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本編7
85エディside7
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何度も呼びかけていてもアンドルは全く反応しなかった。
アンドルの顔を良く見るとうっすら涙が乾いた跡がついていた事に気がついて驚愕し、怒りで身体が震える。
私は知っている。
アンドルは常に冷静でいようと努めているから注意力が散漫にならない様に出来るだけ泣かない様にしている事を。それなのに涙が溢れるとは一体どれ程の悲しい出来事があったんだ!!
後から少しずつ部屋に入ってこれた黒猫達の一部もアンドルや私の側にやって来ている。
(エドワード、どうなっている?)
(この子がアンドルか?また凄い別嬪さんだなぁ)
(こんなに可愛い子がどうなってしまっているんだ?)
黒猫達がアンドルを見てアンの時と同じ様に興奮しているのが分かった。私のアンドルなんだから可愛いのは当然だろうと思ったが、様子のおかしいアンドルを前にしては言い返す気力が今はない。
それでも今の状態を黒猫達に伝える為、この寝ている人が私の婚約者であるアンドルだという事。呼吸はしているが意識が全く無い事を手短に伝えると、それを聞いた黒猫達は状況を理解して他の黒猫達にも伝達して回ってくれた。
「ニャンニャン」
(アンドル……私が迎えに来たよ……アンドル……)
ガチャッ!!
ドアの出入り口付近では小さな黒猫が少しずつアンディの攻撃を掻い潜って部屋に入ってきてはいた。
アンディは「このやろう」と言って黒猫達を蹴ったり叩いたりしていたが、とうとうエドマイヤ叔父様が上手くチェーンを解錠したみたいてドアが完全に開いたようだ。
それからはいくらアンディが騒いでももう続々と黒猫達が部屋に入るのを止められずにいた。
それどころか人数が増えた黒猫達はアンディに反撃し始めて身体の自由を奪っていく。
アンディが私達黒猫より大きくて力が強いと言えども多勢に無勢、力でも押し切られて黒猫達に羽交い締めされてとうとう身動きが取れなくなった様だ。
「アンディ貴方は酷すぎるわ!!……どうしてアンディは黒猫達を蹴ったの!!」
黒猫達が大量に部屋に入り込んだ後、アンが静かに部屋に入って来て怒りに震えながらアンディに話しかけている。
「ニャニャー!!」
(お前!!アンドルに何をしたんだーー!!)
私も怒りに打ち震えながら羽交い締めにされているアンディに向かって叫んだ!!
「まあっ大きな鳴き声っ!!今のはエディの鳴き声なの!!そうよっアンドルは??エディの隣で寝ているのがアンドル?」
アンは羽交い締めにされているアンディには構わずに、一直線にアンドルが寝ているベッドまで様子を見にきてくれたが、「アンドル?アンドル?」とアンが何度も呼びかけてもアンドルの反応はやはり全くしないのでアンはまたアンディに声をかける。
「ねえアンディ!!これは一体どういう事なの!!アンドルの反応が無いわ!!アンディはアンドルが何故こうなったのか知っているんでしょう?」
「ニャンニャン!!」
(おいっアンドルがどうなってしまったのかちゃんと答えろ!!)
「…………」
アンがアンディに向かって私の言いたい事を言ってくれたので私もアンディに叫んだけれど、アンディの方はというと最初は何も言わずにムッとしながら考え事をしていたが、その内私を見てニヤッと笑って言った。
「アンおばあちゃん……僕も知らないんだ。僕も気づいたらアンドルは息をしたまま意識が戻らなくて、どうして良いのか分からなくなった時に沢山の黒猫達を見て、咄嗟にこいつらせいだと思っちゃったんだ……こめんなさい」
「ニャー!!」
(なっお前っふざけるな!!)
羽交い締めにされて身動きが取れないままのアンディはアンにそう言ってからシュンとしおらしくしており、まるで怒られて反省している風にしか見えない所が腹が立つ。
しかし、それを聞いてアンはアンディの言う事を鵜呑みにしてしまった様だ。
「そうだったのね……それならもっと早くに伝えてくれたら良かったのに……。アンディ、私の方こそ貴方を誤解してしまって御免なさい。そうよね。いきなりアンドルの意識が戻らなくて途方にくれた時に、突然黒猫達も現れたんですものね。私も黒猫達にはびっくりしたのよ。でもアンドルの言っていた通りとても賢い黒猫達だからアンディももう蹴ってはダメよ?」
「うん……」
アンは諭す様にアンディに伝えるとアンディは更に反省した仕草で「ごめんなさい」という。
クッ……どうやらニャーしか言えない私達より、アンはこのままアンディの最もらしい言葉の方を信じてしまうのだろう。どうすれば良いんだ……何かアンドルを助ける方法は無いのか……。
「今、黒猫達が噂をしてましたよ。このアンディという人物はエドでは無いかと……」
「えっ?!」
「誰だ!!」
「ニャニャ!!」
急にアンディやアンとはまた別の人間が突然部屋に入って来たので、アンとアンディもその人物に対しては本当にびっくりしていた。
そもそもアンドルが来るまではずっと長い間2人っきりで生活していたんだろう。
アンドルと出会った時もきっと驚いたと思うが、アンドルを含めてほぼ同じ顔だからアンドルの時はすんなり受け入れられたのではないだろうか?
しかし今は完全に違う。目の前にいる人物は全く顔も似ていない人間だったのだから。
そこには黒猫達の酒場の世界ではヒエラルキーの最下層にいるマスター、エドの兄がいた。
ーーーーーーーーーーーーー
次の投稿は7月2日の予定です。
宜しくお願い致します。
アンドルの顔を良く見るとうっすら涙が乾いた跡がついていた事に気がついて驚愕し、怒りで身体が震える。
私は知っている。
アンドルは常に冷静でいようと努めているから注意力が散漫にならない様に出来るだけ泣かない様にしている事を。それなのに涙が溢れるとは一体どれ程の悲しい出来事があったんだ!!
後から少しずつ部屋に入ってこれた黒猫達の一部もアンドルや私の側にやって来ている。
(エドワード、どうなっている?)
(この子がアンドルか?また凄い別嬪さんだなぁ)
(こんなに可愛い子がどうなってしまっているんだ?)
黒猫達がアンドルを見てアンの時と同じ様に興奮しているのが分かった。私のアンドルなんだから可愛いのは当然だろうと思ったが、様子のおかしいアンドルを前にしては言い返す気力が今はない。
それでも今の状態を黒猫達に伝える為、この寝ている人が私の婚約者であるアンドルだという事。呼吸はしているが意識が全く無い事を手短に伝えると、それを聞いた黒猫達は状況を理解して他の黒猫達にも伝達して回ってくれた。
「ニャンニャン」
(アンドル……私が迎えに来たよ……アンドル……)
ガチャッ!!
ドアの出入り口付近では小さな黒猫が少しずつアンディの攻撃を掻い潜って部屋に入ってきてはいた。
アンディは「このやろう」と言って黒猫達を蹴ったり叩いたりしていたが、とうとうエドマイヤ叔父様が上手くチェーンを解錠したみたいてドアが完全に開いたようだ。
それからはいくらアンディが騒いでももう続々と黒猫達が部屋に入るのを止められずにいた。
それどころか人数が増えた黒猫達はアンディに反撃し始めて身体の自由を奪っていく。
アンディが私達黒猫より大きくて力が強いと言えども多勢に無勢、力でも押し切られて黒猫達に羽交い締めされてとうとう身動きが取れなくなった様だ。
「アンディ貴方は酷すぎるわ!!……どうしてアンディは黒猫達を蹴ったの!!」
黒猫達が大量に部屋に入り込んだ後、アンが静かに部屋に入って来て怒りに震えながらアンディに話しかけている。
「ニャニャー!!」
(お前!!アンドルに何をしたんだーー!!)
私も怒りに打ち震えながら羽交い締めにされているアンディに向かって叫んだ!!
「まあっ大きな鳴き声っ!!今のはエディの鳴き声なの!!そうよっアンドルは??エディの隣で寝ているのがアンドル?」
アンは羽交い締めにされているアンディには構わずに、一直線にアンドルが寝ているベッドまで様子を見にきてくれたが、「アンドル?アンドル?」とアンが何度も呼びかけてもアンドルの反応はやはり全くしないのでアンはまたアンディに声をかける。
「ねえアンディ!!これは一体どういう事なの!!アンドルの反応が無いわ!!アンディはアンドルが何故こうなったのか知っているんでしょう?」
「ニャンニャン!!」
(おいっアンドルがどうなってしまったのかちゃんと答えろ!!)
「…………」
アンがアンディに向かって私の言いたい事を言ってくれたので私もアンディに叫んだけれど、アンディの方はというと最初は何も言わずにムッとしながら考え事をしていたが、その内私を見てニヤッと笑って言った。
「アンおばあちゃん……僕も知らないんだ。僕も気づいたらアンドルは息をしたまま意識が戻らなくて、どうして良いのか分からなくなった時に沢山の黒猫達を見て、咄嗟にこいつらせいだと思っちゃったんだ……こめんなさい」
「ニャー!!」
(なっお前っふざけるな!!)
羽交い締めにされて身動きが取れないままのアンディはアンにそう言ってからシュンとしおらしくしており、まるで怒られて反省している風にしか見えない所が腹が立つ。
しかし、それを聞いてアンはアンディの言う事を鵜呑みにしてしまった様だ。
「そうだったのね……それならもっと早くに伝えてくれたら良かったのに……。アンディ、私の方こそ貴方を誤解してしまって御免なさい。そうよね。いきなりアンドルの意識が戻らなくて途方にくれた時に、突然黒猫達も現れたんですものね。私も黒猫達にはびっくりしたのよ。でもアンドルの言っていた通りとても賢い黒猫達だからアンディももう蹴ってはダメよ?」
「うん……」
アンは諭す様にアンディに伝えるとアンディは更に反省した仕草で「ごめんなさい」という。
クッ……どうやらニャーしか言えない私達より、アンはこのままアンディの最もらしい言葉の方を信じてしまうのだろう。どうすれば良いんだ……何かアンドルを助ける方法は無いのか……。
「今、黒猫達が噂をしてましたよ。このアンディという人物はエドでは無いかと……」
「えっ?!」
「誰だ!!」
「ニャニャ!!」
急にアンディやアンとはまた別の人間が突然部屋に入って来たので、アンとアンディもその人物に対しては本当にびっくりしていた。
そもそもアンドルが来るまではずっと長い間2人っきりで生活していたんだろう。
アンドルと出会った時もきっと驚いたと思うが、アンドルを含めてほぼ同じ顔だからアンドルの時はすんなり受け入れられたのではないだろうか?
しかし今は完全に違う。目の前にいる人物は全く顔も似ていない人間だったのだから。
そこには黒猫達の酒場の世界ではヒエラルキーの最下層にいるマスター、エドの兄がいた。
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次の投稿は7月2日の予定です。
宜しくお願い致します。
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