65 / 124
〜王子side〜5
65エドワード王子の悲しみ2
しおりを挟むアンジュは一度私とアンドルのお茶会に参加した事があったが、あの時は私を狙っていた筈なのに、今じゃ随分態度が違うものだ。
それにしてもアンジュの話が本当ならお金の工面が出来たならいよいよ婚約解消が迫っているのか……。
王家の直系が呪われている事を考えれば父上である陛下はまだ解消するつもりは無いと思うが……どうするおつもりなんだろうか?
アンジュは私の行方が分からないようにしている王族の対応にもかなり不満を持っている。しかしその隙を狙ってずっと好きを拗らせていたアンドルに気持ちをぶつけたのか……。
確かに何もできない私は不甲斐ないだろう……。
しかしこの姿では本当に何もできない。
そしてアンジュは去り際にもアンドルの顔に沢山のキスをして去っていった。
私はアンジュにも怒りが湧き上がったが、それ以上に見ているだけで何も出来なかった自分自身に怒りが沸き起こる。
何で私はこんなに無力なんだ……
アンジュのキスを上書きする様にアンドルの唇をペロペロしたが、アンドルの頭はアンジュの事でいっぱいになっているのか顔を真っ赤にさせてボーとしている。
「アンジュ……」
「ニャンニャンニャン」
(アンドル!!アンジュの事じゃなくて私の事を思い出しておくれ……)
私は一生懸命アンドルの唇の上書きをした。
「ニャンニャン」
(アンドル、いつものミルクをおくれ)
その日の夜……アンドルは私がいくら鳴いても見向きもしてくれなくて、ミルクもくれずに寝てしまった。
「ニャー……」
(ミルク……)
アンドルは色々と疲れていたんだろうとは思う……しかし寝る直前までアンジュからキスされたのを考えていたのか、自分の唇に指を充ててアンジュとのキスを考えていたようだ。
アンドルのファーストキスはアンジュじゃない。私だよ。
そう言いたくても私は猫なんだ。
そして猫のままアンドルのキスを奪ったからってやはりファーストキスと言うのは良くないか……これは私の負け惜しみだ。
私もアンドルの様に頭の整理が追いつかないな。
私のプライベートタイムである夜中に私1人で考えていると、「ふっ……うん……」と今日はアンドルが寝言を言っていた。
んっ?アンドルどうした?……何か悪い夢でも見ているのか?
アンドルを顔を覗くと苦しそうな顔をして寝ている。
悪夢なら起こしてあげた方がいいか……?
そう思って様子を見ているとアンドルの股間が膨らんでる……?
寝ている間無意識に股間が膨らむのは初めて夢精でもするのか?
もしかして夢の中でいやらしい夢でも見ているのか?
アンドルはどんな夢を見て股間を膨らませているのだろうか……。
私は呪いでこんな姿になってしまっているが、その変わりに何か別の力はないものか。
例えばアンドルの夢の中に入れるとか……
夜中は基本暇なので、そんな事も出来るかも知れないとアンドルの夢が見たい!!っと意識を集中させる。
「…………」
…………無理だった。
まあ、分かっていたけどな。
「ふ……ん……ア……んジュ……」
えっ?アンジュ?今アンジュと言ったのか?
今アンドルの夢の中はアンジュがいて、股間を膨らませていると……。
アンドルの中で確かに私の存在があった筈なのにどんどん私がいなくなっていく……
お願いだアンドル!!
私を思い出して!!
私はどうにもできないもどかしさの中、アンドルにキスをしてペロペロと乳首を舐めたりチュウチュウ吸った。
夢にアンジュが出てきていても、君にキスをして君の乳首をいやらしく舐めているのは私だよ。
私に気づいて!!
そうしている内にまだ射精までいかないアンドルの股間は小さくなった。
アンドルもまた「スースー」と寝息を立てていて落ち着いたようだ。
アンドルはオナニーもまだした事がないのは一緒に生活していて分かっているが、身体が成長して子種を作りつつあるんだろう……。
私はバカだ!!
私は呪われたこの姿に感謝までしていたんだからな。
このままアンドルと一生一緒に生活しても良いと思っていたが、アンドルがこれから新しい友人ができて、私以外の恋人ができて、私以外の相手と結婚をしていく事になるのを1番近くで眺めているだけになるのだぞ。
そんなのは許せる筈はない!!
後で後悔しては遅いんだ。私が今できる事を考えると、アンドルと一緒に勉強をする事と、できるだけ呪いを調べて解除する事だ。
呪いが解除できれば婚約解消になるかもしれないが……それでも人間に戻らない事には何もできないじゃないか!!
人間に戻ってアンドルに真正面から会って話したいんだ。
私は今出来る事を考えて行動しようと心に誓った。
32
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

俺の婚約者は悪役令息ですか?
SEKISUI
BL
結婚まで後1年
女性が好きで何とか婚約破棄したい子爵家のウルフロ一レン
ウルフローレンをこよなく愛する婚約者
ウルフローレンを好き好ぎて24時間一緒に居たい
そんな婚約者に振り回されるウルフローレンは突っ込みが止まらない

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる