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本編7
86エディside8
しおりを挟む何とエドの兄であるマスターもあの天井を登って来たのか!!
登りたい黒猫を全て登らせてからだろうが、どうやってマスターは登って来たのだろうか?
しかし今そんな事を考えても仕方がない。
目の前にはマスターがいるんだ。それが結果だろう。
「あああ貴方は……どなたなの!!」
アンにとって驚きの連続なんだろうがマスターに声を掛けていた。アンは確か当時陛下だったこのマスターには何度もお会いしているどころか、愛人になれとか言われていたのに気づいていないのか外見では分からなかったみたいだ。
確かに今のマスターは、昔国王だったと言われても冗談と断言できる程威厳もなく随分と猫背だから、ある意味初対面だと思われても仕方がないかもな。
「アンさん……まず私は貴方に危害を加えるつもりはありません。私は……黒猫達からマスターと言われて長い間過ごして来ました」
「そうなのね!!貴方が黒猫達を導いていたマスターなのね!!とても賢い黒猫達で本当に良く躾がされていますわ」
「ニャー!!」
(んなワケないだろ!!)
「ニャーニャー!!」
(違う違う!!マスターは俺達を導いてないぞ!!)
アンは早速マスターが黒猫達を導いていたなんて盛大な勘違いをしてしまった為に、黒猫達から抗議の鳴き声が響き渡っている。
「あっいや……私は黒猫達を率いていません。黒猫達はそれぞれが賢いのでむしろ教えてもらう事ばかりです」
「そうなのね。マスターったら謙虚な人なのね」
「ニャー!!」
(違う違う!!)
「ニャーニャー!!」
(逆だ!!マスターを俺達が導いて来たんだぞ!!)
2人のやり取りを聞いていた黒猫達からは更にマスターに対してブーイングの鳴き声が響き渡った。
それに対して黒猫達の文句には全く動じなかったマスターはゆっくりと大きく息を吸って吐いてからアンに向かって話した。
「私は……アンさん、貴方と大昔お会いした事がありますよ。外見では全く見当もつかなくなってしまいましたが、私は……自分の身勝手な行動で弟のエドとアンさんの仲を引き裂いたエドの兄です。
アンさんとエドには謝っても謝りきれな事をしでかした当時の王でした。私は貴方が可愛かったのでエドと結婚するより私の第二夫人になって欲しいと欲望のまま行動してました。そして……そちらのアンさんと良く似ている君は……エドだろうか?」
「なっなんですって!!あ、あ、貴方は陛下でしたの!?」
アンはずっと驚きっぱなしでいたが、マスターが現れてしかもそのマスターがなんと陛下だったと聞いた今が1番驚いたのかも知れない。目はまん丸に大きく見開いて、口は開けっぱなしのまま時が止まったのかのごとく動かなくなってしまった。
そのアンを横目にエドじゃないのか?と言われたアンディの方を見れば、アンディはマスターを見ようともしないで別方向を向いたまま無言を貫いていた。
「君はエドだろう?君が私の目の前で自分の命とアンの命を引き換えに魔石にエネルギーを流し込み、私と私の子孫達に強力な呪いを掛けた。
その恨みの力は相当強いものだったから、私の子孫まで未来永劫続いたんだね。
私だけを恨んでくれたら良かったのに、子孫達の永遠とも言える長い時間を呪ったのは私にとっても信じられない程の苦しみだったよ。
本当に……私が全て悪い。
エド本当に申し訳無かった……だからもう呪いは全て私が引き受けるから子孫は解放してもらえないだろうか?」
「ニャーニャー」
(マスターが……俺達の事を真っ先に解放してくれだなんて……)
マスターはいつもの疲れ顔のままで静かにそうアンディに伝えた。アンディは相変わらず別方向を向いたまま無言ではあるが、耳が少し動いたのできっとマスターの話は聞いた筈だろう。
それからは3人も黒猫達も無言のままだったので部屋の中 は急に静まり返ってしまった。
それにしてもマスターがエドだと思っているアンディに会ったと思ったら、早々にアンディに謝って子孫の黒猫達の解放をお願いしたのにはちょっと見直してしまった。
流石は腐っても私達の王族でありご先祖である。
すると……マスターはそのまま拘束されたままのアンディの前に立ち、土下座までして許しをお願いし続けたので流石にアンディはマスターの方を向いて驚いた表情をしていた。それからワナワナと身体を震え始めた。
「お、お前は!!お前のせいで!!私の生きていた時の幸せは全て無くなってしまったんだ!!それを今更何だ!!お前が謝ったら私が許すとでも?私は兄上をお支えしながら好きな人と結婚したかった。ただそれだけだったのにっ!!」
アンディはとうとうそう言ってマスターを罵倒し始めてしまった。その内容はエドの感情そのものでアンディ自身がエドである事を暴露したような物だ。しかしエドと分かって驚いている者は猫達の中もいないし、勿論マスターも同様する事なく土下座のまま「申し訳無かった」と言っている。
だがただ1人、アンだけは違った。
「ア……アン……ディ……嘘よね……ねえ、嘘でしょ?貴方がエドだなんて嘘よね……?」
「アン……おばあちゃん……」
先程迄強気な声で罵倒していたアンディは初めて不安そうな声でアンの名前を言った。
今は別方向に向いていた顔もアンの方を向いていて、その目が随分と揺れている様に見える。多分アンディは1番アンにだけは自分がエドである事を知られたく無かったのかも知れない。
一方でアンの方もショックを隠しきれないままアンディに問い掛け続けていた。
「だってずっと一緒に生活してたじゃない。貴方の事は全部私知ってるわ。
婚約しそうになったけど分かり合えた王女様の事や大好きだった彼の事……たまに大好きな彼の事を思い出して泣いてたわよね?
私と一緒にお茶する時間を大切にしてくれて、美味しいクッキーやケーキもよく作ってくれたじゃないの。貴方はエドなんかじゃないわ。私の子孫のアンディよね?」
アンの方も孫のアンディと長年一緒に生活していたと思っていたのにその人物がエドだなんて信じられないのだろう。
その疑問を何とか払拭する為にアンディよね?と強引に答えを導いてあげている様な問いかけだったが、アンディの方は悲しい顔をしたまま顔を横にフルフルと振ったのでアンはまた驚き涙を浮かべ始めていた。
「そんな………貴方が本当にエドだったなんて……うっうっ私、私はずっと騙されていたのね。何て私は滑稽なのかしら………そしてたまに主人に会いたいと言ったのを慰めてくれた貴方が私をこの場所に閉じ込めたエドだったなんて………ううっうっうわぁーー」
アンはまだ言いたい事が溢れるのか泣きながら言葉にならない声を出して泣き崩れてしまった。それを他の黒猫達がアンを慰めるかのごとく集まってスリスリと身体を擦りけている。
その光景を悲しい表情をしたままのアンディは消えいる声で「アン……ずっとごめん」と呟いた。
私や他の黒猫達はアンディの方を向いていたので口の動きでごめんと言ったのは分かったが、アンは顔を下に向けたまま泣き崩れていたのでアンディの呟きは聞こえなかっただろう。
ーーーーーーーーーーー
次の投稿は7月9日です。
宜しくお願い致します。
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