【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編7

81エディside3

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(君はっ!!アンドルとそっくりで可愛いっ!!)



 私はドアの中にいた方を一目見て思わずそう叫んでしまった。

   こんなに誰かを見て可愛いと思ったのはアンドル以来の出来事だった。こんな気持ちになるのは私のアンドルに対する気持ちが揺らいだせいか……と言われればそれは違う。
   
   何故ならばアンドルと似ているからこそ可愛いと思ったからだ。むしろあくまでも私の婚約者が基準である事を再認識したと思う。

 初めて見る方にいきなり見た目の事で叫ぶなんて大変失礼ではあるが……幸い目の前にいるアンドルと瓜二つの彼女には「ニャーニャー」しか聞こえない筈だから大丈夫だろう。


 まっ私のアンドル程ではないが、素晴らしく私の好みに近いと思う。
   これを何と表現したら良いのか分からないが、アンドルが女性だった場合はこんな感じなのかと……色んなアンドルを想像できてしまってヤバいのだ。


 が、しかし……よく見るとやはりアンドルとは違う。


 声も違うし、仕草やその人の持つ雰囲気なんかは全く違っているから直ぐにアンドルと違う事には気づいたが、それにしても血がつながっているどころかアンドルは一卵性双生児だったのかというレベルだ。


 顔も落ち着いて観察すればアンドルより年上か?……アンドルもこれから大人になって髪を伸ばしたらこの方の様になるのかもしれないと想像すれば私とアンドルとの将来も無限に膨らんでしまいそうだが、今はそれどころではないな。


 他の黒猫達も後ろから続々とこの彼女見て、(可愛い!!)だの(なんて美人さんなんだ!!)と褒めちぎって黒猫なのにうっとりしている。

 アンドルが彼女と瓜二つなのを考えると、アンドルまで褒められた様な気分になり嬉しいような、しかしアンドルは私だけのアンドルなのに私以外が評価するなど複雑な気分にもなる。


 ご先祖様達よ……鼻の下を伸ばしやがって人間の顔だったら気持ち悪かっただろうから猫で助かったな。


 それどころか黒猫達は全員どれだけかも分からない程の月日をむさ苦しい王族の男性だけで過ごしていたのだろう。 
   綺麗な人をみる事ができてありがたがって彼女を拝んでいる黒猫達もいる。
  既に死んでいるのに昇天するつもりか?さらに……


   スリスリ……
   モフモフ……

「ニャウン」
「ナー」
「フニャ……?」


(はっ??ちょっと!!ご先祖様達っ!!)


 次々に集まって来た黒猫達は彼女を見た途端、顔の表情がデレまくりながら彼女に「ナァー」と弱々しく鳴いて腹を見せたり、「ニャウ?」と言って猫の首を傾げて可愛こぶったりし始めている。

  中には彼女の膝の前で自分のモフモフを見せつける様に身体を丸めて彼女から触りたくなるようにする高等な技法を駆使している強者もいた。


(うわっあざとい……)


 ちょっと自分達の好みの女性が目の前に表れたからって私達王族の尊厳も自ら捨て去り、彼女に抱っこされようとするなどいくらご先祖様だといっても最低だな。相手がアンドルなら私もやるが。


(そんなに媚びて貴方達は何やっているんですかっ!!これが王族達のする事ですかっ!!)


 私がつい注意してしまったらバツが悪そうにしている黒猫達も数人いたが、ほどんどの黒猫達はお構い無しでアピール合戦を繰り広げていてドン引きした。


 そんな事を考えているうちにも更に黒猫が沢山集まってしまい、最初こそ驚いていた彼女だったが、彼女に媚びまくった黒猫達のお陰なのか、私達が危害を加えないただのモフモフだと少しは理解したようだ。


「ななな……黒猫達!!に羽!!ってあっ!!アンドルが言っていた黒猫のエディがこの中にいるの?それとも皆がエディなの?」


 目の前の彼女は少しは落ち着いたが、私達の事を見てあまりにびっくりしたのか、ドアを出た所でへたりこんでそう言った。


(おいっエドワード!!このお嬢さんがお前をご所望だ!!アンドルの事も知っているみたいだからお前だけお嬢さんの前に出るんだ!!他の者は怖がらせない様に全員後ろに控えよう!!)


 そう言ったのはエドマイヤ叔父様だった。身体は小さいけれどやはり王族の一員である彼は亡くなった時にまだ少年だったせいか理性が勝って彼女に媚びたりはしなかった。

 自分が1番この状況を理解していると感じて他の黒猫達に指示をしたみたいだ。するとエドマイヤ叔父様のご先祖様達でもある黒猫達も指示に従う。


 同じ王族同士だ。子孫でもご先祖でも黒猫の大きさが違っていてもお互いに敬いながらこうして合理的に生活していたんだろう。


 その中でエディである私だけ一歩彼女に近づいた。すると彼女はいきなりニャーニャー言っていた沢山の黒猫達が自分の呼びかけに応じて統率の取れた行動をしたと理解し更に驚いている。


「あ、貴方がアンドルの言っていたエディなの……?」

「ニャー」
(そうです。私がアンドルの言っていたエディです)



 恐る恐る彼女は1人だけ前に出た黒猫の私に対して聞いてくれたので、きっとアンドルが私の事を彼女に話したのだろうと予想し自信満々にそう答えておく。


「そうなのね!!まあっ!!今日は何て素晴らしい日なのかしら!!長い間ずっと2人だけの生活をしていたというのに、今日だけで子孫のアンドルに会えたり、こんなに沢山の黒猫達に会えるなんてとても嬉しいわ!!それにしても何故私のドアが閉められていたのかしら??
 まあ……それは後で2人に聞けば良いかしらね。
    ……エディ !!私はアンって言うの!!アンドルのお友達のエディとそのお仲間達なのかしら……?黒猫の皆さん宜しくね!!」


 ………シーン………


「ニャッ」
(なん………だとっ)


 
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