の様に呟きながら黒猫達やマスターに話していた。
   もうアンにはバレてしまったから観念でもしたのだろうか?アンは相変わらず泣いていたが、声はもう出ていなかったのでアンディの姿をしたエドの話には耳を傾けているのだろう、アンディの話の段階で少し驚いた表情をしてエドの方を見て何かを言いたげだったが結局何も言わずにエドの話を聞いていた。


「そうしていると侯爵家から貰っていたエネルギーが貰えなくてそろそろこのまま私も朽ちていくのだろうと私も考えていた処だったんだ。そうしたらとうとうアンドルがこの場所にやって来たんだ。だからエネルギーを貰っちゃったんだよ。
   彼は可愛い顔をしている割には体力も精神力も鍛えていたから膨大なエネルギーでね、最初は少しのつもりだったんだけど、必死に抵抗するから沢山貰っちゃったんだよ。ちょっと取りすぎちゃったかもしれないけど抵抗するから仕方がなかったんだ」


  アンディの姿をしたエドは不可抗力と言わんばかりに残念そうな顔をしているのが逆に腹がたって来た。


(それでアンドルの命を縛ったんだな!!!だが、何故アンドルは今裸なんだ?別に服を脱ぐ必要はなかっただろう?アンやアンディの時だって服は脱いでなかった筈だ……まさかお前アンドルを!!)


   考えたくはなかったがアンドルの今の様子とアンディの簡易的に羽織っただけの服を見れば2人の間で何かありましたと疑って下さいといっている様なものだ。


   それもアンドルは合意じゃない無理矢理だ!!


    ただ……もしかしてそれはアンドルの意識が無い時に行われた事なら……アンドルにとってはその方が気がつかないままで……知らないままの方が良いかも知れない。


「ああ……そうだよ」



(なっ!!)


ーーーーーーーーーーー
次の投稿は7月16日の予定です。
宜しくお願い致します。
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