【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと

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本編6

73エディside2

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エディside



(エドワード!!お前の話をじっくり聞く前に、この呪われた場所について教えよう。
 ここの酒場はな、私達のご先祖様であるコイツを永遠に罵倒する為にある場所なんだよ。そうだよなぁマスター!!)

 大きな黒猫はエドビー2世と名乗った。確か昔の王族名簿にエドビー2世の事は記載されていたのを記憶していたので、やはり王族の呪いの事は本当の事だと確信めいた気持ちになった。
 そしてエドビーは可愛い黒猫の指で1人の人間を差してそう言った。

(ここには呪いによって王族の黒猫しかいないと思っていたが、人間が1人いるのか!!)

 私がこの酒場にいる唯一の人間を観察してみると、痩せた体で背中を丸まらせながら、一生懸命注文されたおつまみやお酒をせっせと作っていた。


(ああ……アイツはな……生きている間に黒猫にならなかったが、そもそもアイツがいなかったら私達は黒猫の呪いにかかる事が無かったんだ。
 だから呪いの原因の大元はアイツ!!だから黒猫の私達は「マスター」と呼んでいるんだよ。
 あいつが未来永劫私達黒猫に飲み食いを用意して愚痴や罵倒を受けてくれるんだ)


 エドビーからマスターの話を聞いて、私はアンドルと共に読んでいた複製本の事を思い出した。


(呪いの原因の大元……あの人間はもしかして昔呪いをかけて亡くなったと言われるエドなのか?)


(いんや……エドワード違うよ。呪いをかけたのはエドだが、そもそもエドの兄であるこのマスターが仲睦まじいエドとアンの恋仲を引き裂いたのが原因なんだ。自分の欲望の為にな)


 エドビーが大きな声で私に話すから周りで見守っている他の黒猫達迄話を聞いていて、それぞれの猫が(うんうん)と何度も頷いていた。


(という事は……私が本で読んだ情報が正しいとするならば、エドの婚約者だったアンに側妃という名目の愛人要求をしていてエドの意識が混濁中に女性をあてがわせた所をアンに目撃させて婚約解消させたという……当時の陛下がマスター)


 私もエドビーに感化されたのか少し大きな声で話してみた。
 するとマスターにも聞こえたのかあからさまに身体が「ビクッ」っと震わせて、その後反論する事なくまたお酒を作り始めていた。


(エドワードは正しくマスターの事を知っていて良かったよ。
   流石は私達の子孫だ。
 私達はね、生きている間に呪われた原因と解除方法を少しずつ調べ上げて蓄積していったんだ。
 この呪いはマスターの子孫の直系にしか起こらない呪いでね。
 王家でも直系だけで呪いの解決法を歴代の王族が調べているんだが今の所は……この状態だ)


 そしてエドビーはまたマスターの方を睨んだ。確かにその話が本当ならマスターのせいでその子孫が何もしていなくても呪いにかかり、死んでからも黒猫としてこの酒場に留まっているのだから当然か……


(ところでエドワードはどうやって死んだんだ?その黒猫の身体を見ると黒猫になった直後ではなさそうだが、人間に戻る前に死んだのか?)


 エドビーから店内にある一つの木製テーブルと椅子を勧められ、私はその椅子に腰掛けた。
 全てが黒猫仕様になっているのか、椅子の座り心地はとても良い。


 すると周りには他の黒猫達も沢山集まって来て、私を囲んだ黒猫の大世帯が出来上がってしまう。


(ご先祖の皆さん。エドワードです。黒猫同士宜しくお願い致します)


(同じ王族なんだから堅苦しい挨拶は無しでさ、早くエドワードの事を教えておくれよ)


 痺れを切らせた別の黒猫がそう言うと他の黒猫達もまた「うんうん」と頷き合っていたので私は自分の生い立ちから話し始める事にした。

   小さい時から決められた婚約者がいた事、婚約者となった侯爵家のアンドルが小さい時から私のドストライクでとても可愛いかった事。

 そしてアンドルが大きくなっても可愛かった事。

 アンドルは背が伸びた癖に顔だけはベビーフェイスで会う度に私の理性が毎日破壊されそうだった事。

 そして嬉し恥ずかし初めてのパンツ交換、セカンドパンツ交換等々……ついついアンドル中心に生活が回っていた私の人生の途中経過を伝え、ようやく一息ついて周りを見るとご先祖様達である黒猫達の目が子孫である可愛い筈の私なのに皆私を殺す様な怖い目つきをしていた。

   そして黒猫の1人が(アンドルの事は飛ばせ)と怖い声で私に命令してくる。
   やはり直系の王族だからだろう、ここぞという時の威圧感が半端なかったので従う事にした。


   アンドルの可愛さの話は残念ながらすっ飛ばして、黒猫になってからの私の話をした。


(そして私は呪いに理解のある父上の目の前でたまたま黒猫になってしまったんだ。
 それからの私は父上のご助力もあり、侯爵家に安全にたどり着くことができ、アンドルの可愛いペットとして毎日がハッピーでベリーなグッドタイム生活を送っていた訳だ)


(……おいエドワード……その婚約者のアンドルはお前の事を本当に好きだったのか……?
   お前の話を聞いていると自分の子孫で可愛い筈なのに変態で最低な奴だと思ってしまうんだ。
  そして婚約者のアンドルの方を心配してしまうんだが)

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