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本編6
66 王族の歴史と宿命1
しおりを挟む「エディ、少しずつ『王族の歴史と宿命』の続きを読んでいこうね」
「ニャー」
この本はエドワード王子から貰った王族が所有している本の複製本だ。
僕は自分の呪いについて調べようと思っていた所で、丁度本を調べ終わった父上からこの複製本を返して貰った。
「父上……それでこの複製の本についてですが、調べた結果はどうだったんですか?」
「ああ……侯爵家の先祖であったアンの事だが、王族にとって悪女に仕立て上げられただけで悪女ではなかった。
とても美人で評判だったアンはエドという王弟からの強烈な求婚で一度は婚約者となったが、王の愛人要求や、エドの不貞を目撃した事等があり、王族から慰謝料を貰い正式に婚約解消になったようだ。
その後のアンは自分に非が無かったのにも関わらず、貴族社会の醜聞の的にされてしまい、逃げるようにして隣国に旅立ったそうだが、そこで大貴族に見染められて結婚したようだよ」
「そうなんですね!!やっぱりアンは悪女じゃ無かったんですね!!」
「ああ。アンドルもこの本が王族にとって都合よく改ざんされている事に気がついていたか?」
僕のご先祖のアンはやっぱり悪女じゃ無かったんだ!!やっぱりっていうのは、この本に書いてある物語の内容と王弟のエドと兄の王との会話の辻褄が合ってないように感じていたから。
「改ざんしているかは分かりませんでしたけど、物語のようなアンとエドの話とエドと兄である王の話には食い違いがあると思っていたので」
「そうだな。私もまた分かった事があればアンドルに伝えるが、アンドルもこの本を今一度読んで気づいた事があれば教えて欲しい。結局呪いと言うのはどんな物なのか……肝心な事は何も分からなかった。特に本の中についている魔法陣は一体何なのか……やはり一度この本についてや、呪いについて陛下と腹を割って話さないといけない時期かもしれんな」
呪いの事は父上でも何も分からなかったのか……侯爵家の情報網はかなりのものだと思っていたけれど、それでも何も分からないだなんて王族がやはり絡んでいるからなのかも……
「魔法陣?まだ見ていないのですが、確認して分かった事があれば伝えます」
「ああ、アンドルも無理しない程度に励め」
父上はそう言って休日なのにも関わらず仕事があると言ってアンジュと出かけてしまった。
本当に父上もこの所忙しい。母上が事業を始める前は母上が侯爵領の維持管理と領民との繋ぎ役ををしていて、父上は王宮や貴族との付き合いをしていてバランスが取れていた。
でも今はその母上の仕事も全部父上がしているのだからやはり大変なんだろう……。
アンジュも父上の大変さを1番間近で見ているから、父上の仕事の手伝いはまだ全然出来ないけれど、交渉相手がイライラしているのを察した時には、少し可愛い素振りをして相手を和ませたりするから助かっていると父上は褒めていたっけ。
アンジュも今の自分ができる事をして本当に凄い。
僕は時々自分が置いてけぼりになった様な気持ちがして怖くなる時があるけど……エドワード王子が留学から戻って来たらこんな気持ちはまたなくなるのだろうか……。
だけど今は自分にできる事を1つずつやっていくしかない。
それから王子から貰ったこの本を少しづつ読み始めたけれど、僕も学校の授業の予習や宿題で忙しくなってしまって、本当に少しずつしか読めていない。
呪いも調べなくちゃだけど、自分の学業もしっかりやる事が僕が今できる事だもんな。
そんな僕にエディはいつも寄り添ってくれる。
今の所エディについて分かっている事は父上とアンジュ以外には全く存在がわからないという事だ。
だから学校に行きたそうなエディを思い切って毎日連れて学校では放し飼いにする事にした。
でもエディは最初こそ僕と離れて何処かに行っていまう事はあったけれど、今はほとんど僕の膝の上で過ごして授業を一緒に受けている。
その姿がとても姿勢が良くて真剣に先生の話を聞いているから本当に真面目に聞いているんじゃないかとびっくりする程だ。
ふふっエディが人間だったら凄い優等生なんだろうなぁ。
帰ってからも明日の宿題や勉強をやる時には机の角に乗ってじっと僕がやっている所を見ているし、答えが間違ったりしていると「ニャー」と言って間違った答えの部分に前足を出してくれてたまにびっくりしちゃう。
「エディいつもありがとう!!エディは僕にとってかけがえの無い子だよ。
だから……父上のマルコの時みたいに突然いなくなったりしないでね」
「……」
そんな言葉が口癖になってしまっている位最近の僕とエディは一心同体の様に一緒に行動している。
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