【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編7

83エディside5

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「ニャンニャン!!」
(アンドルーー!!無事だったか……!!)


「うん?……アンおばあちゃんどうしたの……?僕寝ていたのに……」


 久しぶりにアンドルと会えた気がしてニャンニャンと叫んだのに、アンドルは私の方にはまだ気がづかなくて眠そうな声でそう言った。
 ドアは少しだけ開けてくれているが、それ以上は内側からチェーンも掛かっているのでそれ以上は開けられない様になっている。


「どうしたもこうしたも無いのよ!!あれっ貴方アンディよ……ね……?
 何故昨日まであんなに短かった髪が1日でそんなに伸びるのかしら?最初アンドルかと思っちゃったじゃないの!!
 そんな事よりも!!アンドルはいる??
 黒猫のエディ達がアンドルに会いに来たのよ!!アンドルはきっと喜ぶと思うわ!!早く会わせてあげましょう!!」

「ニャンニャン」
(アンディ?……アンドルじゃなくてアンディなのか……)


 良く見てみるとアンディはアンドルよりは少し髪が短くて耳の下程の長さだった。
 それにしてもアンディと言う人物はアンドルと瓜二つだ。
 アンも瓜二つだと思ったがそれよりも年も若くて似ているかもしれない。
 しかしこのアンディが私の考察では……エドかもしれないと思っていたんだが……。


「ねえアンディ!!アンドルが探していたエディが見つかったのよ!!ここを開けてちょうだい。何故今日はドアに鍵を掛けているの?それに私の部屋のドアも外からも鍵が掛かっていたのよ?この黒猫さん達に助けてもらったから良かったけれど。
 だから貴方達2人が心配になっちゃったの!!
 アンドルはいるの?ちょっと部屋に入らせてくれない?」


 アンはドアの隙間に向かって捲し立てる様に話している所をみるとお喋りな人らしいな。
 それでもアンディはドアを開けようとはしてくれず、眠そうな雰囲気の声で返事をしている。


「ごめんアンおばあちゃん、僕もアンドルも昨日はお喋りし過ぎちゃってようやく寝ついて眠いんだ。アンドルもやっとさっき寝た所でさ……アンドルを今起こすのは悪くて明日まで待ってくれる?」

 眠い感じのままアンディはそう言い返していた。じゃあせめてアンドルの側に私だけでも行かせて欲しいのだが……。


「まあ!!私が自分の部屋に戻ってからも2人で話していたのね!!確かにやっと眠ったアンドルを起こすのは可哀想かしら……でもエディがここにいるのよ!!エディいる??エディはどの黒猫なのかしら?」


 アンが私を呼んでいたので「ニャー」と言って1番彼女に近づいた。
 こういう時は他の黒猫は呼ばれた人を優先してくれる。
 抜け駆けしないて一歩引いてくれる所はしっかりと統率が取れていた。

「アンディ、この子がエディみたいなのよ。きっとアンドルに会いたがっているわ。アンドルもエディを探していたんだしこの子だけでも部屋に入れてあげましょうよ」


 そう言ったアンは足元にいた私を抱き寄せてアンディに見せつけた。なのでアンディの顔を間近でみる事になってしまったが……なんだ……?このアンディという人物は??


 アンドルと瓜二つなのに全然綺麗でも可愛いとも感じない自分自身にとても驚く。

 おかしい。

 アンにはあんなに綺麗だの可愛いだの感じていた筈なのに、アンよりアンドルに似ているアンディを見ても全くときめかなかった。
 そして良く見れば眠そうにしていると思ったアンディの表情は苦虫をすり潰した様な……そんな表情をしていたのに今更気付かされる。


「ニャンニャン」
(なあ……お前……アンとアンドルに瓜二つだけどさ、お前って何なんだ?)


 意外と冷静だった私は「ニャーニャー語」でアンディにそう話しかけてみた。
 私には何か……根拠は無いがアンディは侯爵家の人間では無いと確信していた。
 私はまだ短い人生だが、生きて来た中でずっと疑問に思っていたんだ。

 何故私はアンドルの事がこんなにも好きなのか。

 ただの惚気で馬鹿馬鹿しい話かもしれない。

 最初に会った時から私の一目惚れでアンドルの存在の全てが愛おしく感じ、陛下からの命令でそのままアンドルは私の婚約者になったので自分の人生は最高じゃないかと単純に喜んでいた。

 というのにアンドルは陛下の命令で他の王族との交流を持つ機会は全く無かった。

 父上である陛下にその事を聞いてみた時は「アンドルの容姿はとても美しく王族に大変好まれる容姿だから万が一他の王族にも狙われない様にだ」と言っていたが……。


 もしかしたら呪いのせいで侯爵家の血統とアンドルやアンの容姿が呪いを解除できると直系王族の生存本能が恋焦がれる様に訴えていたのではないか?


 それを陛下は知っていたんだ。
 私の予想が正しければ、陛下もアンドルを見ればときめいたのかもしれない。
 そして2人の兄上も……しかし、陛下は息子達の中で1番呪いに掛かる可能性が高い私にどうにかしてアンドルを婚約者にしたんだ。


 勝手な考察だが、私の考えが正しければこの目の前にいるアンディはアンドルと瓜二つなのに全く胸が高鳴らない事が頷ける。

 私の本能がときめかないアンディは侯爵家の人間ではない。
 何がどうなったのかは分からないが、侯爵家の人間の容姿になりすましてここで生活していた人物だ。
 そんな事を何故……?

 それは勿論アンと2人で生活する為に。

 もうここまで考えがまとまると、目の前の人物がやっぱりエドとしか考えられない。

「ニャンニャン?」
(貴方は……エドですね?貴方のお兄様は人間のまま「ニャーニャー語」が聞き取れてましたから、弟の貴方も聞き取れますよね?)

 そう言うとアンディは一瞬だけ目を見開いたので、やっぱりお前はエドか……という確信があった。しかしアンディは私の事は無視してアンと話しだす。


「君がエディかい?可愛いね。だけどアンおばあちゃん、本当に今日は疲れているんだ。このまま休ませておくれよ」

 困った顔をさせて眉毛を八の字にさせながら、かなりあざとくアンに伝えていた。
 一度アンディがエドだと認識になってしまうとそのあざとさが王族のルーツ……というか、先程アンを見てからの黒猫達のあざとさと似ていて妙に感心してしまった。しかしアンにとっては普段のアンディではなかったようだ。



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