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本編6
68 王族の歴史と宿命3
しおりを挟む「エディ!!僕から離れて!!」
身体が痺れたままどんどん身体が魔法陣に吸い込まれる恐怖心でいっぱいになってしまっていたけれど、咄嗟にエディだけは左腕から離して哺乳瓶を落としておいた。
「エディだけは助かって!!ミルク飲んで元気に過ごすんだよ!!」
「ニャーニャー!!」
何となくこれがエディの最後の別れになるかも知れないと思ってしまい、エディに向かってニコっと強がりな笑顔を見せた。
でも顔ももう半分くらい魔法陣に取り込まれてしまっているのか半分は真っ暗にしか見えなかった。
エディ……ここが僕の部屋で良かったのかもしれない。
基本は誰にも見えないエディだけど、ここは侯爵家だから父上かアンジュならエディを認識出来る!!
「エディとアンジュはお互い嫌いみたいだけれど、アンジュだって優しい子だからエディが頼ればきっと助けてくれるからね!!」
「ニャー!!」
既に僕の顔半分と左腕と左胸以外は魔法陣に取り込まれた。
これも呪いなのか……複製本なのにこんな事ってあるんだ……。
「エディ……元気で……」
「ニャー!!」
「はえっ?!」
僕が痺れた顔で最後の言葉をエディに伝えた時、エディは何を思ったのか、哺乳瓶のミルクを咥えて僕が取り込まれていく魔法陣に自ら飛び込んで行くのが見えた。
エディ迄死んじゃう!!
そんな事を思ってエディの行動にびっくりしていた所で完全に魔法陣に僕は取り込まれて目の前は真っ暗になり、僕の意識が途絶えてしまった。
ーーーーーーーー
「んあ……ここは……?」
気づいたら緑が生い茂る森みたいな場所で僕は倒れていた。
痺れていた身体は今はどこも痛くない。
あの複製本の魔法陣が僕をこの場所に運んだんだろうと言う事は分かったけれど、辺りを見渡してもあの本は何処にも見当たらないし、エディ……そうだエディは僕の身体が全部魔法陣に取り込まれる直前哺乳瓶ミルクを咥えて魔法陣に向かって飛び込んだんだ!!
「エディーー!!エディいるー?居たら返事してー!!」
「……」
何も返事は無く、時折、森の木々がサラサラと鳴っているのと遠くの方でコポコポと水の湧き出る様な音が聞こえているだけだった。
やっぱりエディが最後に飛び込んだと思ったのは僕の見間違いで……エディと一緒にいたいと思っていた最後の願望がそう僕に見せていたのかもしれないな……。
「やっぱりエディとはあれが最後になっちゃうのかな。 最後にミルクを飲ませてあげたかったな」
僕の願望だったかも知れないけれど、最後のエディったら必死な顔をしていたのにちゃっかり哺乳瓶の乳首の部分をガシっと咥えて離さなかったもんね。
本当にエディはミルクが大好きだったんだよなぁ。
エディの事を考えるとふふっと笑えるのに同時に涙が出そうになった。
「エディ……」
今の僕は生きている筈だから、何とか魔法陣の謎を解かなくちゃ。
僕は気持ちをふるい立たせて水が聞こえる方に向かって歩き始めた。
そのまま水の音を頼りに進んで行くと、森の奥深くに泉があり、そこから綺麗な水が湧き出ている音だった。
「わあ!!……なんて……きれいなんだ……」
そこはついそう呟いてしまうほど美しい場所だった。
森の奥深くの様な場所なのに、そこにはとびきり大きな木が一本生えていて日の光が沢山降り注いでいてとても神々しい。
そしてその光は大きな木の下にある泉の水にも降り注いでいて、天からの光が幾重にも反射して輝いていた。
とても綺麗だけど……何故かとても寂しい場所だとも思った。何故かさっきから生き物が何もいない。
こんなに美しい場所だけど、森には昆虫やら小さな爬虫類やらたまに動物だっている筈なのに。
自分が住んでいる侯爵領にも、こんなに綺麗な場所では無いけれど、森には沢山の虫達がいて葉っぱには虫にかじられた痕や、フンなんかも見つける事ができる筈なのに、ここは葉っぱは全て完全な形をしているし綺麗過ぎてちょっと怖い位だ……
「あの……貴方は……どなた?話せるのかしら?」
「うわっ!!誰っ?」
誰もいないと思っていたのに急に大きな木の方から呼んでいる様な声が聞こえたので、驚いてしまった。
でも辺りを見回しても誰もいない。あれっ僕の聞き間違いかなぁと思った所でまた声がした。
「こっちよ。もう少し木の上を見て?ここにいるわ」
「えっ?もう少し木の上?」
その声に従って大きな木の上を眺めると呼んでいた人の姿が見えたけれど、ええっ?!この人って……
「えっ!!僕!!」
「貴方は私?」
するとそこには僕と同じ顔をした人形みたいな人間が驚いた表情で木の上から僕を見下ろしていた。
ーーーーーーーーー
次は1話だけエディsideを挟みます。
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