【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編7

82エディside4

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 はっ?……今彼女……の名前はアンと言ったのか!!
 長い間ずっと2人で生活してたって………


 まさかっと考えを巡らせていた私の後ろでも静かに丸まっていた黒猫達が彼女の発言を聞いてザワザワし始めている……。

 王族達も何かを感じているんだ……きっと私が考えている事と同じ事かもな。


 彼女はアンドルの血筋にあたる侯爵家のアンだ!!
 王族が所有していた本に書いてあった物語の登場人物。
 そして私達王族に呪いをかけたエドの愛している人!!

 その人がこの場所にいるだって?アンはエドが呪いをかけて魂を縛ったと言っていたんだぞ。
 そして長い間2人で生活していたとか言ったな。そのもう1人は誰だ?まさかエドなのか!!

 アンドルが魔法陣でエドの所に行ったと考えれば、アンがアンドルの事を知っているという事はここにエドもいる!!

 アンドルは?
 今アンドルは何処にいるんだ??

 キョロキョロと部屋を見回してもアンドルどころか、アン以外の気配はしない。


「ニャンニャン」
(アンさん、アンドルは何処にいるんですか?)


 きっと彼女には理解できない「ニャーニャー語」であってもついそう質問してしまう……すると後ろで控えている黒猫達も、一旦話をやめて彼女を見ていた。



「エディ??仲良くしたかったけれど、今はそんな感じじゃないのかしら……何かしら?何か訴えているのね。そう……そうよね!!アンドルに会いたいわよね!!今アンドルに会わせてあげるから待っていて!!」



 どうやら統率が取れた黒猫の連携で彼女は私の気持ちを汲み取って下さりアンドル会わせてくれる事になった。
 しかし今彼女と仲良くしたかった黒猫達は(アンさん違うんです)とか(後で2人っきりで仲良くなる時間が欲しい)とボソボソ言っているのが聞こえたが無視をしておく。


 アンは腰を抜かしてしまってへたり込んでいたのをゆっくり立ちあがろうとした時、私の後ろで控えていた黒猫達は素早く彼女に回り込み、彼女の腰をサポートし始めたので彼女も笑顔になった。


 しかしジェントルマンさながらに腰をサポートしながらも「スンスン」と彼女を匂いを嗅ぎ始める黒猫達にドン引きしてしまった。


 本当に貴方達は王族として恥ずかしく無いのだろうか……


「優しい黒猫さん達、私に気を配って下さりありがとう!!本当にアンドルの言った通り可愛くて賢い黒猫さん達なのね」


 アンは本当に嬉しそうにお礼を言って、黒猫達の頭を恐る恐る撫でていく。


 するとそれだけでもかなりの強い刺激なのか黒猫達は(ふぉお……)(おっふ……)と呟いて惚けてしまって彼女を見つめている。


 それから彼女は「アンドルはこっちのアンディの部屋で一緒に寝ている筈よ」と言って案内してくれるので、惚けてしまった黒猫達は彼女の操り人形の様に彼女の後ろには黒猫の行列ができた。貴方達は本当に大丈夫ですか……?


 コンコンッ
 コンコンッ


 別のドアについたアンはノックをしてみたが、誰もいないのか反応は返って来ない。


「あれっ?ここがアンディの部屋なんだけどいないのかしら?
アンディー!!アンドルー!!起きてー!!
ここにエディや黒猫達がやって来たのよ!!
アンドルー!!エディよ!!
エディがアンドルに会いに来たのよー!!」


 彼女はノックをしながら大きな声で言っても中からは何にも反応は無い。
 痺れを切らしてアンはドアノブを遠慮なく回して強引に開けようとするがガチャガチャと回しても開かなかった。


「あれ?おかしいわね。いつもなら私もアンディもドアは開けっぱなしだというのに。それにアンディの部屋は私の部屋と違って内側から鍵がかかっているわ!!」


(おい……エドワード、アンはエドとじゃなくてアンディという人と生活しているつもりでいるが、そいつがエドかもしれないぞ)

 ずっと私の近くで行動してくれるエドマイヤ叔父様が私に話しかけてくれる。叔父様もアンの話した内容を冷静に分析していて私と同じ事を考えていたみたいだ。


(その様ですね。アンディがどの様な人物がまだ分からないですが、今アンディとアンドルが2人きりで同じ部屋にいるかもしれないと思うと、アンドルが危ないのには変わりないです)


(そうだな)


 叔父様と状況を整理し考えを擦り合わせていると、アンは何をしてもドアが開かない事に流石におかしいと思い始めているようだ。


「私とアンディの部屋が開かなかったなんてこんな事は初めてよ。もしかしてアンディも部屋の中で閉じ込められていて困っているかもしれないわ!!強引にドアを開けるしかないわっ!!」


 と彼女がそう言った瞬間……


 ガチャッ



「えっ!!」

「ニャッ」
(今ドアの鍵が……開いた?)


 内側から鍵が掛かっていたドアの鍵が開く音が聞こえ、ゆっくりゆっくりと少しだけドアが開き、その中からはアンドルが顔を覗かせた。
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